えぴそど10 勇者と魔王
早く死神を登場させたい今日このごろ
近くにあるという村を目指す道中、メイエリオは様々な話を聞かせてくれた。
・冒険者ギルドについて
・今回の輸送依頼について
・熊の魔物について
・この世界について
特にひっかかったのは、最後のこの世界について。
その中で出てきた『勇者』と『魔王』という名称だった。
最初は童心に還った気持ちで、王道きた!かわいい設定だなぁって思ってが、どうやらすでに『勇者』と『魔王』は居るらしい。
自分が『勇者』では無かったという事がかなりショックだ。
そらね、淡い期待もありましたよ。裸でこの世界に放り投げられたものの、伝説の勇者的な立ち位置で、仲間と共に協力して魔王を倒す的なストーリー。伝説の剣なんか抜いちゃったりしてさぁ。
全然違った。もう勇者も魔王もいるんだもん。
成り立って進んでたんだもん。むしろこの世界の物語はそこそこ中盤くさいもん。これじゃ俺はただの裸のおっさんじゃん!モブじゃん!村人Bじゃん!
そこからはショックなのと、疲れで頭がぼーっとしていたので、細かい所はちゃんと聞いていない上に忘れてしまった。
ある日突然、魔犬パッパラがお姫様の500年の暴走をうんたらかんたら…だったっけかな。あれ?まぁだいたいそんな感じ。
そうこう話をしていると、ようやく村らしきものが見えてきた。念願の最低限の文化的な生活まであと一歩だ。
「オンダの村よ。ここからブーメルムまで歩きなら2〜3時間ほどで着けるけど、やっぱり休んでいく?」
俺はあからさまに嫌な顔をしながら、休みたいオーラを全開にした。まる一昼夜歩き続け身も心も限界だ。今すぐベッドで寝たい。
そもそも、俺の目的はそのなんちゃらっていう街に向かう事じゃないし、この女の子と共に行動する必要も特に無い。そこで、メイエリオに提案をしてみた。
「メイエリオ、さすがに俺はこの村で休んで行くよ。君は先を急ぐのならここからは別々に行動してもらっても構わない。」
「事の証人でもあるあたなをブーメルムのギルドに連れていかなきゃ。それに命の恩人で記憶喪失状態の人をほっとけないよ。私も一緒に今日はこの村に泊まるから、明日ブーメルムを目指しましょ。ね?」
念願の安心して休める環境をゲットした。
しかし、同時に次の目的地まで決められてしまい、また歩くのかと気が少し遠くなる。
村に入ると、メイエリオは慣れた様子で宿の場所などを確認してくれた。
俺がお金を持っていない事を伝えると、「ふふっ」と優しく微笑み、腰に着けていた鞄から小さな革袋を取り出し上下に振ってみせた。なんか…可愛いなおい。中には硬貨がたくさん入っている音がする。
異世界で初めての村。
家屋は木造が多く、主要な道はレンガで舗装されている様だが、後は砂利道だ。入り口近くには、武器なんかを売っているお店も多少あり、村というわりには人が多く感じる。
人種は多種多様な感じだが、基本的には欧米色が強い。やはりベースは中世ヨーロッパという印象を受ける。
宿でチェックインを済ませ、荷車の荷物を部屋に運ぶ頃には日が暮れ始めていた。メイエリオは、オンダ村とブーメルムを繋ぐ連絡係がいないか探してくるらしい。先に休んでおいてと言い部屋から出ていった。
メイエリオの優しさと、テキパキとした行動に惚れてしまいそうだ。
いや、正直なとこ、若干堕ちかけている。ベッドは別々だとしても、同じ部屋に一緒に寝ると言うのは、警戒してなさすぎなのではなかろうか。もしかして異性として見られてないのか!?そんな事を考えながら、俺は惨劇の場で拾ったパンと水を頂いていく。
そうしてパンを齧りながら気付いたら眠ってしまっていた────
────起きた。
よほど寝心地がよかったのか2度寝、3度寝をした記憶は無い。目を開け周りを見渡してみると、見覚えのある部屋が広がっていた。
知ってる天…これはやめとこう。
外はまだ薄暗く、体感的には朝の5時くらいだろうか。あれだけ疲れていた身体がとても軽い。なんだったら足の傷までほぼ治っている!
これはアレか!?宿屋で休むと体力が回復するというやつか!なんと便利なんだファンタジー。興奮して身体のあちこちを確認していると、隣のベッドで寝ていたメイエリオが目を覚ました。
「おはよう、コースケ。死んだ様に寝てたから死んでるんじゃないかと心配したよ。」
「あ、あぁ起こしてごめん!心配もかけたようだね。なんだか身体が嘘みたいに軽いんだよ!」
「そりゃそうでしょ。」
と笑うメイエリオ。
昨日俺が食べていたパンは『祝福のパン』と言い、食べた者の体力や怪我を徐々に回復するマジックアイテムだったらしい。
わぉファンタジー!特殊なポーションと小麦で作られており、かなり高価なものだったようだ。
勝手に持ってきて食べた事が判るとやっぱり罰せられるのか!?と不安になっていると「コースケが食べたかどうかなんてわかんないよ」とメイエリオは優しく微笑んでくれた。
そうと知っていれば道中に無理矢理食べておくべきだった。
「それでどうする?こうして二人とも起きている訳だし、メイエリオは先を急ぎたいだろ?街に向かう準備でもするかい?」
「そうだね、この村の連絡係は居なかったし、コースケの身体が大丈夫なら少しでも早くギルドに報告に行きたいかな。」
そこから身支度を整え、村を出る準備をする。
メイエリオは昨日の内に馬を買おうとしてくれたみたいだが、手持ちでは買えなかったようだ。このまま荷車を引いていくしかない。
こうして記念すべき俺の最初の異世界村は
あっけなく出番を終えた
修正:メイエリオとエイメリオがごっちゃごちゃになってました。エイメリオがプロット時点の名前でメイエリオが正式採用。心の中でメイちゃんと呼んで間違えないようにします。




