重
体を強張らせて、きつく目を瞑る。
そんな、ラルムの頬を、柔らかい物が擽った。
恐る恐る目を開ける。と、前髪からひらひら、と何かが落ちた。慌てて手で受けた物は…。
「…紙、吹雪?」
意味が、分からない。視線を前へ、と移す。
困惑するラルムの眼に写ったのは、クラッカーの筒を握ったまま笑う小野寺。
「合格、おめでとラルム君!!」
その言葉が飲み込めなくて。何度も瞬きを繰り返す。だが、分からないモノは分からない。
「…へ?」
ラルムの口から漏れたのは、そんな間の抜けた音だった。
その様子に、桑野が耐えかねたように笑いだす。
「悪いな、ラルム!」
「怖かったねぇ」
桑野と小野寺に両脇から挟まれて頭をぐしゃぐしゃに掻き回される。
いつの間にやら、月島、真田も笑い転げていた。
「ど、どういう事ですか!?」
「分からないのが、正解なの」
「え?」
首を傾げるラルムに、小野寺が、いつものチェシャ猫スマイルで答える。
「秀サマたちは正義じゃない。
でも、人を裁かなきゃダメなんだ。
だからね。自分だけで考えちゃいけないんだよ」
「…あ」
殺生にばかり目を向けていた。
でも。罪に罰を与えるという事は、裁きなのだ。
それは、ただ殺すよりも…他人の命を背負う行為。
小野寺の話を思い出す。桑野と、小野寺はこの組織で一番の古株だと聞いた。
ならば。彼らは幾つの命を背負って立っているのだろう?
どれほどの信念で此処に立っているのだろう?
「おいおい、そんな顔するなよ」
わしわし、と再び桑野に頭を撫でられた。
「基本、情報の必要不必要は俺らと相談して決めていくし…お前さんは誰も殺さない。
ただまぁ、その情報の重さってのを…知って欲しくてな?」
「その情報に、僕たちは命を賭けるので」
声を掛けられた順に、桑野、真田へと視線を移す。
皆、穏やかに微笑んでいて。ラルムは泣きたいような気持ちになった。
「ロクでも無い仕事だけど、ヨロシクね!!」
ぐ、と差し出された小野寺の右手を握って。
ラルムは深く、頷いた。




