慣
小野寺と握手を交わしてから三ヶ月が経った。
本当に、ロクでもない仕事だ。
嫌でも、人の醜い面ばかりが見えてくる。
「そんな物だ」
気にするな、と月島は笑う。
彼の両肩には今日も重い銃が下がっている。
「月島さんは、どうして、この仕事を?」
「気になるなら、調べろ」
許可を貰ったので調べてみた。
かつてraptorialと名乗った殺し屋、月島紫の事を。
コルト、シングルアクションアーミー。通称peace maker。
その古風な武器と、二丁拳銃の腕だけで生き抜いてきた様が、情報の欠片から辿れた。
彼の名前が登場した時期から考えると、14歳頃から、月島は殺しを生業に生きていたらしい。そして、21歳で、突然自らの上司を殺害し、出奔。
そ以上の事は分からなかった。
「色々あって、俺が拾ってきたんだよ」
桑野はそんな事を言って笑った。
彼も、抱えたものがあるのだろう。
一度、寝室代わりにされている仮眠室にお邪魔した時に、奥さんの写真を見た事がある。
散らかった室内で、写真の飾られたサイドボードだけは整然としていたのが、印象的だった。
薄々感じてはいたが、ここは訳ありの人間ばかりが集まっている。
誰一人として、殺すことを良しとしていない。
皆あまりにも善人で。
とても、優しくて。
それでも、人殺し。
幸せな者を守る為に、彼らは今日も修羅を行く。
「ラルム君、今日の仕事は?」
真田に問われて、警察からの応援要請を渡す。
働きはじめてから知ったことだが、この組織には警察組織の特殊部隊としての顔もある。
SATなどの特殊部隊では、敵に素性がバレないように、作戦中は声を出さない。素顔はヘルメットの奥だ。知らぬ者が2人3人混じっても誰も気づけない。
その為、こうして≪裏警察≫からも援軍を要請される。今日は、月島と真田が応援に行く。
紺と小野寺は麻薬関連の別案件の予定だ。
「大分仕事にも慣れてきたねぇ」
小野寺が背伸びしてラルムの頭を撫で回す。
女性にしては高いが、男性にしては低い。
相変わらず謎の多い上司を見て、ラルムは小さく笑った。




