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42/44

42 魔王

「よし、周りに人はいないな?」


「こんな雪原ですから、大丈夫だと思いますよ」


クリスタルは4つ、俺の手首にある。

周囲にどれだけ影響があるのかわからないから、人の寄り付かなそうな雪原で魔界に行くことにした。

魔界への行き方は実に単純だった。クリスタル4つを一箇所に集め、特定の魔力を注ぐこと。当然俺に魔力なんてものは扱えないから、そこはリリィに頼んだ。


「いきます……」


リリィが静かに呟き、クリスタルに手を当てる。

ここまで来た。やっとだ。姿が違くたって、性格が変わってたって構わない。それが沙由里なら。


リリィの手が光を放ち、クリスタルにぶつかる。

俺の手首のクリスタルは、リリィが魔力を放つのをやめても尚輝き続けた。

どれくらい待っただろう。俺には1時間にも感じられた時間。もしかしたら3分と経っていないのかもしれない。

不意に、体が浮くような感覚がした。


「! リリィ!!」


とっさにリリィの手を掴む。俺たちの足の下には雪も地も無く、黒い黒い穴が開いていた。

リリィを抱え、衝撃に備える。思っていたよりも早く地面に足は着いた。

リリィを立たせ、周囲を見渡す。

かなり広い空間だ。

黒光りする床と壁には、枯れたツタが這っている。

正面、20メートルほど先だろうか。黒幕がいますと言わんばかりの大きな椅子。だが、そこには誰も座っていない。

音は無い。全くの静寂。自分の心臓の鼓動ばかりが聞こえる。


「い、いませんね……」


「……俺から離れるなよ」


ゆっくりと前へ進む。とりあえず、あの椅子へ。


「よく来たね。歓迎するよ」


低い、男の落ち着いた声。

咄嗟に短刀を抜く。リリィにも聞こえたようだ。

声は椅子の向こうから聞こえる。


「こうも早く辿り着くとは、私も予想外だ。

だからこそ、期待できるというものだ」


ゆっくりと姿を現す声の主。

その姿を見た時、全身の機能が瞬間失われた錯覚に陥る。その姿に、確かに俺は見覚えがあった。


長身で白い長髪、マントのようなものをまとっている男。

色白で、表情の無い、とても整った、

死んでるみたいな顔。


無表情が崩れ、柔和な笑みを浮かべる。


「この世界では活躍できたかね、桜田勇太」


俺をこの世界に導いた張本人が、そこに。

こんにちは

小夜寝草多と申します。


グングン話が進みます。

善は急げが見事に体現されています。

焦っているわけではないのでご安心ください。ちゃんと終わらせるつもりです。

どうぞ最後までお付き合いください。


ここまで読んでくださりありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。

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