42 魔王
「よし、周りに人はいないな?」
「こんな雪原ですから、大丈夫だと思いますよ」
クリスタルは4つ、俺の手首にある。
周囲にどれだけ影響があるのかわからないから、人の寄り付かなそうな雪原で魔界に行くことにした。
魔界への行き方は実に単純だった。クリスタル4つを一箇所に集め、特定の魔力を注ぐこと。当然俺に魔力なんてものは扱えないから、そこはリリィに頼んだ。
「いきます……」
リリィが静かに呟き、クリスタルに手を当てる。
ここまで来た。やっとだ。姿が違くたって、性格が変わってたって構わない。それが沙由里なら。
リリィの手が光を放ち、クリスタルにぶつかる。
俺の手首のクリスタルは、リリィが魔力を放つのをやめても尚輝き続けた。
どれくらい待っただろう。俺には1時間にも感じられた時間。もしかしたら3分と経っていないのかもしれない。
不意に、体が浮くような感覚がした。
「! リリィ!!」
とっさにリリィの手を掴む。俺たちの足の下には雪も地も無く、黒い黒い穴が開いていた。
リリィを抱え、衝撃に備える。思っていたよりも早く地面に足は着いた。
リリィを立たせ、周囲を見渡す。
かなり広い空間だ。
黒光りする床と壁には、枯れたツタが這っている。
正面、20メートルほど先だろうか。黒幕がいますと言わんばかりの大きな椅子。だが、そこには誰も座っていない。
音は無い。全くの静寂。自分の心臓の鼓動ばかりが聞こえる。
「い、いませんね……」
「……俺から離れるなよ」
ゆっくりと前へ進む。とりあえず、あの椅子へ。
「よく来たね。歓迎するよ」
低い、男の落ち着いた声。
咄嗟に短刀を抜く。リリィにも聞こえたようだ。
声は椅子の向こうから聞こえる。
「こうも早く辿り着くとは、私も予想外だ。
だからこそ、期待できるというものだ」
ゆっくりと姿を現す声の主。
その姿を見た時、全身の機能が瞬間失われた錯覚に陥る。その姿に、確かに俺は見覚えがあった。
長身で白い長髪、マントのようなものをまとっている男。
色白で、表情の無い、とても整った、
死んでるみたいな顔。
無表情が崩れ、柔和な笑みを浮かべる。
「この世界では活躍できたかね、桜田勇太」
俺をこの世界に導いた張本人が、そこに。
こんにちは
小夜寝草多と申します。
グングン話が進みます。
善は急げが見事に体現されています。
焦っているわけではないのでご安心ください。ちゃんと終わらせるつもりです。
どうぞ最後までお付き合いください。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。




