30 絶望、希望、絶望
「走れ!
何呆けてんだバカ!!!
お前も走るんだよ!」
リリィが先に走る。
ガルーダの腕を掴み後を追う。
「グァアアアアアアア!!
ちょうだい!! ちょウだイ!!!」
誰がやるか。
悪いおっさんたち、もっと気ぃつけてれば……
このまま行くと分岐か。
そろそろガルーダも走れるだろ。
「右だ!」
「み、道わかるんですか!?」
「勘だあ!!」
「は、はいぃ!」
ちゃんと右に曲がってくれるリリィ。
うん。良いやつだ。
ガルーダと俺も続き、しばらく走ると
「い、行き止まりですよユウタさああああん!」
「すまん!! ほんっとーにすまん!!!」
短刀を抜き振り返る。
何走ってんだゾンビ共。ゆっくり来いよ。
30人は固い。
いけるか? ケガを負った時点で俺の死は決まる。
「やるっきゃ」
「リリィ、俺の魔力を増幅できるか」
暗く、沈んだ声。
ガルーダが1歩前に出る。
カゴ作動分の魔力は補助でまかなうのか。
任せよう。こいつにも思うところがあるんだろ。
「は、はい。
<魔力増強>、<生命力維持>……」
ガルーダの杖の光が強くなる。
まだ俯いたままの魔導師は、やがて顔を上げ呟いた。
「すまない……今、終わらせてやる……!」
杖は甲高い音を出し、強く強く輝いた。
シオンは5メートルにまで迫っている。
一応短刀は出しっぱなしにしとくか。
「<紅蓮球>」
シオン1人1人が白い球に包まれる。
それぞれが炎でできているみたいだ。
中から呻き声が聞こえるってことは、まだ生きて
「<収縮>」
ゴオッ、と一瞬音が響き、球は全て2センチほどに縮まり、さっきまでの呻き声が嘘みたいに辺りは静まり返った。
「す、すげえ…………」
本当に俺たち必要だったかこれ。
とか思っていたら、ガルーダがその場に膝をついた。
「ハア…………ハア………………くそっ…………」
「ガルーダさん! 大丈夫ですか!?」
かなり無理してんのか。
ペース考えろっつーの。
今んとこシオンは来ないから、まあ大丈夫か。
「……俺が…………俺がもっと…………」
「言ってもしょうがねえだろ。
おっさんたちは死んだ。そんだけだ」
「! 貴様あああああ!!」
ガルーダが俺の胸ぐらを掴み吠える。
その目には涙が溜まっていた。
「俺に突っかかる元気があんなら、もっと頭回せ。
おっさんたちは死んでシオンになった。
その事実は変わらない。だが、おっさんたちは誰も傷つけてない。犠牲者を増やしてない。
罪を犯す前に完全に死ねた。
それで十分だろ」
「だが……俺が、もっと気をつけていれば……」
「つけあがんなよ魔導師。
お前だけの責任だと思い込むな。
自分が最強だとか思ってんじゃねえぞ。
気付けなかったのは俺らも同じだ。
気付けなかったから、もう犠牲者を出すのは嫌だから、
落ち込んでる場合じゃねえんだよ」
リリィを横目に見る。
悔やんでないわけあるか。
悔しい。自分がなさけない。
けど、もう前を向いてる。
「お前がおっさんたちの願いを叶えろよ。
情けねえ面すんな。
リリィの方がよっぽどかっこいいぞ」
魔導師が、小さな魔術士の顔を見る。
恥ずかしそうに笑う少女。
あの子は強い。俺の命を救ったんだからな。
「……本当にな。
すまない、ユウタ。
そして、ありがとう、リリィ」
「い、いえ、そんな……私は補助しただけで…………」
見つめあってんじゃねえよ。
いい感じかお前ら。
あ、違う。リリィは平常運転だった。
来た道を戻り、今度は分岐を逆へ。
そこまで大きな遺跡じゃないから、すぐ着くだろ。
シオンを生み出した奴のところに。
「開けた場所だな……」
「祭壇といったところだな。
こんなに広い場所でいったい何を……
…………誰かいるな」
体育館くらいの空間だろうか。
その中央に、少し高くなっている場所がある。
本当に祭壇だなこりゃあ。
その頂上部分。座った人の後ろ姿が見える。
髪は整えられておらず伸びている。
服はボロボロ。ひどく痩せ、随分と歳をとっている。
見上げているため祭壇のせいで肩から下がほとんど見えないが、車椅子か何かに座っているのか、座った姿勢のままゆっくりとこちらに振り向く。
「嘘だ…………なんで……」
「ガルーダ? どうした、大丈夫か?」
顔が青ざめていくガルーダ。
汗が吹き出し、明らかに様子がおかしい。
声をかけても反応は無く、祭壇の上の人間をじっと見ている。
「こんな、ところで、何を、している……
………………答えろ!!!」
「久しいな。ガルーダ。
あの炎の柵はお前が作ったんだろう。
……腕を上げたな」
年老いた、しかし明瞭な声。
それが響くたびに、ガルーダの表情は歪む。
まさか……
「おいガルーダ。
あの爺さん、もしかして……」
「………………ああ」
こんなところで会えるとはな。
稀代の天才。
リング考案者。
そして、ガルーダに魔法を教えた者。
「魔導師エルンだ」
こんにちは
小夜寝草多と申します。
とうとうこの連載も30話!
ありがとうございます。
30話目だからといって何か内容に特別感はございません。ご了承を。
悲劇に次ぐ悲劇がガルーダを襲う……
ここまで読んでくださりありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。




