31 偉大な魔導師
魔導師エルン。
遺跡の奥にいるってことは、こいつがシオンを……
「ようこそ、私の城へ。
そちらの2人はガルーダの友人かな?」
「……桜田勇太、<暗殺者>だ」
「リリィ・マクマイン、<魔術士>です……」
満足そうに頷くエルン。
理由も無く人を殺すような奴じゃない。
直感だがそう思った。
「……エルン! 貴様、何故シオンを生み出した!」
直球だな……
特別後ろめたい風でもなく、エルンは応える。
「シオン……? ああ、あの自律魔法のことか?
ふむ…………良い名だな。採用させてもらおう」
「ふざけるな!!
あの悪魔を生み出した理由をきいている!!」
ガルーダの怒りをよそに、世間話でもするような態度のエルン。
「悪魔とは随分な物言いだな。
あれは私の最高傑作だぞ?」
無邪気に笑う。
自由研究がうまくいった子どもみたいに。
「なあ、エルン。
あんたがシオンを作った理由は、本当に魔法技術の進歩だけが目的か?」
どうも引っかかることがある。
俺たちが最初に見たシオンは、言葉を発する様子も無く、ただ獣のように人に襲いかかるだけだった。
だが遺跡の中のシオン。1度は俺たちを完全にだますほど完璧に人間になりすまし、言葉巧みに連れて行こうとした。
この違いは何か。人間に近いか否か、だ。
エルンの目的は自律魔法の完成ではない。
「あんたの目的は、
死んだ人間を蘇らせること、じゃないのか?」
「…………人の触れてほしくない部分を探れば、いつか後悔することになるぞ、若僧」
正解か。もう一押し。
「天才魔導師が、弟子を放っておくほどの用事。
その内容は人間を蘇らせること」
「……黙れ」
「目的の為なら罪の無い人々を殺し、実験体にする。
そこまでしてどうして死者を蘇らせたい……?」
「黙れ」
「うーん……そうだなあ……
大切な人が不幸な事故で」
「黙れぇ!!
貴様のような若僧に何がわかる!
私だって罪悪感くらいある!
だからどうした!!
私は……私は必ずあの子を蘇らせる!
魔王に魂を売ってでもなあ!!!」
エルンが立ち上がる。
今まで見上げていたせいで見えていなかった手足があらわになる。
ほとんど骨と皮。立っているのでやっとなんだろう。
膝は震え、息は荒くなっている。
何よりも気になったのは、腹に埋め込まれた石。
輝く、大きな石。3つ目のクリスタル。
「私では魔力量が足りなかった……
何度計算し直しても届かない!
私にもっと魔力があれば…………
…………奴は、魔王は私に言った、魔力をやる、と。
実験用の村と遺跡も目星をつけてある、と……
奴が私の実験のことを何故知っていたのかはわからん。
だが、そんなことはどうだって良かった!
あの子が蘇るなら、あとはどうなろうが!!!」
少し小突けば折れてしまいそうな体から出る声とは思えない。
ガルーダは完全に萎縮している。
かつての師、ガルーダにとっちゃあ魔法の神様みたいな人だ。信じられないんだろう。
この自分勝手な物言いが。隠されていた思いが。
それでも言葉を放つのは、まだエルンに希望を持っているからなのか。
「そんな……そんな理由で、多くの村人を…………」
「そんな理由だと!?
貴様らに何がわかる!?
私にとってこれは最重要事項だ!!
何を捨て置いてもやり遂げなければならん!!」
わかるさ。痛いくらいに。
だが、口には出さない。その同情がどれだけ役に立たないか、俺はよく知っている。
「エルン。
俺はお前が何をしようが構わない。
蘇らせたい奴がいるなら、蘇らせればいい」
「ちょ、ちょっとユウタさん……」
「だが、無関係の人間の命を奪うな。
そいつのことを大切に思う人は必ずいて、
お前と同じ境遇になる。
お前には力があった。
だが、力の無い人間がほとんどだ。
取り返せない。チャンスすら与えられないんだ」
こんな思いをする人間は、何人もいちゃいけない。
エルンにだってわかるはずだ。きっと……
「それがどうした。
有象無象がどうなろうと知ったことではない。
力の無い己を恨み、私の糧となれ。
貴様らも同様だ。私の研究の一部にしてやる」
…………どうやら根っからのクズみたいだな。
開き直っちまったらしい。
クリスタルを得た魔導師。
どんなもんか、試そうじゃねえか。
「ユウタ、とどめは俺に刺させろ。
愚かな師を更生する」
「ああ、1発思いっきりぶん殴ってやれ」
「え、援護します……!」
自己中の自信家に、ちょっと説教だ。
こんにちは
小夜寝草多と申します。
師匠と弟子という関係には、底知れないロマンを感じるのは私だけではないはずです。
ただ、理想的な師弟関係は今回は書けていません。
衝動書きするかもしれません。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。




