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第六話:新しい姿と、茶色い毛並みの裏側の秘密

#カタワレ時の手紙 #なろう悲恋 #涙腺崩壊 #エドとあかり #諏訪湖 #君の名は聖地 #泣ける小説 #感動の結末

時間とは、世界で一番静かな泥棒だ。気づけば、1月のカレンダーの最後のページがめくれようとしていた。UGMの休暇は残りわずかとなり、それは私の諏訪の街での滞在が終わりを迎えることを意味していた。私はジョグジャカルタへ帰り、再びブルクスムルの日常と、しばらく放置してしまっていた修士論文の草稿を抱きしめ直さなければならない。


しかし、スーツケースに荷物を詰める前に、私には果たさなければならない大きな責任が一つあった。フワちゃんの架空の大冒険を、きちんとした結末へと導くことだ。ただ黙って姿を消し、あかりを不確かな置き去りにしてしまうわけにはいかない。


その日の夕方、立石公園へ向かう前に、私は上諏訪駅の近くにあるおもちゃ屋を訪れた。私の目は、ひどくのんびりとした風風ふうふうで佇む、一匹の丸々とした茶色いクマのぬいぐるみ――リラックマに引き寄せられた。このぬいぐるみは、心地よさ、静けさ、そして温かな抱擁を体現しているように思えた。私はそれを買い求め、茶色いクマが着ている小さなジャケットの折り目のなかに、あらかじめ用意しておいた小さな手紙をそっと忍ばせた。


夕暮れの『カタワレ時』の空が、再び魔法のような薄紫のグラデーションを吐き出すなか、私はあの長い滑り台――『ロングスライダー』のそばに立っていた。あかりはすでにそこで私を待っており、その愛らしい顔を冬の強風に赤く染めていた。


「エドお兄ちゃん!」彼女は嬉しそうに呼んだ。

「今日は、またお便りある?」


「今日はね、国際航空郵便のお手紙はないんだよ、あかりちゃん」私は彼女の前にひざまずき、その小さな身体と視線の高さを合わせた。「今日はね、フワちゃん自身が、君に逢うために帰ってきたんだ」


私は布のバッグに手を入れ、あの茶色いリラックマのぬいぐるみを取り出すと、それをあかりへと手渡した。


小さな少女は呆然と立ち尽くした。彼女は困惑で眉をひそめながら、そのクマのぬいぐるみを受け取った。大きくて丸い瞳でぬいぐるみを見つめ、それから私を交互に見つめる。「でも……お兄ちゃん……これ、フワちゃんじゃないよ。フワちゃんは、可愛いリカちゃん人形だもん。これ……これは茶色いクマさんだよ」


私はできる限り優しく微笑み、その茶色いぬいぐるみの頭をそっと撫でた。「フワちゃんはね、あかりちゃんがびっくりしちゃうって分かってたんだ。だからね、一緒に一枚の説明のお手紙を託してくれたんだよ」


私はぬいぐるみのジャケットに挟まれていた小さな手紙を取り出し、あかりのために読み聞かせた。


【フワちゃんの帰還の手紙】


世界で一番大切な友達、あかりちゃんへ。


ただいま! 私の姿を見てびっくりさせちゃったらごめんね。世界一周の旅はね、私のすべてをすっかり変えてしまったんだ。私は熱い砂漠を渡り、高い山に登り、この地球のたくさんの素晴らしいものを見てきたの。そのすべての素晴らしい冒険が、私のものの見方を変え、私の心を変え、そして最後に、私の身体の形をこの温かい茶色いクマさんへと変えてくれたんだよ。お洒落なお洋服はなくなっちゃったし、身体の形も変わっちゃったけれど、あかりちゃんのことが大好きな私の魂は、これっぽっちも変わっていないよ。これからはね、前よりもずっと柔らかくて温かいこのクマさんの身体で、あかりちゃんをぎゅっと抱きしめる準備ができています。


その手紙の言葉を聴くうちに、あかりの瞳のなかの疑念がゆっくりと溶けていった。子ども特有の無垢で奇跡に満ちた想像力が、この美しい嘘を再び受け入れたのだ。彼女は茶色いリラックマのぬいぐるみを胸の奥できつく抱きしめ、暗くなりゆく夕空を見上げて大喜びで微笑んだ。


「フワちゃん……旅をして、とっても疲れちゃったんだね?」 あかりは新しいぬいぐるみに向かって愛らしく囁いた。


彼女の笑顔が完全に元に戻るのを見て、私は胸の奥に言葉にできないほどの温もりを感じた。しかし同時に、寂しさが胸を締め付け始めた。私はジャケットのポケットにもう一度手を入れ、固く封印された一通の分厚い白い封筒を取り出した。


「あかりちゃん」私は声を少しだけ感傷に濡らしながら呼びかけた。「お兄ちゃんね、明日インドネシアに帰らなきゃいけないんだ。お兄ちゃんの冬休みは、もう終わりなんだよ」


あかりの顔から、笑顔が一瞬にして消え去った。

「お兄ちゃん……いっちゃうの?」


「うん。でもね、お兄ちゃんはこのお手紙を君に残していくよ」私はその分厚い白い封筒を彼女の小さな手に預けた。「これはね、お兄ちゃんからの特別なお別れの手紙なんだ。人生と愛に関する、たくさんの哲学的な言葉が詰まっている。お兄ちゃんと一つだけ約束してほしい……この手紙を、今は絶対に開けないで。君のお部屋の一番秘密の場所に、大切にしまっておいて。君が大きくなって、大人の女性になったとき、この世界の本当の意味が理解できるようになったときにだけ、この手紙を開けて読んでほしいんだ」


あかりは瞳に涙を溜めながらその封筒を見つめていたが、素直にこっくりと頷いた。「約束するよ、お兄ちゃん。私、大人になるまで大切にしまっておくね」


その夜、立石公園の薄暗い灯火の下、そして白く凍りつく諏訪湖のひろがりの前で、私は私の冬を美しく彩ってくれた小さな少女に別れを告げた。私はその丘を歩き去り、信州の夜風が雪の上の私の足跡を綺麗に消し去っていくのに身を任せた。私がプレゼントしたぬいぐるみの、あの茶色い毛並みの裏側に、ひとつの大きな秘密を静かに込めて置き去りにしながら。


第六話をお読みいただき、本当にありがとうございました。


エドが用意した、リラックマのぬいぐるみと『二通の手紙』。現実のリカちゃん人形は戻らなくとも、あかりの心に「フワちゃんが帰ってきた」という確かな温もりを残し、エドはジョグジャカルタへの帰路に就きます。大人になるまで開けてはならないと約束したお別れの手紙、そしてぬいぐるみの裏側に隠された秘密が、二人の物語を未来へと繋いでいきます。


次回、いよいよ最終章となる【エピローグ】です。

舞台は7年後の冬、2024年の東京へ。高校3年生の18歳に成長したあかりが、クローゼットの奥からあの古びたぬいぐるみと、黄色く色褪せた手紙を取り出します。

そこで明かされる、エドが本当に伝えたかった言葉と、時を超えてアカリの心に届く涙の奇跡。この切なくも美しい愛の結末を、どうぞ最後まで見届けてください。


この物語の本当のエンディングを見届けたいと思ってくださった方は、ぜひ【次のエピローグへ】お進みください。皆様のブックマークへのご登録や評価(★★★★★)が、この物語を永遠にする最大の光となります!

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