二話
「私は、この大学の弁護顧問をしている成井です、今からお伝えするのは決定事項です」
目の前には神経質そうな男性が一人。
頭を必死に働かせる。
ただ普通の大学生だ弁護士が出てくるような重大なコンプライアンス違反などした記憶もない。
暑くもないのに背中に汗が流れる。
「横井玲央君、ダンジョン管理者法に乗っ取り休学とする。 この件に関しては君に非がない為履歴にも残らない」
「ダンジョン管理者法?」
首を傾げる。
ダンジョン管理者法の意味が分からないのではなく、何故自分に適用されたのかだ。
ダンジョン管理者法は自分の土地にダンジョンが現れた際責任者となりその土地に住んで管理しなくてはいけないと言う、強制執行力のある法律だ。
こっちは土地どころか、ダンジョンにも入った事ない普通の大学二年生だ。
「あの…土地なんて持ってないですよ」
「うん君の動揺もわかる。此方もちゃんとした調査員を使って調べた結果、悪質な手法だが法的に問題ないされ方をしててね」
「はぁ…」
「君の母方側なんだが」
自分の喉が「ヒュッ」となり喉が渇いた。
母方は地方で名家の出身だったらしいが、見栄を張る為にバイト代搾取などされる毒親、毒兄弟で苦労したらしく父親と結婚を機に縁を切ったって聞いてたが…
「母からは縁を切ったと聞いてますが」
「法的には縁が切れてなかったようで、遺産相続で自宅とダンジョンを君が継いだ事になったと法務省から連絡があった。 私も対応出来るか調べたのだが申し訳ない」
「そうなんですか…」
両親は三年前に事故で亡くなった。
しかし、本当に母親が言った様に酷い家族だったんだな。
仕方ないが両親の遺産でダンジョン潰してもらうしかないか…
「コレから酷な事を言うが聞いて欲しい。 君の受け継いだダンジョンのランクは最低のZランクです」
Zランク。
素材も何も取れないただただマイナスなダンジョン。
「更には深度Cです、こう言っては何だが退学以外の道がないです」
深度Cは上から三番目のモンスターの強さだ。
つまり、素材も取れない、モンスターも強い大外れのダンジョンだ。
「最悪だ」
深度Cのモンスターが居て素材も取れないダンジョンを攻略して消去して貰うには十億円でも無理だ。
「判断は君に任せます…停学なら期間は二年です。 退学ならダンジョン管理者法によって今までの授業料を全額返還です」
停学でも先は無い…今更足掻いてもな。
「……退学で」
覚悟は決めたものの声は震えて居たと思う。
両親の死もそうだが今回の事も…俺は諦めてしまってるんだと思う。
抗いても無駄なことは無駄だ。
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退学から二日後、バイクに詰めるだけの荷物を持って生まれて初めて母親の生まれ故郷に着いた。
予め連絡先を貰って母方の親戚に連絡したが『お前の母親が悪いとだけ』としか言われなかった。
そして、用意周到なのが遺産相続後に母方とは法的に縁が切れていることだ。
父親側の親戚筋も俺が幼い時に亡くなってもう居ない。
本当に天涯孤独になったのだ。
「ここか」
目の前には大きな日本屋敷に蔵。
中には足を入れると何も残って居ない。
家具の一つもだ。
「…まさか予想通り何も残って無いとは、寝袋とか持って来て良かった」
まさか畳まで無いとは。
電気水道ガスなどは前日に連絡しているので生きている。
荷物を置いて外に出る。
周りは森。
近所まではニ百メートル以上離れている限界集落だ。
少し歩くと岩がありポッカリ空いている。
初めて見るダンジョンの入口だ。
初めてダンジョンに入るとその人に適応したスキルが与えられる、意を決してダンジョンの中に入る。
『ダンジョン入場を確認…スキル選定中…スキル【ダンジョンテイマー】を取得……現在いるのダンジョンはテイムされて居ません…スキル自動発動…テイム成功』
『【ダンジョンをテイムした者】初回限定付与します』
「は?」
目の前には半透明の画面。
〉テイムダンジョン
〉ダンジョン名称無し
〉ランクZ
〉深度C
〉全五階層
〉魔力15/100
〉スタンピード 設定On
コレって…ダンジョン機構の画面じゃないか。
ランクの高いダンジョンは資源が豊富に取れる為ダンジョン庁からダンジョンコア管理のための機材を与えられる。
その画面とそっくりなのだ。
違いはスタンピード設定。
画面のランク部分を触ると反応し新しい画面が現れた。
〉ランクZ→ランクX|(必要魔力20)
…ランク上げれるのか!?
調べたけどランクアップなんて世界でも数例しか確認されて居ない事例だ。
次に少し希望を持って深度を触れる。
〉深度C→深度B|(必要魔力50)
〉深度C→深度D|(必要魔力45)
下げられる。
魔力さえあれば!
次は魔力を触れる、表示は変わらないが魔力の取得方法がわかった。
ダンジョンコアの吸収、または集客による魔力蓄積、ダンジョンテイムによる徴収。
最初の二つはまだわかる、だが、最後のがヤバかった。
ダンジョンテイム出来るのは自分だけ、つまり人気ダンジョンをテイムすると一定量の魔力を徴収出来る。
それを利用してランクと深度を操作すれば負債の塊であるこのダンジョンを有益なモノに。
取り敢えず、スタンピードをoffにした。
このスタンピードがダンジョン管理者にとって最大の課題だった。
定期的にプロを雇い間引きをする。
その金額は少なくても百万円から、ダンジョン消滅まで依頼すれば数百万円、ランクが高い大手ダンジョンの管理者なら入場料を取って専属でプロを雇う。
コレが今までの体制だった。
それが無くなるだけでも肩の荷が降りた感じだ。
だからと言ってこのスキルは公に出来ない…余りにもヤバいからだ。
もし、スタンピードが無くなったらプロ討伐者は必要なくなるからだ。
それで稼いでいる人にとっては俺は敵でしか無い。
絶対に殺されるか、監禁され無理矢理にでも働かせる。
うん、イカれてると思うけど自分でもそうするし。
取り敢えず家へと戻る。
畳くらいは入れないとな…そう思いながら寝袋の上に座る。
「寒っ…まあ、秋口でよかったのかな。 冬だったら100%凍死だわ」
念の為に持って来て居た木炭を囲炉裏に焚べる。
なさか本当に使う事になるとは思ってなかったが…
うん、明日買い物行こう。




