1話 俺の高校デビューは氷点下!?
雪解けが落ち着き、来るべきこの日。
どれだけ待ちわびた事か。
早咲きした桜に見守られながら、新しい制服に袖を通す。
鏡を見て、身だしなみを確認する。
「髭のそり残しもなし。前髪も調子良し。コンタクトの変えも良し・・・・」
この日の為にしてきた準備は完璧だ。ほこり一つついていない。
「よしっと、行ってきます!!!」
「・・・・・どしたんそんなかっこつけて」
玄関を開けると、茶髪のショートカットの女の子が立っていた。
「なっ、なんでお前がウチに・・・・」
「今日から同じ高校に通う幼馴染が迎えに来るのは常識だろ?」
「京子がいると、俺の新しい門出の意味がなくなるんだよ!」
「ただの高校デビューだろ?メガネもやめて、天然ストレートだった髪もパーマなんて当てちゃってさ」
渡塚京子。昨日までの芋くさい俺を知っている弊害その①。
こいつがおNEWな俺の邪魔をすると予想している。
「いいんだよっ!!中学のイケてない俺とは卒業したのだ!そう・・・・生まれ変わった乾幹太は今日を持って・・・・」
「はいはいデビューした幹太くん。入学式から遅刻は笑えないからね。イキマスヨー」
「いててッ!!耳を引っ張るな耳を!!!」
京子に袖ではなく、耳を掴まれながら歩きだす。
ゴミ捨てに来てた近所の主婦はクスッと笑いながら俺達を見守っていた。
「只今より、今年度、入学式を始めます。一同起立」
新任の先生の一言で一年生全員が立ち上がる。
ここは私立明空学園。
立地が良く、学校の周りには遊び場が多くて人気の高校だ。
俺からしたらそんなのは決め手じゃない。至って単純な理由。
それは『今までの俺を知っている人間が少ない』からだ。
中学では根暗で、髪もぼさぼさ。眼鏡をかけて教室の隅っこで読書している生徒。
世間ではそれを『陰キャ』とでも言うのだろう。
変わりたかった。俺だって一軍の男子に混ざってアイドルの話とかしてみたかった。
でも声をかける勇気はない。むしろ変にいじられるのが怖かった。
俺が描いてた『青春』そのもの。憧れだったのだ。
卒業までの暇な時間に筋トレをして体を鍛えたり、髪のスタイリングを練習したり、コンタクトに慣れてみたりと努力を重ねて自分の容姿に自信をつけた。
そして、なるべく俺の事を知っている人が少なく中学より遠い高校、明空学園を受験した。
(今日から新しい『乾幹太』の青春が始まるのだ・・・・)
しかし、憧れというのは現実には似つかないものだ。
京子(弊害①)よりも危惧しなければいけない存在がいる。
「・・・・・・校長先生、ありがとうございました。続きまして新入生代表・雪代冬華さん」
「はい」
一人の少女が立ち上がり、登壇する。
新入生含め在校生達がざわめき始める。
長くて綺麗な白髪、長いまつ毛、顔も小さくスタイルが抜群。
きっとモデルだって負けるであろう容姿をしている。
「なんだあれは!あんな美女が俺たちと同じ1年生なのかよ!??」
俺の隣にいる新入生が声を上げる。
どいつもこいつも、まるで分っていない。
雪代冬華は全校生徒の前に立ち、話し始めた。
「暖かい春の日差しに包まれ、桜の花が満開となる今日、私たちは明空学園の入学式を迎えました。
ご列席いただきました皆様に、感謝申し上げます。」
そう。この女こそ俺の新生活を脅かす、弊害②なのだ。
雪代とは小中と腐れ縁なのだが、何故か俺にいつも冷たい。
元々クール系ではあるのだが、何を話しかけても無視される。
積極的に声をかけてみたこともあったのだが、物凄い形相で見られたこともある。
それだけなら構わない。それよりも問題の事がある。
彼女の目線をいつも感じるのだ。
給食を食べていてふと顔を見上げると、雪代がこちらを見ている。
『うっわぁ~豚が残飯食べてるよォ~』みたいな目。
(お前らだって、同じの口にしてんんだろうが・・・・)
よく見ると彼女の耳たぶは真っ赤で、手元の箸が小刻みに震えていた。
長年見てきてたどり着いた答えは、雪代冬華は俺の事が嫌いという事。
それも『超』が付くくらいだろうな。
そんな彼女が何故、俺と同じ高校に入学したのか。
俺を知っていなそうな所をわざわざ選んだのに。
中学の俺を知る存在で一番危険なのは、紛れもない雪代なのだから。
気が付くと彼女は降壇し、自分の座席に戻っていた。
入学式が終わり、一年生は各々クラス表を確認して自分の教室に向かう。
俺は一年Aクラス。
一年生の教室は四階にあり、学年が上がるにつれ下がっていく。
Aクラスの教室は一番階段が近くて非常に助かる。
長い階段を上り、俺は教室の前についた。
「ここが今日から俺が一年間過ごす場所かぁ。さすがに緊張してきたな・・・」
初めてクラスメイトと対面する。ドキドキしないはずがない。
こういうのは最初の掴みが肝心なのだ。
ボケる?クールにいく?それとも普通に入る???
考えても拉致が開かない。こうなれば昨日考えた『作戦Z』で行こう。
俺は前髪を挙げ、バックを片手で持ち、わざとらしくあくびをしながら扉を開けた。
「あぁ~あ、超ねみぃーぜぇ」
教室には歪な光景が広がる。
それは仮にも俺が滑ったからではない。
クラス内の生徒たちが一人の生徒を大勢で囲んで話しかけていたのだ。
というより、そちらに夢中で誰も俺に見向きもしない。
「まさかトップアイドル・『ゆずりんこ』のセンターである九尾さんと同じ学校だなんて思わなかった!!」
「武道館ライブ行きました!!めっちゃ可愛かったです!!」
「ファンです!握手してください!!」
周りの生徒は回りを気にせず話しかけまくる。
九尾天狐。世間じゃ知らない人がいない程の有名人だ。
赤紫色の髪色で泣きほくろがある、童顔の女の子。
かく言う俺も、中学時代は彼女が『推し』だった。
イケメン俳優との熱愛が報じられ、冷めてしまったが・・・・・
「えッっと、その・・・まぁ、みんな落ち着いて・・・」
質問攻めをくらう九尾には心底同情せざるを得ない。
みんなの気持ちはよく分かる。なんせクラスメイトに一流芸能人がいるのだからな。
しかし、彼女が相手だと俺も太刀打ちできない。
いや、ある意味助けられたというか・・・・。
(・・・まぁ、いいか)
肩をすくめながら教室に入ろうとした瞬間、背中にとてつもない冷気を感じた。
それはまるで、極寒の中、冷たい風が押し寄せるような感覚。
「あの・・・・・・」
か細く小さな声が透き通る。
(この声はまさか・・・・。)
後ろを恐る恐る振り向くとそこには雪代が立っていた。
「もしかして、雪代さんもAクラス??」
「・・・・・・ん」
俺の呼びかけに対して目線も合わせずに小さく頷く。
最悪だ・・・。神様、イタズラが過ぎるぞ・・・。
よりにもよって関わりたくないランキング一位である雪代と同じクラスだなんて。
この学校は三年間クラスがない。という事は卒業するまで『雪女』みたく冷たい女と共に過ごさないといけない。
冷た過ぎて、常時『冬時』みたいなもんだ。
更に俺は自分のデビューが失敗したと思えた。
「おい!あの人・・入学式でスピーチしてた人じゃない!?」
男女問わず、クラス中の目が九尾から雪代に移る。
気付けば雪代の周りは人に囲まれていた。
九尾の周りはすっからかんだ。
俺の席は九尾の後ろだ。むしろ有難い。今は人と関わりたくないからな。
肩をくすめながら俺は自分の席についた。
前を向くと、九尾が下を向いているのに気が付いた。
耳を傾けると何やらぶつぶつ言っている。
「・・・あの女、なんなのッ・・・」
そりゃそうだ。さっきまでちやほやされていた人間だ。
自分が一番だと思っていた所に、強敵が現れたんだ。
現役のアイドルとしてのプライドが許せないんであろう。
「あっ、あのさ」
元推しとして、泣きそうな彼女を放っておけず、つい口が動きかけた。だが、すぐに思い直して口を閉じる。
今はそっとしておくのが無難であろう。
それにきっと飛び火を喰らう。それだけは避けたい。
初日で新たな敵を作るのはごめんだ。
俺は友達と何気なく過ごし、穏やかに青春を送って卒業する。
その目標の為には最低限の人とだけ関われればいいのだ。
だが、その為にはあの女・・・雪代冬華が問題だ。
彼女に目をやると、囲まれて困っているように見える。
雪代は俺の方を見ている気がしたが、きっと気のせいだ。
「おい・・・邪魔だ。どけ」
雪代を囲む人だかりに向かって声をかける男子生徒。
目元が吊り上がり、茶色のリーゼント。
古臭い見た目だが、分かる。
あれは『不良』の類に入る人間だ。
群がっていた生徒達は彼の威圧に圧倒され、ぞろぞろと雪代から離れて行った。
(おー凄いな。あの一言でクラスメイト達が散らばって行った・・・・。
いまだにあーゆタイプの不良って存在するんだなぁ。)
俺は深く感心した。
「ふーん。あーゆタイプの不良って存在するんだ」
「げっ、京子」
まさかの俺の席の隣だったとは・・・。
てかこいつも同じクラスかよ。
「よ!隣の席で嬉しい筈なのに、なんだその変な顔は」
「いや、別にぃ。俺と同じ事思ってるの、さすが幼馴染だなぁって」
「なーに俺も京子が隣の席で嬉しいってことか!?このこのぉ〜!」
京子は子供のように無邪気になりながら肩パンを繰り返す。
(そっちの意味じゃないんだけどなぁ・・)
キーンコーン、カーンコーン。
教室中に始業のベルがなり、担任が入ってきた。
「いつまではしゃいでるんだぁー。はい着席ー」
ジャージをダルそうに身に付け、眼鏡越しでも分かる死んだ目の女性の先生だ。
「えーっと、今日からこのクラスの担任になりましたぁ。式子織姫と言いまぁーす。まぁ、その、三年間一緒に卒業まで仲良くしていきましょーや」
式子先生はあくびをしながら挨拶をした。
(なんてだらしない先生だ・・・)
先生がチョークを持ち、黒板に文字を書き始めたの同時に教室内のざわめきが目立ち始めた。
ほらみろ。他の生徒達も「この人大丈夫なんだろうか?」と心配し始めてるじゃないか。
・・・・と思っていたのも束の間。
聞こえてきたのは男子生徒達の一つのヒソヒソ話だった。
(なぁなぁ!美人なのにあのだらしない格好、逆にそそるよな!)
(わかるわぁ〜!近所にいる年上のヤンキーねぇさんみたいで!)
(絶対休憩時間にタバコ吸ってるよ!俺にはわかる!)
この会話を皮切りに他に耳を傾けると、男子達は式子先生の話題で持ちきりだった。
・・・・どうやら男人気は高いみたい。
反対に女子はというと、
(何あのスタイル!!まじ羨ましいんですけど!!)
(ねぇ!あとで年齢きこ!ねぇ!あとで年齢きこ!!)
(いいなぁ〜将来はあーゆーかっこいいお姉さんを目指したいなぁ〜)
・・・・女心もちゃんと掴んだ式子先生だった。
生徒の静かな歓喜を置き去りにしたかのように式子先生はチョークを置いた。
手に付いた粉を息で吹き払い、眼鏡をくいっとあげる、
「えーっと、今から保健室で身体測定を行います。体操着に着替えたら、名簿順に並ぶようにー」
先生を後頭部を掻きながら教室から出て行った。
身体測定。ここできたかッ・・・・・。
中学の頃、あまりにも記録が酷くクラスのみんなから笑われ、俺は酷く落ち込んだ。
高校デビューの為、毎日筋トレを行い、体力をつけ、心身の成長を促してきた。
中学とは環境も違う。歴史は繰り返させない。
そう強く意志を固め、いつか訪れるであろう「身体測定イベント」を待ち望んでいた。
その時が今訪れようとしている。
ーー目指すはただひとつ。『平均基準値』のみッ・・・!!
俺は颯爽とカバンから体操服を取り出し、制服を脱ぎ始めた。
その瞬間、頭に雷が落ちたかのようなゲンコツが降り注いだ。
「ばかんた!!男子の着替えは第二理科室ダぁぁ!!!」
「よーし、名簿の順番に呼んでいくぞぉ〜。呼ばれたやつから並べー」
保健室の前の廊下で式子先生は名前を気怠そうに読み上げていく。
「いぬいーみっ、みね??下なんて読むか分からんわぁ。いぬいみねふと〜」
「『かんた』です!『かんた』!!」
そんなに難しい文字ではないと思うのだが、こいつ本当に教員免許持ってるのか??
変に疑いながらも列の最後尾に赴いた。
俺の後ろにもう1人並び始めた。
「うりばたけとらたつうさぎ?なんだこの変な名前は(笑)」
「瓜畑牛虎兎です!僕の名前を笑わないで下さい先生!!」
(・・うん、これは笑われても仕方ないかも。)
しょんぼりしたエトくんは、「また笑われた」と肩をくすめながら列に向かう。
ん・・・・ちょっと待て。
俺の次の名簿は瓜畑牛虎兎、エトくんだ。
エトくんは今呼ばれたばかりだ。
となると先程から俺の後ろにいるのは誰だ。
冷たい冷気のようなものが首筋に当たる。
恐る恐る後ろをゆっくりと振り向く。
「まさか・・・・」
「・・・・・・・・・ん」
「・・・・・・・・なんでもう並んでるの、雪代さん」
なせゆえ雪代冬華は列にいる。
名簿はあかさたな順だから、彼女は後半だ。
長くて白いまつ毛をなびやかせながら、上目遣いでこっちを見つめている。
「・・・・・・・・・・・・?」
「いやまだ呼ばれてないじゃん」
教えて上げても彼女は表情一つ変えずにこちらを見続けている。
先程より更に不思議がっている。
その様子が益々俺に謎の恐怖感を植え付けていく。
てか、さっきより顔徐々に近付いてきてない??
彼女の目に吸い込まれていきそうになる。
中学の頃からそうだ。何かあるとすぐに俺を見ている。
何が目的なんだ一体。
じわじわと支配されていくような悍ましさ。
君は何を俺に訴えて続けているんだ・・・・。
「オイ、うるせーぞ!!」
俺の前に並んでいた生徒は、例の不良だった。
不良は体格が良く、振り向きざまに彼の膝が俺に当たった。
「あっ」「・・んっ」
背中を押され、雪代の肩を掴みながら前屈みに倒れていく。
前からきた俺の反動に巻き込まれて、彼女も後ろに倒れてしまった。
「ってぇ・・なぁ。雪代さんだいじょ」
この体勢のヤバさに咄嗟に気が付いた。
雪代の顔と至近距離。今にもキスできる範囲だ。(しないが)
しかし、間近で見ると本当綺麗な顔立ちをしている。
まじまじと見るのは初めてで、少しだけ見惚れてしまっていた。
だが彼女からしたらこっちに押された身である。
すぐさま身体を起こし、雪代に手を伸ばした。
「ごっ、ごめんわざとじゃないんだ。バランス崩しちゃって・・・。怪我ないか?」
「・・・・・・・・」
彼女は無言を貫いている。顔も背き、気まずさが増す。
雪代の手が俺の手に触れた。
妙に何故か冷たく感じたのはきっと俺に対する嫌気からなのだろうか。
立ち上がった雪代は俺の方を見る事なく、その場から走ってどこかに逃げて行った。
「・・・何も嫌いだからって押し倒すのはちょっと・・」
横から列に並ぼうとした京子が俺に話しかけてきた。
「不可抗力だ!そんな事するわけないだろ!!」
「ふーん。てか廊下ってこんなに寒かったっけ?」
雪代に見惚れていた熱が冷めたことによってか定かじゃないが、確かに寒い。吹雪の中外出した時みたく。
「言われてみればそうだな。急に冷え込み過ぎだろ!この学園ちゃんとエアコン整備してんのか!?」
ん?もしかして雪代のやつ・・・・。
「はーい廊下は走ってはダメですよ〜」
走る雪代の肩を、すれ違い様で式子が叩く。
「どうした急に走り出して。身体測定は始まってるんだぞ?教室に忘れ物かー?」
「・・・・いいえ、違います」
下を向く雪代の顔を伺った式子は何かを悟った。
「なるほど、なるほどな。まぁ、いいや。だけどあんまり学園で漂せるなよ〜。エアコン壊れたらうちが始末書書く羽目になるんだからぁ」
「・・・・・え?」
そう言って式子はその場を後にした。
式子が歩いて行った廊下を雪代は口をぽかんと開けながら見つめていた。
暫くしてから雪代は大きく深呼吸をし、その場にしゃがみ込んでしまった。
ふと先程の出来事を思い出す。
真っ白な透き通る程の肌は徐々に、赤面へと変わっていく。
(う、うわぁぁぁぁあああああ!!!幹太くんが私の上に!!)
手で自分の顔を覆い隠しながら、慌てふためく。
(幹太くんの、彼の顔・・・。凄く近かったなぁ・・。あれが人間界に伝わる『はじめて』と言うものなのかしら。
うわぁあああ!!どうしようどうしよう!?!)
完璧な無表情の裏で、脳内はマグマのように沸騰している。
しかし、感情が昂れば昂るほど、『雪女』としての防衛本能が働き、再び身体がガタガタと震えだしてしまった。
付近の廊下の窓がひんやりと凍り始めた。
(落ち着きなさい冬華・・・冷気を漏らしては行けないわ。みんなに迷惑を掛けてはいけない。それが私達『妖怪』のルール。鎮まれ鎮まれ・・・)
手で体を押さえる。
その瞬間、雪代のか細い肩にバサッとジャージがかけれた。
「雪代・・・・大丈夫か・・・?」
「!!??」
振り向くと心配になって駆けつけた幹太が立っていた。
「やっぱり寒かったんだよな。そんなに震えるほどに。いきなり走っていったからびっくりしたよ」
「・・・・・・!?(ちっ、違うわ幹太くん!それは私の・・)」
「着てけよそれ。嫌だろうけど風邪引くよりマシだろ?」
《ピーピーピー》
雪代の鼓動は警告音が鳴り響く。
幹太は照れ隠しにふいっと顔を背け、「じゃあな」と足早に保健室へと戻って行った。
気まずさは既に限界突破。だけど冷え切った廊下で、体操服一枚のままの震えている彼女を放ってはおけなかった。
お調子者だけど、根が優しいのが乾幹太という男である。
雪代は肩に掛けられたジャージを強く握りしめる。
(幹太くん・・・・ありがとう・・・・)
ピシッ、ピキキキキ……!
周辺の廊下のガラスは一瞬にして、結露で埋め尽くされていく。
(もうこれは・・・・これは・・・・)
バキィィ、バリン!!!
(『私のこと好き』ということよね!!!!)
凍ってたガラスは全て、跡形も無く割れていった。
「うわっ!?!なんだなんだなんの音だ!」
「見てっ!窓全部割れちゃってるよ!!」
音を聞きつけ、他クラスの教室から続々と先生や生徒達が驚いた様子で廊下に身を乗り出してきた。
怪我人はいないか探す者、事件だと茶化しにきた者などで溢れ返る。
しかし、雪代だけは満足そうな笑みを浮かべていた。
「ハックション!!
・・・にしてもなんでこんなに寒いんだ?!どうなってんだこの学校はよぉ・・」
保健室に戻りながら、幹太は考える。
設備は整ってないし、変人は多いし、この学園に入学したのは失敗だったのかもしれない。
はたして俺はここで『青春』を謳歌することは出来るのだろうか。
いや、環境のせいにしてはダメだ。
自分で決めた場所だろう。それにまだ始まったばかりだ。
「よっしゃ!!そうと決まれば自分なりに楽しんで行くぞォー!!」
ー私立明空学園。人間界に住み着いている『妖怪』達も通っているちょっと不思議な学校。
このお話はそんな学校を舞台に起こる『妖怪』と『人間』の、少し変わった、怪談話である・・・・。




