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神隠しによる放浪記  作者: レブラン
第四章
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襲撃者と対決

 二つの金属がぶつかり金属音が響き渡る。

 その斬撃は鋭く、刃先の長さでは巧が有利なはずなのに、振れども振れども男は短剣で防ぎ当たらない。

 寧ろ、遊ばれている様子でもあり、余裕を見せて避けている。


「へえ、重いな。それに中々良い斬撃だ」

「それを避けたり防ぐあんたも相当だな。反撃をしないって事は俺の攻撃に耐えきれないって感じか?」


 相手から来させようと挑発をする。


「そうかい。ならお言葉に甘えていかさせてもらうよ!」


 男は体勢を低くして、短剣を巧に振りかぶる。

 その一撃は軽いが手数を稼ぐからか、一度に留まらず、もう片方の短剣で数度と巧に対して攻撃を振るう。

 何度も攻撃を受けているからか、巧の顔や腕などに切り傷が増えていく。

 

「タクミ……! く、あなた……邪魔よ!」

「あら、残念。愛しのタクミ君には辿り着かせないわよ?」


 シロが心配するのか声を上げるが、エルフ女に邪魔をされ巧に向かえない様子であった。

 

「シロ、俺は大丈夫だ! お前はそいつに集中しろ!」

「ほお、自分自身の心配より、そっちの女を心配するとはな」

「ああ、そりゃ心配するよ。だって仲間だからな!」

 

 巧は剣に魔力を注ぎ込むと、先程よりも素早い一撃を放つ。

 だが男は予想していたのか、後ろに飛び跳ねて避け、剣は空を斬る。

 

「今のでも避けられんのかよ」

「その剣なんだ? 光ったと思ったらいきなり速くなるとか」

 

 男は短剣を前に構え姿勢を低くして警戒する。

 巧が持っている剣に。

 

「教えてやるよ。お前を倒した後でな!」


 地面を蹴り上げ、男に向かい飛び込む。


「そうはいかないぜ!」


 再び剣を短剣で受け止められると、巧は唱える。


「風壁!」

「な……! くそが!」


 急に来た風の風圧によって男はぶつけられ、なすすべなく吹き飛ばされた。

 チャンスと見たのか巧は駆け出すが、男は吹き飛ばされながらも手に持っていた短剣を巧へと投げつける。

 

「と、あぶねえ……なあ!」


 巧は剣をバッドのように構え、魔力を注ぎ込み、振り被る。

 投げられた短剣類を剣背に数回当たり、複数の金属音が辺りに響き渡った。

 跳ね返した短剣はどれも的外れな方向へと飛んでいく。

 

「な……! 無茶苦茶な野郎だな!」

「全てお前に返せるかと思ったけど無理だったか」

「その剣の腕で更には魔法も使えるとか、お前を殺すのは惜しいな。どうだ? 俺の仲間に入らないか? 今なら俺があいつに言いくるめてお前を取り入ってもいいんだぜ?」


 男はてのひらを巧に向け勧誘をし始めた。

 その言葉に巧は腰に手を当て悩む。

 

「うーん、まあ何度か相手して、お前が強いのはわかった。このままじゃ、俺は殺されるな。そこには俺の仲間も入れるのか?」

「あそこで戦ってるシロって奴か? それともリウス、ハリトラスって奴か? それは無理かもな」

「何故だ?」

「あの女、いや俺達の主人が最悪、もし倒したなら首かそいつ自身をもって来いとまで言われてるからな。それに今頃、他の奴等がその二人を殺しに行ってるさ」


 巧は一瞬、険しい顔をするが、すぐさまにこやかな顔をした。

 

「そか、それは残念だ……。まあ俺が入るのはやぶさかでもないが」

「なら」

「ああ」


 巧は腰に手を当てたまま男に近づくと……。 


「お断りだ!」


 背中に付けていた短剣を抜き、男に投げつけた。


「こ……、くそ!」


 短剣は弾かれどこかへ飛んでいく。

 

「水ビーム!」


 追い打ちをかけるように巧は水ビームを撃ち放つ。

 

「こいつ! 風脚、風体!」


 男の体は柔らかな光に包まれると、水が届く前に体を無理矢理ずらし避けた。

 水が横を通り過ぎると、地面を蹴り巧へと飛び込む。

 

「死ね! 【疾風弾しっぷうだん】!」


 男は巧との距離が離れているが、短剣を突き出すような動作を行う。

 すると、短剣が光を帯び、巧へと光の投擲が放たれた。

 飛ばされた光は速く、巧の反応速度を凌駕する。

 間近に迫る光……。

 だがその時、巧の目には不思議な事が起きていた。


(なんだこれ? 周りがゆっくりだ……)


 そう巧は周りが遅いと錯覚してを起こしていた。

 死が間際に迫っている為か脳のリミッター解除されたのだ。

 巧は無意識のうちに剣を光の投擲に当て、軌道をずらす。


「ッ――!」


 軌道をずらす事には成功したが、光の投擲は運悪く巧の腕に当たる。

 

(いってえええええ! また腕に! くそ!)


 突き刺さった光の投擲は消えると血が噴き出す。

 巧は血を止血するように腕を抑え込み、そして男を睨む。

 

「おいおい、そんなに睨むなよ。お前が断りさえしなければこんな事にはならなかったんだぞ? 今ので殺さなかっただけ感謝してくれよ」


 挑発してるのだろう、男はそんな言葉を言う。

 

「何が感謝だよ。暗殺者ならさっさと殺せよこのウスノロが」

 

 額から汗が流れ落ちる。

 

(手に力が入らない。次攻撃されたらやられるかも……。 仕方がない、あの魔法を使うしかないのか)

 

 男は近づき、巧は警戒する。


「じゃあな!」


 巧は体勢を低くし魔法を放とうとしようとした時、何かの音が響き渡ると巧と男の間に飛んでくる。

 

「な……! くそ!」


 男は咄嗟に後ろへ飛び、何者かの攻撃を避けた。

 その攻撃は巧の良く知る攻撃。

 

「今のは光斬か?」


 通常の光斬とは色が少し違う感じであった。

 そして降り立つ、一人の女性。

 巧はその女性から、どこか見知った様な既視感を感じた。

 後ろ姿は鎧越しからでもわかる女性特有の細い身体、髪型は銀色のショートヘアに二本の角、尖った耳、背中に羽がつけられ、鞭のよう尻尾が生えていた。

 そう、それは所謂いわゆる悪魔と言ってもおかしくはない。

 巧は警戒をするも、その後ろ姿にどこか安心していた。

 

「タクミ、遅くなってごめんなさい」

「まさか……」


 女性の悪魔は振り返る。

 その姿に巧は驚愕する、それは良く知る人物であったから。

 

「シロ……なのか?」


シロの悪魔化はまだまだ先まで残すと考えていたのですが

何となく出しちゃいました。


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