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神隠しによる放浪記  作者: レブラン
第四章
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巧とベランジェ

「ここでお待ち下さい」


 そう城兵に案内された巧達は広場に案内される。


(流石一国の城、金かけてんな)


 巧は辺りを見回すとどれだけ高価なのかが一目見てとれる。

 金箔の椅子、シャンデリア、巧達が歩いて来た絨毯。どれをとっても、一般市民からすれば手を出すことさえ不可能な代物だと言う事が判断できる。

 冒険者と言う事だからか、数名の兵士も巧達を囲う様に見張りとして立っていた。

 どの兵士も熟練した訓練を受けているのか、巧達を警戒する様な目で見る。

 その視線に当てられ、リウスは不安そうな顔をして巧のローブを掴む。


「警戒してるな」

「ああ、流石に俺でもわかるぜ」

「伝令の兵士に君達が隣国のテルヌス帝国の兵士と会ったと話したからな。それでだ」


 そこで扉が開かれ兵士が数名広場に入ってくる。


「間もなくベランジェ王が来られる。一同頭を下げて王をお迎えしろ」


 ギルド長は片膝を付き、頭を垂れた。


「はあ? 俺等もしなくちゃならないのか?」

「そうだ、王の前だ失礼の無い様にしなければならないんだ」

「まあ、ハリトラス。ここは言う事聞いておこう。郷に入りては郷に従えってな」


 巧達はギルド長と同じ様なポーズをとり、ベランジェが到着するのを待つ。

 暫くすると扉が開かれた音が響き、複数の鳴りの良い靴音の響きが広場を駆け抜け、巧達の横を通りすぎた。

 椅子に座り、少し軋む音がしたのち、声がかかる。


「一同表を上げよ」


 巧達はその言葉を聞くと、顔を上げた。


(爺さんかと思ったが意外と若いな、それに……)


 第一印象は若い、そして王であるからか気品溢れる顔。

 その顔からして、一国の王である威厳を醸し出していた。

 そして、背中には特徴である赤い大きなローブを羽織り、巧達を見下ろす。

 その隣にはフェスが腕を組み仁王立ちをする。


「ほう……その者達が今回、我が領有地内にてテルヌス帝国の兵士と対峙したと言う冒険者は」

「はい、ヘンゲル荒野にて岩人形の討伐兼核の採集依頼を受けていたリーダーのランク★五つハリトラス、★四つタクミ、リウス、そして冒険者ではないですが、獣人のシロこの四名が対峙したと申します」

「ハリトラス、リウス、シロ……。そしてタクミか……」


 ベランジェの目つきが少し細くなる。


「陛下、今回その対峙した兵士が持っていたであろう品をお持ちしました」


 ギルド長は立ち上がると、直接ベランジェに渡さず近くの兵士に球体を渡す。

 渡された兵士は球体を確認し、ベランジェに球体を持つと球体を指で掴み眺め見た。


「これがその岩人形を作りだした球体なのだな? ハリトラス」

「そ、その通りです」

「ふむ……、とりあえずは立ち上がってはどうかな?」

「陛下!」

「冒険者で在ろうとも、情報を持ってきたんだ。それにそちらの女性達をいつまでも膝をつかしているわけにもあるまい」

「仕方がないですね。立ち上がって下さい」


 巧達はその言葉と同時に立ち上がる。


「さて、経緯を聞かせてもらおうか」

「ハリトラス俺が話すよ」


 未だ緊張の面持ちのハリトラスは何を言い出すか分かった物ではないのだ。

 従って巧自身が話す事になった。

 巧は事の始まりから、巨大岩人形を倒しウエルスが撤退するまでの状況説明をする。

 ただし、リウスの呪い子だと言う事は隠しながら。


「なるほど、そのウエルスと言うテルヌス帝国の兵士は”また”来ると叫んだのだな」

「はい、今回はたまたま撃退できていたものの、次会うと勝てるかどうかはわかりません」


 実際、リウスの火炎ビーム砲がなければ、巨体岩人形に巧達はやられていた可能性が十分に有り得たのだから。


「ふむ、なら次もその巨体岩人形が出没する可能性があるか……。すまないが、この球体全てを研究として引き取りたいのだが?」

「それは構いません、国の為になるなら全てを御譲りいたしましょう!」


 巧は両手を広げ笑顔に、にこやかに応じた。


「それはありがたい……が! やはり相応の礼はしないとな」

「いえいえ、この国を思うこと故、お礼何て私に身に余るお言葉でございます」

「なに今回の褒美だ、さあ好きに申してみよ」


 巧は手を下ろし、目を見開き口を開く。


「では……、お金を要求してもいいでしょうか?」

「金とは、いか程か?」

「そうですね、一つにつき金貨十枚は欲しい所です」


 巧がそう伝えると周りがざわつく。

 ベランジェが手を上げ静止させた。


「金貨十枚とは大金だな……。その根拠を聞かせてくれないか?」

「はい、これはテルヌス帝国の兵士が使用していた物。つまり、先ほどのベランジェ王が仰られた事により、情報は少しでも欲しいんじゃないかと考えました」

「ふむ……」

「それに、一番の理由は俺達が冒険者であること。やはり資金が必要です」

「だが、これが本当に帝国の兵士が使用した物とは限らないのでは?」

「……そうですね、確かに証拠はその球体にしかありません。ですので、私が言う事は全て戯言だとお思いになり、話を流してもらわれても結構です。その場合はお渡しになる、その球体は無かった事とし、全ての球体を返させていただきますが」


 ベランジェは巧の顔と言うよりも瞳を見ている様子であった。

 そしてベランジェの口元を上げ笑う。


「くくく、そうか。わかった。その言葉を信じ、一つに付き金貨十枚をやろう」

「提案を受けて下さり、ありがとうございます」


 巧はお辞儀をした。


「では兵士に金貨を渡しているので受け取ったのちに門の外までお送りしよう」


 巧達は広間を出ていなくなる。

 ベランジェは巧達が出て行った扉を見据え、隣にいるフェスに問いかける。


「あの冒険者はどう思う?」

「冒険者と言うと、あの美人な獣人でしたか。獣人とは言え、あれほどの美人は中々お目にかかれませんね」

「確かに美人であったが、そうではなくあの黒髪のほうの子供だ。本当に子供なのか?」

「ええ、私の見た目からしたら、ただの子供だと思います。やはり子供だろうと冒険者。これが本当に帝国の物が使っていたとは考えにくいですが」

「やはりそう思うか……。なあフェスよ」


 フェスはその言葉を聞いて何かを察する。


「陛下、もしかして……」

「ああ、この前の件と言い、今回のと言い。実はルビアリタの街での白い魔物や殺人鬼のフェイリアもあの少年が関わっている報告が出ている」

「ほう、白い魔物の件は知りませんでした。だが、フェイリアの件は私の部下もやられてしまったので探しておりましたが、よもや信じられませんね」

「そうだな、そこでだ。一つ試してみたい事があるんだが」


 フェスは目を瞑り、ベランジェに対し一礼する。


「畏まりました、私の方で準備させていただきます」

「流石フェスだ。頼りにしているぞ」

「ええ、けど死んでしまったらどうしますか?」

「それはそこまでの人間だったというわけだ。冒険者なぞいつ死んでもおかしくないからな」


 フェスはベランジェに視線を向ける。

 そんなベランジェは不敵な笑みを浮かべていたのであった。

さて、王であるベランジェは何を巧に思い笑みを浮かべたのでしょうね。


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