231, ダンジョンで、……攻略は、二十九階へ ⑥ 血の雨
「ごく普通のチキンライス。ナポリタンパスタ。ハンバーグ。今回のメニューは、そんなもの。ドリンクバーは、別魔力で。」
俺は、今日のメニューを詳細を省いて開示する。
「本当に普通だな。だが、普通がいい! だけど、魔力? なんで、魔力?」
おやおや、ジボは欲が無いねぇ。
そして、システム知らんかったんかい。
「そういうシステムだから。おやつポイントを補填するためのものでもあるけど、床暖の工房で稼働しているコピーゴーレムは本人の魔力でないとダメでさ。今回から滞納すると、一品足りなくなる。」
ホント、滞納者が多くて。
「「え、え、マジっ! コピーゴーレムとか聞いてないよ!」」
最大滞納者ユータク・クァッチャ、次点ヒィロ・シクワバの二名が中心となって騒ぎ出す。
「魔力払いって言っていたじゃん。それをどう使うかなんて、こちらの自由だろう? 何だったら、工房まで跳ばすよ、工房まで。跳ぶ?」
「「い、いいえ、結構です。帰りが不安過ぎる。」」
「だけど、普通…ねぇ。セトラに普通って……、無い。うん、無いな。」
ショッツもといノインの無い宣言、分かってらっしゃる。
「……ノイン…。」
だけどジト目でノインを睨んでいると、突然というか胸を強調するかのように腕を組んだ。
目が笑っている。
危険信号が脳裏に鳴り響く。
やばっ。
「セトラ、見たいなら見たいって言ってくれればいいのに。ボクと君の仲でしょ?」
その言葉が発せられた瞬間、俺の周囲が物理的に凍った。たぶん、魔法。
「「「「「「セトラさまぁ、正座!」」」」」」
鬼嫁たちの降臨です。
少々お待ちください。
ただ今、折檻中です。
所により、血の雨が降るでしょう。
「あいたたたた。」
俺の言葉に、ユーコとジボが呆れている。
「「そんな言葉だけで済むのか、オイ。」」
しょうがないよ、慣れちゃったんだし。ステータス上はアレだし。
「まぁ、美味いメシでも食べるとしようか。」
ゴーレムホテルの中に引き出された製造ラインは、弁当工場のような、F1サーキットを彷彿とさせるものだった。
目の前の男子用と女子用のパネルと、大人用と小人用の文字のボタンを魔力を込めて押すことでスタートするのだが。
なぜか、俺たちは子供なのに、小人用なのかは不明である。
「ポチポチっとな。」
俺も魔力を込めて、ボタンを押した。
男子用、小人用の組み合わせで。
一枚の皿らしきモノが、奥から流れて来て何ヶ所かに停止する。
その度に、半球状の物体や長四角い物体、楕円状の物体などが皿に乗る。
「冷凍食品か? 電子レンジなんて無いぞ?」
ジボの不安そうな声が響く。
「大丈夫、魔力レンジが用意されているから。」
なんともないぜという風に俺は、言葉にしておく。
色々と皿に乗っかった後、出口付近の少し大きめのボックスに入った。
『魔力レンジ、作動しますか?』の文字が明滅する。
『作動魔力取り入れ口』と書かれた扉が開く。
左手を突っ込み、魔力を放出する。
やがて、『チ~ン』と鳴ったかと思うと、皿が出て来た。
「これって、皿じゃなくて、プレートじゃないか?」
固唾を飲んで待っていた、同期の連中は肩透かしを食らったかのように、呆然と呟いていた。
俺の皿は魔力レンジの作動により、トラックにデフォルメさせて、すっかり形を変えていた。
「今日のメニューは、懐かしのワンプレートメニュー。究極の【お子さまランチ】だぁぁぁぁ!」
そう、ぶち上げた俺に、周りから『ナニ言ってんのコイツ?』という視線が集中する。
「「【お子さまランチ】って何ですの? 聞いたことがありませんわ!」」
リメラとリウスが当惑顔になっている。
そりゃそうだ、言ったこと無いもんな。
「一つの皿にメインが盛り合わせになっている超お得で、心躍るメニューだよ。」
リメラとリウスに簡単に説明する。」




