プロローグ
あたりを暗闇が包み込み、よからぬ者たちが動き始める10時過ぎ。
人通りの外れた人目に付きにくい町はずれの一角。
「この薬 すっごくいいよ! な お嬢ちゃんたちもやってみないか?おじさんたち 今ならただ分けてあげるよ?」
おそらく同年代であろう少女の前に立ちふさがる少年。
その優しげな髪が、窓から吹き抜ける冷たい夜風に時折なびく。
まだまだ幼さを残した中学生の二人を前に、一見どこにでもいそうな平凡な男性が詰め寄る。
「でも…それって…」
「ねぇ 一回だけやってみるといいよ ね?」
「え…と…」
「一回だけだって!! ね!?」
透明な袋に包まれた白い粉末を、『あるもの』だとすでに勘づいている二人のうち、少年の後ろに隠れるように立っている少女のほうがわかるほどに声を震わせながら断ろうとするが、断れそうもない雰囲気に押されて、透明なその袋を男性に押し付けられる。
「へぇー… これってそんな面白いんですか?」
すると、少女同様に袋を押し付けられた少年が好奇心な目で、もらった袋を薄暗い天井のライトに透かして見たり、振ってみたりする。
これをしめたとみたのか、男性がやさしげな声で続ける。
「え… ああ いいよ、すっごく。なんていうかほら、体がファーって軽くなるんだ。やめるのなんていつだってできるけど、大事なのは今だろ? まずは一回試してみてよ‼」
「体が 軽くなるの⁉すっげー‼」
「な すごいだろ。これ分けてあげるの特別に君たちだけ」
「おおっ!! 特別!?ラッキー☆ じゃあもらっちゃお 姉ちゃん‼」
「ちょっ…ゆず…っ!!」
「ああ そこのお嬢ちゃん きみのお姉さんなんだ お姉ちゃんも一回だけでいいから 試してみてね☆ 」
興味津々な双子の弟と違って、不安そうな面持ちで立ち尽くす姉に男は念を押すようにまた、繰り返す。
「ありがと、おじさんたち ほんとラッキー☆…ほんと、な」




