第8話 激戦区界隈のレベル高すぎてしんどい
ギリギリだけど、生活も安定してきた。
やっぱり俺は天才じゃないな、と改めて思う。
サイコパス思考の奴が天才ってんなら、世の成功者はそういう奴らで溢れ返ってるはずだ。
性格破綻者は多いけど、人とは上手くやってるんだからサイコパス思考とは言えない。
そういう人は変わってるけど、人間味があって面白い奴せいぜいそんな感じだ。
俺が天才かどうかだなんてどうでもいい。
この底辺から抜け出せるかどうかだ。
「難しい顔してるな」
「0.0693、0.1638、0.2814、0.3276……これ、何だと思う?」
「知るかよ。たぶんインフレ率だろ? 体感で32%くらい上がってる気するけどな」
「世知辛い話だけど、4日間で稼いだ新作の金額。4日間全部合計しても0.8円。1円にすら到達してねえんだよ」
「マジか。終わってんな」
「最初のジャンル別1位は、ただのビギナーズラックだったらしいわ」
「で、どうすんの?」
「どうするもなにも、上がっているうちは書くよ。でも2作品書いて、1作品はすでに頭打ちだな」
「色々考えてはいるみたいだけど、欠片も焦ってないな。パニックになったり悩まないのがお前らしいけどさ」
「まあ、なんとかなるっしょ。変に悩んで広告料が増えるんなら何時間でも悩むけどさ。打開策を考えるしかないんだよ」
「メジャージャンルで書いたんだよな?」
「まあね。やっぱり激戦区はキツいわ」
「マイナーで1位とっても1日10円じゃ、どっちにしろ終わってるけどな」
「だよね。でもさ、俳優も画家も作曲家も漫画家もみんな同じで、プロになるまではほぼ無給じゃん。今はまだ『ヨミカキ』の方しか出してないけど、『作家になりたい』の方でもだいたい同じくらいだと思うわ」
「諦めてバイトでもしたら?」
「マイナカードあるから今ならバイトもできるけどさ。特別な免許とかないと給料安いし。若者のほとんどは何者でもないんだよ。持ってるのは可能性だけ」
「可能性じゃ、金にはならないよな」
「まあね。その可能性を形にしないと何も始まらない。形にできないなら、せめてイメージくらいには落とし込まないと」
真治が俺の作品をスマホで読み始めた。
「『嘘告』の方は魔法の設定が難しすぎて、ぶっちゃけ拒絶感しかないわ。どのキャラも好きになれないし、ストーリーも面白くない」
「魔法に関しては俺もそう思ってたけど、凝りたかったんだよね。キャラは上手く描けないし……ストーリーに関しては異種族間の恋愛をテーマにしたつもりだったんだけどな」
「どれも凝りすぎなんだよ。難しすぎて読者に伝わってない。『通販』の方は、通販で手に入れた品物が最初からチートすぎるのが面白くないな」
「それな。確かにチート無しで『洗濯バサミ無双』とかやったら受けそうだよな。今は『洗濯バサミ』じゃアイデア出ないけどさ」
「そうそう、そういうのが良いんだよ!」
「ガムテープをモンスターの体毛に貼って、思いっ切り剥がしたらショック死するとかさ、そういう奴ね」
「それ笑えるわ! 『ガムテが特定のモンスターに対する即死アイテム』とか最高だな」
「あとは胡椒を使ってドラゴンに炎吐かせて、ドラゴンとモンスターを同士討ちさせるとか」
真治には感謝しかないな。
いつもこうやって新しい気づきをくれる。
「『嘘告』はどうすんの?」
「こっちは10話までは放置かな。『10話の2万字までは書け』って書いてあったからさ。『通販』の方もひとまず10話までは書いてみるわ」
「それでも駄目だったら?」
「キャラの魅力のゴリ押しで行きたいけど、具体的な方法が分かんないんだよな」
「芸人でも俳優でも、俺の頭に残ってんのは誰もが知ってる決め台詞だしな。あれがキャラの魅力なんじゃね?」
「台詞を言わせんのは思考と行動だからな。舞台設定もあるけど、映画とかの舞台設定って案外普通の日常が多いし」
「難しい理論は知らんけど、言われてみればそうかも」
「さっきの『通販』が『品物の突拍子もない使い方』なら、こっちのは『突拍子もない思考と行動』ってわけよ」
「一理あるな。普通じゃ目立たないし。安心させるような王道もあるけど、お前はそういうの書けないだろ。サイコパス思考なんだから」
「普通じゃない突拍子もない思考から行動と台詞が生まれて、それがキャラの魅力になる。感動もある意味そこまでやるか?って思考にしないと目立たないよな。今はアイデア出ないけど、考えたら何か出そうだわ」
「そうやって、速攻で答えを出していくのがお前の強みだよな」
「そうかもね。悩んでも仕方ないっしょ」
「悩むのが普通の人間なんだよ。聞いてないな……おい!」
「洗濯バサミなんだけどさ、トラップに使えないかな。外れた瞬間に爆発、とか銅線を繋いで電撃……いや、普通すぎるな。モンスターの鼻に装着して、鼻を利かなくさせるとか」
「なんでほいほい出てくるんだよ。鼻をつまむのはちょっと弱いな」
「じゃあ、刺激臭の薬品を塗ってから洗濯バサミを鼻に挟む。鼻に手が届かないって設定にしたいな。となると、姿を隠す能力が必須になってくるか」
可能性を少しだけだけど、形にできた気がする。
※作中作
実際に書く必要はないけど、書くとリアリティが増すので、カクヨムで書いてます。
広告料の計算式は過去データから割り出してますので、誤差はあるかもですが、おおよそ正しいと思います。
この作中作の成績次第で、ストーリー展開を変える予定です。
果たして成功するか。




