第三章 裏切り者の娘 王都編
【転落した女】
女は領主の娘であった。
父親である領主は民が汗水流して得た富を苦労せず掬い上げ民を苦しめていた。
「お父様、領主は領民があってこそです。このまま領民を失えば領主であるお父様自身も苦しむ事になります。どうか領民の事を思い考え直して下さい」
父親である領主は溜め息をする。
娘からの申し出はこの日だけではなく顔を合わせる度に娘の口から留まることなく溢れ落ち、父親である領主は飽き飽きしていた。
「またお前の偽善か、民が減ればその分他の民から更に掬い上げれば良いだけの事だろう。下らぬ事に口出す暇があったら婚約者の手綱を握り絞めておけ!お前の取り柄は顔だけなのだから」
これが実の父親が娘に掛ける言葉とは思えないほど、この親子の関係は崩壊していた。
娘は悪政を働く父親の事を好きなれず。
父親は偽善ばかり口にする娘の事が好きになれなかった。
二人は互いに血が繋がっていないのではと思っている。
ネズミのような顔の父親に対し、美しく整った娘は父親から引き継いでいるところは一つも見られなかった。
そんな父親は顔立ちも性格も綺麗な娘の事を嫌い、増税の理由を『娘の誕生祭を一週間行う』『娘に似合う豪華な宝石とドレスを用立てなくては』『娘が絵画が好きだからオークションで競り落とした』等の噂を領内に広げ、増税の要因が娘であるかのように装い、本人が知らぬ所で汚れ落ちて行くのを磯かに楽しんでいた。
領主の娘には婚約者がいた。
婚約者はこの国の第3王子である。
第3王子は王位継承権こそ第三位となっているが、品行方正として国民から一番慕われていた。
当の本人は王位に興味なく兄二人をサポートすると、普段から口にしており、そこが更に国民から慕われていった。
そんな婚約者に令嬢は会うこととなった。
「ハゼル様、私の父は国王陛下の意に背いております。このままではハゼル様のお側にいるのも申し訳ありません。私は国王陛下にお話をして父を裏切るかもしれません」
令嬢が涙流し語る手を婚約者である第三王子は優しく握り、令嬢に心配した顔を向ける。
「可哀想なリーファ。君が抱えている悩みを僕に背負わせて欲しい。今、君が父上に訴えても父上に握り潰されて終わってしまう」
「国王陛下がですか?」
「考えてみて欲しい。君の父親を誰が領主として任命したのかを」
「まさか・・・」
「駄目だよ、そこから先を言っては。だから少し僕に時間をくれないだろうか。僕の力で言い逃れ出来ないよう証拠を集めて見るよ。だから君に危ない事はして欲しくない。僕は君を失いたくないんだ。解ってくれるかい」
リーファは頷き、悩みの種である父については婚約者にお願いする事にした。
だが、一月、二月経つも婚約者から連絡がない。月一で行っていた顔合わせもなくなってしまった。
不安に思うも婚約者の事を信じているリーファは婚約者からの連絡を待ち続けていた。
半年が経ち、漸くリーファに婚約者から連絡が届いた。
早急に会いたいと言う連絡であった。
リーファは婚約者の身に何かあったのかと思い、慌てて馬車で王都に向かう。
リーファが王都に向かう途中、大群で移動している兵士とすれ違った。何やら事件でも起きたのかもしれない。
リーファは余計に婚約者の事が心配となり、馬車に急いで王城へと向かって貰った。
「ハゼル様、遅くなりすみません。何かありましたでしょうか?」
リーファが婚約者のいる部屋に入ると婚約者はいつものように賑やかにリーファを出迎えている。
そこには何もトラブルが起きたとは思えず、何故呼び出されたのか不思議に感じ始めた。
「リーファよく来てくれたね。そんなに慌てることはないよ。落ち着いてお茶を飲みながら話をするとしよう」
リーファは婚約者に促されソファーに座ると、第三王子専属の侍女が紅茶を入れてくれる。
侍女は何処か緊張しているようであった。
やはり何かあったに違いない。
「君が来る途中、兵士の大群とすれ違わなかったかい?」
婚約者の言葉により道中にすれ違った兵士の事を思い出す。やはり、あの大群と何らかの関係があったようであった。
「実は父上に陳情書を届けた者がいてね。父上が君の父親を捕えるよう王命を下された」
国王陛下様が・・・
でも、これで領民が救われると思ったリーファだが、何やら婚約者の様子が可笑しい。
「本当に困った事になったよ。仕方がないからいち早く僕の影に君の父親を始末することにしたよ」
リーファは何時もと違う婚約者のせいか震えが止まらず紅茶のカップをカタカタと鳴らしてしまう。
「いけないなぁ~リーファは、行儀がなってないよ。それとも薬が効いてきたのかな?」
薬!?
すると、リーファは喉に違和感を感じる。
喉が焼けるように熱い。
「かっ、あっ、」
リーファ苦しく言葉を発する事が出来ず、お茶を溢しその場に倒れ込む。
「君の声を封印させて貰うよ。僕が君の父親の不正を揉み消していたなんて知られたら困るからね」
ハゼル様がもみ消す?
どうして?
「おや、不思議に思うかい?ならば、君は君の父親が領民の富を大量に掬い上げて得たお金は何処に行ったのか不思議に思わなかったのかい?」
確かに不思議に思っていた。
まさか・・・
「本当に困ったよ。君やあの巫山戯た男のせいで僕の収入源が減ってしまった。本当に君は顔だけしか取り柄がないのだから大人しくしていればいいのに馬鹿な女だよね」
(そんな・・・信じていたのに・・・)
「おい!」
ハゼルが合図を送ると二人の兵士が部屋に入る。同時に侍女が部屋から出ていった。
「ハゼル様、本当に宜しいのですか?」
「ああ、顔だけの女など何の価値もない。ならば僕のために動いてくれる者達に役立って貰うとするよ」
ハゼルはそう言うと、兵士の肩をポンと叩き部屋を後にする。兵士二人は舌をなめ回しながら服を脱ぎ、リーファに近付く。
リーファは逃げたくとも毒により動く事が出来ない。
この日よりリーファは兵士達の玩具へと転落した。
【再び婚約者となる】
王都は大騒ぎとなっていた。
名声名高い第三王子の行方不明となっていた(王子の指示で玩具となっていた)リーファ令嬢が見つかった。
しかも、リーファ令嬢が以前に過ごしていた領主の屋敷から見つかったと言う。
更にその屋敷は大炎上でリーファ令嬢以外全員が焼死してしまっている。
見つかったと現れたのが、火傷により顔は包帯で巻かれ、喉も焼けただれたのだろうか、潰れて上手く喋れないでいるため本当にリーファ令嬢か疑いたくなってしまう。
このように如何にも怪しいリーファなので、民や貴族は受け入れるのに難色を示していた。
そして王家の者も同様であった。
「ハゼルよ、あの娘は本当にリーファ令嬢なのか?」
「はい。私だから解ります。彼女は間違いなくリーファでございます。今は顔が爛れ見せられませんが、治療により治りましたら元の顔をお見せすることが出来るかと思います」
「しかし、あの娘の父親は私を裏切った男だ。そのような男の娘をお前の婚約者にするなどありえん」
「その件ですがこちらを」
ハゼル王子の合図と共に側近が国王陛下の隣にいる宰相に書類を手渡す。
宰相は書類を確認すると書かれている内容に驚き、書類を国王陛下に手渡した。
「これは?」
「これはリーファが告発しようとしていた不正な金の流れに関わる者達です。リーファはこの書類を国王陛下に届けようとしたのですが、実の父親に捕まり幽閉されてしまったのです」
これは真っ赤な嘘。
書類は古い用紙に古いインクでハゼルが部下に書かせたものであった。
だが、書かれたものは全て真実である。
黒幕であるハゼルは痛手とならず、己に被害が及ばない不正だけを記載していた。
「これがあれば、あの事件から逃れた者達を裁く事が出来る。リーファ嬢には感謝したい。だが、残念だが彼女は罪人の娘だ。罪人の娘を王家に招く事は出来ない」
「その事ですが、彼女の籍は父方から抜いてあり、母方の籍に移行してあります。これで戸籍上では罪人の娘ではなくなりました」
「・・・」
「父上・・・いえ、国王陛下、再びリーファとの婚約を認めては頂けませんでしょうか?」
国王陛下は息子が一人の令嬢にここまで真剣になった所を見たことがなく、息子の願いを叶えてあげたい。
だが、捕えられていた令嬢など純潔が疑わしい者を婚約者にすることに難色を示していた。
例え検査をして純潔が認められたとしても、王家側が都合よく改竄したと思われるだけで意味がない。
純潔の検査は疑わしい者を調べるためのものであり、証として知らしめるものではなかった。
「ハゼルよ、リーファ令嬢は純潔でない可能性が高い。いや、純潔と証したとしても信じるものはいない」
「構いません!」
「!!」
「私はリーファと共に兄上達を支えたいのです。そこに純潔かどうかなど関係ありません!」
父上である国王陛下は息子の固い熱意に負けリーファとハゼルの婚約を認めた。
リーファはこの日から第三王子の婚約者と呼ばれるようになった。
【思わぬ出会いと別れ】
リーファは王城に住むようになり数ヶ月経つが未だに顔に包帯を巻いていた。
その姿を恐ろしく思うものが多く、ハゼル以外リーファに近付こうとする者はいなかった。
リーファを玩具として扱ってきた兵士も化物を見る目で今のリーファに近付かない。
本当の獣以下の化物が己達だと気付かずに。
「り、リーファ様、朝食を持って参りました」
侍女が恐る恐るリーファに話し掛ける。
「ハゼル・・は・・どこ?」
リーファの掠れて聞き取りづらい声は、より恐怖を増し侍女が「ひっ!」と後退りをする。
「ハゼル様は訓練所に行かれました」
「そ・・う・・」
侍女は仕事が済むと逃げるようにリーファの部屋から出ていった。
リーファは朝食を軽く済ませるとハゼルがいる訓練所に向かうことにした。
訓練所にはリーファを玩具にして遊んだ者達が溜まり場としているのだが、今のリーファは気にせず向かっている。
訓練所に着くと皆が驚くようにリーファを見ている。
今はハゼル王子の婚約者だが、当時は自分達の玩具が何故ここに現れたのか理解出来ない。
「リーファ!どうしたんだい、このような所に来て危ないよ」
「こち・・らを」
リーファはハゼルにタオルを手渡す。
「態々、これだけのために来てくれたのかい。君はいつも優しいね。ありがとう、僕はもう少しここで訓練していくから先に戻ってて」
「わか・・り・・まし・・た」
リーファはハゼルに頭を下げ訓練所を出ようとする。その姿を舌をなめ回しながら見ている二人の男がいた。
リーファが訓練所を出て連れてきたポニーと共に城へ戻ろうとすると、二人の男がリーファの前に立ち帰り道を塞いでいた。
この二人は一番最初にリーファを玩具にした男達であった。
「顔は化物でも体はあの時のままなんだよな~」
「ああ、布か何かで顔を見えなくさせれば変わらんだろ」
二人の男がリーファに近付く。
リーファはニヤリと笑い帰り道を指差す。
「勝負・・しま・・しょ。私の・・この・・馬に・・勝てれ・・ば・・好きに・・して・・いいわ」
二人の男はリーファの申し出に意表をつかれキョトンとして互いの顔を見る。
そして再びリーファの方へ顔を向けるとニヤリと笑いだした。
「いいねぇ~、おい!馬を二頭連れてこい。狩りを楽しむとしようぜ」
男達が馬を用意すると、ハンデとしてリーファの5秒後に走り出す。
リーファの馬はポニーで足は早くない。しかも激しい前傾姿勢と不恰好な騎乗姿で余計にスピードを出ず、あっという間に男達に追い付かれようとしている。
「なんだかんだ言っても、あんたも楽しみで仕方なく訓練所に来たんじゃないのか~、ほ~ら、あのもう少しでまた遊んであ・・・」
プツン!
ゴトッ!ゴトッ!
リーファの横を空となった馬が通り抜けて行く。
リーファは馬の歩みを止め、ゆっくりと引き返すと、二人の体と頭が地面に転がっているのを見る。
「あら、こんな所に弓の弦が張られているわ。危険だから取り外して起きましょう♪」
リーファは目線の高さにある張られた弦から滴り落ちる赤い液体を指で拭い嘗ると、ニヤリと笑みを浮かべていた。
【ハゼル国王の誕生】
月日が流れ、国王陛下が崩御された。
数日前まで元気であった姿を見ていた文官や使用人達はまるで毒でも服用したかのように突然に崩御された事に驚きを隠せないでいた。
次の王として第一王子が国王に選ばれたが、それを面白く思わない第二王子が反旗を翻そうとしている。
それが第三王子が仕向けた事とは気付かず。
その第三王子ハゼルは表向きは第一王子に着くが影では第二王子を支援していた。
第一王子と第二王子はここまで仲が悪かった訳ではない。少し前までは第二王子は第一王子のサポートをするつもりでいた。
では何故ここまで仲違いしてしまったのか。
犯人は第三王子であった。
第三王子の隠者が双方に忍び込んでおり、互いの悪口を有ること無いこと囁き決別するようにさせた。
そして、これ等を可能にしたのが潤沢な資金であり、その資金はリーファの父親等の領主から流れた金であった。
第一王子戴冠式となる前日に事件が起きる。
第二王子が第一王子が住む邸に襲撃を仕掛けた。
勝敗の結末は二人の王子が相討ちすると言う結末となった。
しかし、この相討ちには裏がある。
本当は両者共に味方だと思っていた部下に裏切られ斬り殺された。
双方の王子を仕留めた者は第三王子の刺客であった。
一月せずして国王と二人の王子を失ったが、憂い嘆く民はいなかった。
民には第三王子のハゼルがいるからだ。
寧ろ、二人の王子が国王となるより第三王子が国王となった方が民の暮らしが豊かになると思っていた。
民を苦しめる領主の裏に第三王子がいた事も知らずに哀れな民は新しい国王が誕生するのをまだかと待ち望んでいた。
そして、一月後にハゼルの戴冠式が行われ、新国王が誕生した。
第三王子の婚約者は王妃と呼ばれるようになった。
【リーファの正体】
ハゼルが国王となり公務に励む。最初はリーファも隣におり一緒に公務を行っていたが、今はリーファの姿はない。
「リーファ、体の調子はどうだい?」
「ええ・・問題・・あり・・ません」
リーファは懐妊していた。
既にお腹も大きくなりいつ産まれても可笑しくない。
「ふふふ。とうとう僕も父親になるのか~。本当に君が僕の妃となってくれて良かったよ。あの顔だけの女では僕の妃なんて勤まらないからね」
「・・・そう・・ね」
「あっ、動いた!」
「薬(堕胎剤)・・の・・影響・・が・・なくて・・良かった」
「???、ああ、君の幼少期は酷かったらしいからね。薬(治療薬)が欠かせなかっただろうね」
「・・・」
「侍女から聞いたけど、悪阻が酷く食事を受け付けないんだって?」
「ええ。・・少・・し」
「君が食べたい物を直ぐに取り寄せよう。何か食べたい物はあるかい?」
「・・・新鮮・・な・・お肉」
「解ったよ。君の為に直ぐに手配しよう」
「あり・が・・とう」
「そう言えば、火傷の治療はかなり良くなって来ているそうだね」
「・・・ええ」
「どうだろうか、君の顔を拝ませて貰えないかな?私は君の顔がいつ拝めるのか楽しみにしていた。駄目だろうか?」
「・・・ええ・・どう・・ぞ」
ハゼルがリーファの包帯を取る。
とうとう、ハゼルはリーファの顔を拝む事が出来た。
「えっ!」
ハゼルはリーファの顔を見るや時が止まってしまった。
その為、次のリーファの行動に反応することが出来なかった。
ドゴッ!
リーファの顔に驚き反応が出来ないでいるハゼルの頭に激しい衝撃を受けハゼルは倒れ込む。
リーファの手には血が滴る鈍器があった。
「き、君は・・・リーファ!?」
【領主館炎上の真実】
炎上する館から連れ出された玩具となった女は、連れ出した娘に恐怖を感じるも何故に自分を助けたのか理解出来ないでいた。
「な・・ぜ・・助け・・たの?」
玩具となった女が問うも娘は「助けた?」と女の問いかけが何の事か解らないようで首を傾げている。
「私、貴女を助けてなどいませんよ。惨めな貴女がこのまま焼け死んでしまったら面白味がなくなるから連れ出しただけです」
「面・・白・・味!?」
「ええ。貴女はこの後も今まで通り玩具として過ごすか、何処かに逃げて暮らすか、もしくは・・・」
娘は玩具となった女の前に包丁を投げ捨てた。
「自ら命を経つかの選択をさせて上げます。あ、このまま逃げるが一番幸せそうに思えるけど、そんな事ないわよ。民は残酷な生き物ですもの。体験した私が言うのだから間違いないわ。意にも今まで通り皆の玩具として生きた方が幸せかもしれませんよ」
「あ・・貴女・・は・・どう・・するの?」
私の問い掛けに娘はニヤリと笑うと己の服を捲り上げた。
「!!」
玩具となった女は驚く。
娘の腹部は刃物で切り裂かれ血が出ていた。
いや、それだけではない。
娘の腹部は紫色を通り越して黒く変色していた。
「もう私の体は壊れて駄目みたいです。ここで私は休む事にします」
娘は自信の体に油を掛ける。
炎上した火の粉がいつ娘の体に引火するか解らない。
だが、娘は平然と玩具となった女の前に立っていた。
「羨ましいでしょ。私はやっと死ねるわ。でも、貴女はまだ死ぬことが出来ない。このまま瞼が開かなくなればいいのにと思いながら次の日には瞼が開き絶望をする。私はそんな人生から卒業出来るわの。でも、貴女は駄目。まだ死なせないわ。もっと苦しみなさい」
「あっ!」
火の粉が娘の体に引火したのか娘の体が燃え上がる。
「何時でも死ぬ(自殺)する事は出来た。けど出来なかった。貴女は私と同じ・・・」
娘は倒れ込み燃える物質が無くなったのか炎が消え、目の前には黒い物体しか残っていなかった。
玩具となった女は悩んだ末、選択した答えは娘から提示された三択以外であった。
玩具となった女は自身の顔を焼く、暫くすると人の話し声が聞こえたため、包丁で自身の腹部を斬ると包丁を焼け焦げた物体に持たせた。
玩具となった女は娘が玩具となった女に扮した事にして自身を殺す事にした。
ハゼルも騙され、リーファと再婚約者した振りをして娘と婚約したつもりでいたが、リーファと婚約していた。
【蟷螂の夫婦】
ハゼルは頭から血を流し倒れている。
王妃リーファが手に持つ鈍器により頭部を殴られたからだ。
「き、君は首吊りされた男の娘ではないのか?」
リーファはニヤリと笑う。
「そ、そんな馬鹿な・・・リーファは私が盛った毒で喋れなくなっていたはずだ!」
ハゼルは勘違いしていた。
リーファは確かに毒を盛られたが、リーファは紅茶を少ししか飲んでいなかったため、毒の影響が軽少ですみ、声を完全に殺す事は出来なかった。
なのに何故ハゼルはリーファが喋れないと勘違いをしてしまったのか?
リーファは喋れなかったのではない。喋らなかったのだ。リーファが喋れる事を知ったらハゼルはまた毒を盛るかもしれないと思ったリーファの防衛として声を発する事をしなかった。
「ぼ、僕の事をどうするつもりだ?」
リーファはニヤリと笑うと手に持った鈍器を高く掲げる。
「新・・鮮な・・お肉・・を・・食べ・・なく・・ては」
リーファは鈍器を何回も何回も振り下ろした。
~数時間後~
宰相の元に王妃が重たいお腹を支えながら訪れた。
「どういたしましたリーファ王妃?」
『ハゼルの寝室にいってみたらこのようなものを見つけてしまいました(筆談)』
リーファは手に持つ書類を宰相に手渡した。
書類には各領主から賄賂の流れや国王陛下暗殺計画、第一王子と第二王子の殺害計画等の内容が書かれていた。
「そんな・・・これが事実だとすると大変な事になる。リーファ王妃、国王陛下は今何処におられますか?」
宰相の問いにリーファ王妃は首を横に振る。
リーファ王妃も書類の事実確認をと探しているが、見つからない。
「解りました。ハゼル国王陛下は私の方で探しますゆえ、リーファ王妃はお体の方を大事に安静にしていて下さい」
『解りました。私はこれから食事を済ませましたら部屋で休んでおりますので何かありましたら教えて下さい』
「食事ですか?」
『ええ。私の為にと新鮮なお肉が手に入ったそうですので、この子の為に頑張って食べませんと』
【女王の誕生】
三日三晩、総出で探すもハゼルは見つからなかった。
宰相と王妃は話し合い、ハゼル国王陛下は体調を崩されたと発表することとし、ハゼル国王陛下が残したとされる書類は闇の中に葬る事にした。
数日後、リーファは男の子を産む。
待望の王家の血をひく子だ。
リーファが安静にしている間もハゼル国王陛下の捜索は続けられたが見つかる事はなかった。
「リーファ王妃様、こちらの書類はどういたしましょうか?」
「そちらの書類は税務官に見せ書類に不備・不正がないか確認させて下さい」
「畏まりました」
リーファは息子が成人するまで女王としてこの国の実権を握った。
尚、ハゼル国王陛下は病が回復せず崩御された事にした。
民は他の王族が亡くなっても嘆き悲しむ事はなかったが、ハゼル国王陛下が崩御された事をしらされると、国中が嘆き悲しんだ。
ハゼル国王陛下が崩御しリーファ王妃が女王として戴冠されるも民の不安は増していた。
だが、リーファ女王陛下が行う政によって民の生活が豊かになり、今ではリーファ女王陛下を讃える声しか聞こえてこなくなった。
リーファは税務官と言う女王陛下直属の部署を設立すると、年に一度、各領主の査察を行うことにした。
また、国内の税率は全国同一とし、全てを国に納めさせた。各領主の生活費は集められた税金の一部を給金として振り込む事にした。
また、各領主にも各領で設ける事が出来る領税の権利を与えたが、徴収出来る金額を国に納める税金の2割までと上限を作った。また、この領税の収入は領主で働く者の給金とする事は禁じられ、全てを民の公共事業へと還元するよう義務付けられた。
リーファは税金の歳入と歳出で余裕が出来た部分で医療補助や治水対策を行った。
また、罰金刑と言う者を設け、ある種の犯罪等には罰金を科すようにした。
また、金銭的重罪の罰金刑は定額ではなく定率とし、犯罪者の私財の数%を科すようにして税金の補填とした。
一方、リーファ女王陛下には苛烈な部分もあった。
ハゼル国王陛下の不正に部下の兵士達が関わったとし、全員を処刑した。
一人の兵士が判決に不服を申しリーファ女王陛下の元に嘆願で訪れたが、リーファ女王陛下の顔を拝むと兵士は顔面蒼白となり、意義を申し立てる事が無駄だと諦める事にした兵士は処刑を受け入れる事にした。
更に不正を働いていた領主が次から次へと捕まり、地方では領主不足へと陥ってしまった。
その為、領民による選挙にて議員と議長を設け、政の代理を行う制度を一部取り入れた。
リーファ女王陛下が女王として二十年間、息子に譲位してからもアドバイザーとして息子を支え続き、約50年という長きに渡り国の平和を守り続けた。
リーファ女王陛下は賢王と呼ばれるようになった。
だが、リーファ女王陛下50年以上も後悔し続けている事がある。
リーファ女王陛下はあの親子を助けられなかった事を後悔している。
これで【領民編】【領主編】【王都編】の三部作となりました。
皆は裏切り者の娘が成り済ましていると思われた人がいるかもしれませんが、リーファはリーファでした。
最終的には私が皆さんの期待を裏切り者となってしまったかもしれませんが、ちゃんと領主編に『娘はリーファと呼ばれるようになった』ではなく『女はリーファと呼ばれるようになった』と気付いて頂いた方もいたかもしれませんね。
実はもう一つ裏切りを考えております。楽しみにしてて下さい。




