三匹の鬼 16
3色目 『三匹の鬼 16』
あの事件を起こすまで俺の男としての機能は破綻していた。
文台が近づいて来てくれても上手く勃たすことが出来ず、
口で施しをしてもらっても変化しなかった俺のせいで、彼女には
何度となく惨めな思いをさせてしまい今でも本当に申し訳なく思っている。
それでも彼女はいつでも「いいよ、気にしないで」そう笑顔で言って
くれたから、俺はその慈悲に甘え、全てを彼女に背負わせていたんだ。
しかしそれがどうしたことか。あの日、あの子を拉致したその時から俺の機能は
再び活動を始めたのである。いや、そうじゃない。
きっと俺の下半身はそういう傾向のモノにしか反応をしなくなってしまったのかも、
そう悟った。全ては母の所為だ、母があんな醜態を晒していたから・・・
それを俺が見てしまったから・・・だからこんな身体に・・・。
「・・・」
それでも微かな望みを抱いて、事件を起こしてから1週間後、俺は文台と一緒に
ホテルへ行った。結果、俺の下半身は正常通りに動き出し機能を果たすことが
できたのだが・・・、だが俺の心が満たされることは無かった。
生理的に反応をしても俺が真に求める器は成長期の彼女が持つものでは無く、
未熟な少女のあの日出会った器なのだ。
「・・・」
だけど俺は文台と別れることはしなかった、それは彼女を愛しているから。
性癖が歪んでいても、それでも俺はいつまでも文台を愛している。
「・・・」
矛盾してるよな。
俺はお前を愛してると言いながら、心のどこかでまだあの少女を想っている酷い奴だよ。
それでも文台は俺の傍に居てくれた。多分俺が気付くもっと前から君は俺が何をしたか
知ってたんだよな、それでもずっと黙っていてくれたんだな。
その上、男三人しかいないうちのこともずっと気に掛けてくれて、俺の負担を少しでも
減らしたいから高校を卒業したら結婚しようって・・・こんな俺に言ってくれた君。
文台・・・ずっと君ばっかりに苦しい思いをさせてごめんな。
でも多分、もうすぐその苦しみも終わるから。
そろそろ罰が下ってもおかしくないと思うんだ。
だから、どうかこれからは『自分』の幸せを
『俺』の幸せではない、
文台が幸せになれることだけを考えて
どうか・・・
どうか
幸せになってください。
君ヶ主 文台へ
弟塚 公覆
「・・・」
引き出しの中に、あの日見た髪の毛はもう入っていなかった。
ただ私への手紙が薄水色の封筒に入ったそれだけが、そこに存在している。
「・・・公覆・・・」
病院から抜け出して庭の倉庫から武器を拝借しに来た私に齎された手紙に書かれた
言葉は、彼から私に対する懺悔では無く、まるで彼から私だけに託された遺言のような
文章だった。
だからだろうか、さっきから涙が溢れて止まらない。




