第三話
しばらく更新が滞ってしまってごめんなさい。
体調不良の描写を含みます。苦手な方はご遠慮ください。
僕が絵本を作るようになったのは、まだ一歳になったばかりの莉空が保育園に通うようになって、間もない頃のことだ。
保育士の陽都の影響か、莉空は絵本の読み聞かせが大好きだった。年齢相応に活発で、身体を動かすことも好きだ。暖かい日は外で遊ぶことも多い。けれど僕は、一緒に行くことが出来ない。
「莉空はお話が好きだよ。絵本なら星汰にも描けるんじゃないか」
内心で落ち込んでいた僕に、きっかけを作ってくれたのは陽都だ。
「絵本?」
「園の子達が好きなんだよ。小さくたってちゃんと聞いてくれるし、楽しんでくれる」
「でも僕、絵なんて描けないよ。物語だって考えたことない」
絵を描く趣味は特にない。読書経験も恐らく人並み程度だ。突飛な提案に僕は戸惑った。何故か陽都は、満足そうに口角を上げていた。
「自分のことだったら、どうだ」
「僕のこと?」
「あぁ。莉空、喜ぶと思うぞ」
要領を得ないと感じたやり取りは、僕の心を動かした。そうして初めて作った絵本が、夜のお話だ。莉空はこれを一番に気に入っている。
「おいで莉空。そこにお座り出来る?」
小さな子ども用の椅子を僕の前に据える。ちょこんと座った莉空は、輝く瞳をこちらに向けた。
「すわった!」
「うん、上手。それでは、これからお話を始めます」
「はーい」
いかにも保育士らしく、創造で陽都の口調を真似る。元気に手を挙げた莉空に頷いてから、最初のページを捲った。
「あるところに、夜が大好きな男の子がいました──」
***
あるところに、よるがだいすきなおとこのこがいました。
おとこのこは、みんなといっしょにおそとであそぶことができません。
いつもまっくらなへやのなかで、しずかにすごしていました。
おひさまをみると、からだじゅうがあつくて、いたくなってしまうのです。
よるになれば、おとこのこは、おそとでじゆうにあるきまわることができました。
あるひのよる、おとこのこはおはなばたけにおでかけをしました。
まいにちおみずをあげて、たいせつにそだてているおはなです。
たくさんのおはながさいていて、とてもきれいです。
おせわにむちゅうになっていると、あっというまにおひさまがあらわれました。
よるのおつきさまは、もういなくなっていました。
「ぼくといっしょにあそぼうよ」
おひさまがいいました。
「ごめんね。もう、かえらなくちゃ」
おとこのこは、あせをふきながらあやまりました。
からだがいたくて、なみだがながれます。
「ぼくのことが、きらいなの?」
おひさまも、ないてしまいそうです。
「ちがうよ。あそびたいけど、だめなんだ」
おとこのこは、かなしいきもちになりました。
おそらのうえで、おひさまはおつきさまとおはなしをしています。
おとこのこは、おへやのベッドでねむっていました。
「おとこのこに、まほうをかけてあげようか」
「そうしよう。みんなでいっしょにあそべるように、そうしよう」
おひさまとおつきさまは、そういいました。
すると、ねむっていたおとこのこのからだは、きらきらとしたひかりにつつまれました。
***
「せーちゃん、きらきら!」
莉空が僕の顔を指差して、ニコニコと声を上げた。絵本はまだ数ページ残っている。滲み出た汗を拭って、自分の手が震えていることを自覚した。手にしていた絵本が床の上に滑り落ちる。
「おわり?」
不思議そうにする莉空の姿が、ぼやけて揺れる。誰にも気が付かれずに、カーテンの隙間から差し込んでいた陽の光が、僕の肌を焼く。
「ねんね?」
「うん……ねんね、しようかな……」
今にも瞼は落ちてしまいそうだ。堪えきれずその場に頽れると、莉空はパタパタと歩み寄って来た。
「せーちゃん、ねんね。せーちゃん、いいこ」
小さな手に髪を撫でられて、僕の意識は光に包まれた。
読んでくださっている方がいたら、ありがとうございます。
出来る限り投稿を継続出来るように頑張ります!




