第72 話 賢者の忠告
カクヨムでの勇者出征編に対応します。
この一連の流れは、書ききったあとの後出し設定や表現上の反省点があまりなかったので、全編ほとんどそのままになります。
バビローナ帝国王宮謁見の間。騎士たちが整列し、勇者マリウス、聖騎士スラ、戦士ロムルス、僧侶レムス、荷物持ちジャックが魔王討伐の出陣の王命を受ける。
「勇者マリウスよ、王命である。魔王を討伐し世界に平和をもたらすのだ。」
「この命に代えましても必ずや王命を果たし、ここに勝利の凱旋をすることを誓います。」
いざ出陣と、勇者たちが皇帝の御前から引き下がろうとしたとき、皇帝ビットリオの隣に侍っていた賢者ルキウスが大事なことを思い出した様子で勇者に伝える。
「オイランダは同盟国であり、ベアトリーチェ女王陛下に話はつけてあるが王都を通りぬける際にはゆめゆめ髪に花を挿すのを忘れることなかれ」
それを聞きマリウスは疑問に思った。なぜそのような軟弱な格好をしなくてはならないのか?
「何故でございますか?私たちは誇り高き戦士です。花を髪に挿す必然性がないではありませんか?」
ルキウスは困ったなという顔をして、いいから髪に花を挿すんだよと説得を試みる。
「世界には理屈で説明できないことや知らないほうが良いこともたくさんあるのじゃよ。ともかく、忠告はしたぞ。」
――
出発三日目、出陣に際して王家より馬車を貸与されていた勇者マリウスはバビローナとオイランダ国境地帯を越えたあたりでふと、荷物は馬車に積まれているのに荷物持ちのジャックに対して発生する日当がもったいないと思い立ち、荷物持ちジャックを含むパーティーメンバー全員を呼び出して、ジャックにクビを言い渡した。
「ジャック・ヒーラー!貴様はヒーラーという名前のくせに治癒魔術の一つも使えないただの荷物持ちではないか!貴様なんか仲間じゃない!ここから出てけ!」
マリウスの唐突な暴挙にスラとレムスはギョッとして、待て待て待てと止める。
「殿、ご乱心なさるな。ジャックに一人でここから帰れと仰せですか?この山岳地帯の人里離れた中放置されたら帰り着く前に野垂れ死んでしまいます。何かお考えがあるのでしょうが、今はその時ではありません。解雇するにしてもせめて街に入って安全な定期便のある場所で帰りの路銀を渡して……」
レムスも戦略的視点から荷物持ちは必須だと擁護する。
「冗談じゃないですよ、ロジスティクスは戦略の基本です。荷物持ちが居ないで魔王城ダンジョンに臨むなんて行動範囲が限られてしまいます!」
呆然とするジャックの前で勇者パーティーメンバーが仲間割れしている。
ロムルスがそれを仲裁するように妥協案を出す。
「荷物持ちはもう少し近場になって現地で採用したら良いんじゃね?マリウスの言う通り確かに連れてくることはないし、日々の日当がもったいない」
ロムルスはジャックの追放に賛成のようだ。スラも場所を考えろというだけで解雇自体は否定してないし、頼みはレムスだけだが、マリウスの鶴の一声で説き伏せられてしまった。
勇者出征編というのがカクヨムでの名前でしたが、同時に執筆時の内部呼称は聖油編でした。実質的に主人公はマリウスはおろかマリーですらなく聖油そのものです。




