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第71話 幕間(おまけ)私はコレで……人間やめました。

聖女候補生修行の続きです

 聖女教育の大秘儀を終え、指導教官への結果報告。大秘儀のなかでそれなりの神と邂逅した報告が求められる。


 もちろんそれは形式的な問答であり、過酷な大秘儀の中、信仰を捨てずに以前の座学で得た神々に対する知識を問うもの、あるいは見聞きした自然現象に対する神学的見識を試す試験である。また、最高神たちは代々祀る家柄が決められており、その家系に属しないものはそれ以外の神の名と神徳、そして自然のどこにそれを見出したのかで採点されるテーマ論文のようなものである。


 その口頭報告でマリーは「ΡΕΑさまとお会いし、宇宙意識を象徴する極彩色の渦巻きに自身が巻き込まれた後、万物が語りかけてくるビジョンを見ました。」

と堂々と発表した。


 ΡΕΑさまは封印されたいにしえの女神。軽々しくその名を口にすれば狂人として隔離される恐れすらあったが、マリーは堂々とその御名を唱えた。


 指導教官と同期たちはぽかーんとし……

えっ?誰それ?とざわざわし始めた。


「可哀想に……あまりに過酷な修行で頭がおかしくなったみたいね。」

「きっと山で変なキノコでも食べて当たったのよ……」

「どうするの?いつかこの修行をガチでやることで死者出るよとは言われてたけど……まさか私たちの代で問題視されて聖女制度の危機じゃないの?」

「私たちなんだかんだで無言でなぜか差し入れ……もとい必要なものがたまたま落ちてる形で過ごすもんだけど」

「聞いたことあるわ。麦角汚染された穀物を食べたりしたらそういう幻覚見るらしいわよ」


「マリーくん。薬物やめますか?それとも人間やめますかだぞ。一度手を出したら最後、骨までしゃぶられるぞ。」


 教官までなんかろくでもない方向に話が進んでいるので

「そんな変なもの食べてないわ。私はΡΕΑ様からこの花を授かったの」


マリーの手にはあのコルヌコピアから噴き出していたハーブの、腺毛が赤く熟した花穂を見せ、こういった。


「私はコレで……。人間やめました。流れ(ΡΕΑ)が素粒子から天体の運行まですべてを顕現させしめ、崩壊させしめ、再生させしめている。それがこの世界の構造であり、そのなかの特定の複数の流れが集まり渦や泡のような現象として自分は今ここに現れているのです。宇宙の塵の流れでがとった形であって人間などという固定された実体はどこにも存在しないのです」


「そ、それでは生きる意味を失ってしまわないか?」


「生きる意味は継続する流れの中で、他の水系の流れとどう調和するのかの連続、それは他の流れと合わさった絶え間なき摩擦による変形と再生を変わることなく続けていくその過程にあります。単一の生きる意味を設定する者、すなわち流れ(ΡΕΑ)を軽んじる者は必ず崩壊して原子のなかに拡散されるという単一の目標に向かってしまうようにできているのです」

極彩色の渦巻きやら万物が語りかけてくるやら、…ねぇ。

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