D-04-古代史を復興させる者
ダネルダネル、彼女はカリュウドとして一流…いや英雄の領域に達していた。本来であれば多くの犠牲の上でようやく弱点なり痛手を負わせた上で倒す竜種族を一回の戦闘で終わらせてしまったからだ。それも古龍種とも言われる人語を介し、人種族よりも知性がある存在にだ。
また昔は古龍だけではなく、竜種族との交流が一部あったが今では廃れ無くなっていたのだが彼女が復活させたのだった。交渉というにはお粗末な力任せなやり方ではあったが、彼女がもたらしたものは大きかった。
カリュウドがいつからカリュウドとして存在するようになったのか、厳密な国という堺もないが共通のルールがあり、それを統べる王の存在などの謎を解明する手がかりに近づけたからだ。
だが、彼女…ダネルダネルはそんな事はどうでもよかった。ただうまい肉や飯にありつければそれでよかったのだ。
◇
彼女は歴史の紡ぎ人として英雄のような扱いをされていた。古龍ゲオルシャウランとの交流が復活し、近辺では集落が形成され、気づいたら村になっていた。
「みんなもあいつの肉を食いたい人たちダネ?」
ダネルダネルは古龍ゲオルシャウランの背肉部分が調理されたシチューを食べながら人が集まってくる理由を聞いていた。
「隊長、そんなわけないでしょう!」
ダネルダネルはキョトンとしながらもシチューを食い続けていた。
「あ、おかわりダネ」
ダネルダネルは一人で寸胴に入ったシチューを平らげていた。
巨大なビルの残骸が積み木を崩されたように倒れた場所、不眠廃都市ニューヨークと呼ばれる遺跡の一角で古龍ゲオルシャウランはやつれていた。
「な、なあ…ダネルダネルさん。最近、我の身体が回復するよりも摂取量が増えてて辛いんだが…もうちょっとだけ減らしませんか?」
古龍ゲオルシャウランは明らかに弱り、巨大で鋭利な剣のような突起した鱗こそ遠目からはわからないが近寄るとヒビなどが入っていた。また目にも力がなく、光がなく虚ろに近い状態だった。そして、目の下にくまもできていた。
「隊長!隊長!緊急依頼です!」
集落がある方から一人の隊員が急ぎ走ってきていた。
「ん~?なんダネ?」
「どうやら他の場所にいる観測対象のモンスターを調査してもらいたいそうです!」
ダネルダネルはそれを聞くと、食べているシチューをジーっと見て思案した。
「たまには他のものも食べるのも悪くないダネ」
「いや、待って下さい隊長。観測調査です、観測調査なんです!」
「大丈夫ダネ、話せばわかるダネ」
「隊長!行ってちょっと見てくるだけですよ!」
「伍長、大丈夫ダネ。わかってるダネ、ただ止むなしに襲いかかってきたら返り討ちにするだけダネ。自分からは何もしないダネ」
「絶対それ食す気満々じゃないですか!」
「ダネルダネルさん、その観測しにいく対象は古龍ですか?」
討伐されそうになった古龍ゲオルシャウランがダネルダネルに恐る恐る聞いていた。彼女の機嫌を損ねるといつも以上に身体の肉を食べられ再生に追いつかないほど摂取されてしまうからだ。そして、今はその摂取量が徐々に増えてきておりストレスで滅入っていたのだった。
彼女には逆らえない、そう古龍には弱味どころか力関係で負けているからだった。
あの後、何度挑もうにもコテンパンにのされてしまい。あまつさえ弱点である喉元近くの逆鱗を攻撃しない条件をつけての戦闘でも負けてしまったのだ。人種族相手にハンデをもらって倒された古龍ゲオルシャウランは完全に消沈していたのだ。ゲオルシャウランは古龍としてのプライドをズタズタにされていたのだった。
そんな彼女に観測しに行くのか同じ古龍なのかどうか、気になっていたのは少しでも自分と同じ目にあってしまえという思いもあったのだ。用するにひねくれてしまったのだ、自分よりも小さき者で見下していた相手にコテンパンにされた思いを他の古龍にも味わってもらい、少しでも自分の悔しさを軽減したかったのだ。
「ええ、古龍です。キューゼンマーゼンと呼ばれている―」
「あやつか…あやつか…グハハ」
ゲオルシャウランはキューゼンマーゼンのことを知っていた。自分よりも強い存在であり、願わくばダネルダネルが倒されてしまえばいいと思っていたのだった。倒されなかったとしても逆にキューゼンマーゼンも同じ目にあえば自分の古龍としての存在も彼女の前では例外だと他の古龍も認めるだろうと思っていたのだ。
「ゲーくん、何がそんなに面白いダネ?」
ダネルダネルはゲオルシャウランの事をゲーくんと略していたのだった。彼女はゲオルシャウランが楽しそうに笑っている事に純粋に疑問を抱いていた。自分が巻き起こした事によってゲオルシャウランのプライドをズタズタにしてしまったことすらもわかっていなかった。
「最近、ゲーくんの肉の味も落ちてきたし、面白い事をあるのはいいことダネ」
ダネルダネルがゲオルシャウランの肉を摂取する量や圧倒的な力の差から過度なストレスを与えてしまっているのが原因だと彼女は知らない。
「これで肉の味もよくなるダネ!」
ゲオルシャウランは、心底ホッとしていたのだ。
「そうだな!グハハッ!」
ダネルダネルが離れていってくれる事に対して素直に喜んでいた。何を言われてもゲオルシャウランは嬉しいのだった。
(これで喰われ続けなくて済む…よかった!よかった!)
「あ、でも定期的に肉は送ってもらうダネ。途中で途絶えたら取りに来るから安心するダネ」
「えっ」
ゲオルシャウランは密かにだが、ダネルダネルがいなくなったあとは地面に潜るなりして眠りにつこうと思っていたのだ。ただでさえ、自分の肉を提供すると言ったが、ダネルダネルがいる間のみであり自分の命のためでもあったからだ。しかし、ダネルダネルがここから離れはするものの肉を提供しないといけないことに驚愕していた。
「途中で腐ってしまうと思うんだが…」
竜の肉というのは非常に腐りにくい、そもそも古龍レベルになるとまず腐ることはない。瘴気や衰気と呼ばれる気に当てられれば腐ることもあるがゲオルシャウランの場合、まず腐ることはない。単純にゲオルシャウランはこれ以上ダネルダネルに肉を食われたくなかったのだった。
「腐ってしまうのなら…仕方ないダネ…」
ダネルダネルは竜の肉に対してというよりも竜に対しての知識がなかったのだった…。それでも古龍相手に引けを取らず、倒してしまうほどの力を持っているのは不滅者が作り出した蛮神を相手にしていたからだった。古龍クラスは彼女が戦っていた敵と比べれば、強いがそこまで脅威になるレベルではなかったのだった。
ゲオルシャウランは彼女があまり頭がいいとは思ってはいなかった。戦闘能力は高く、戦闘に対する知識は高いが竜、龍などの生物に対する知識が低いことは薄々感じていたのだ。それ故にゲオルシャウランは嘘をついたのだった。
ダネルダネルはこうして、騙されることになり、ゲオルシャウランはしばしの休息を得ることができたのだった。




