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シャンゴリラガールズ~三姉妹巨女伝~  作者: 犬宰要
水の加護、恵みの雫と雲海の漣
55/62

51-飛べない空

半年以上ぶりの更新…✧∠( 'ㅂ')/

 飛空挺の技術がロクアディ皇帝国から流出した事により、元より存在していた空賊達がより活性化し力をつけていった。正規ルートではなく裏ルートからの流出だったのだ。元より飛空技術は各都市が開発していたがロクアディ皇帝国から技術流出より、更に改良、発展されていった。この背景にはロクアディ皇帝国の技術者が国のやり方についていけず亡命した事により技術の流出したからという噂などもあったが真実は定かではない。

 技術流出により各国の飛空挺事情は大きく変わり、外交など変化していった。そして、同時に制空権という概念も新たな問題として上がっていったのだった。今まではロクアディ皇帝国が制空権を握っていたのだ。しかし、セーブポイント上空や一部の「精霊の森」といった特殊空域は飛空艇の航空が出来ず制限されていた。

 だが、飛空技術が発展していった事によって今まで都市国家同士の曖昧な制空権が空賊などによって侵されていった。それが他国の侵略行為やスパイ行為ではないかという憶測から都市国家同士の同盟などにも影響を与えていた。



 四人は浮遊島へと通じる街の宿場にいた、ン・パワゴの飛空挺は巨大空クジラと接触し不時着して壊れてしまっていた。

「ざまぁ!!!」

 ザクロ・リリウムはン・パワゴの飛空艇がダメになったことに対して煽っていた。

「あぁん?」


 二人はいつものように喧嘩腰で会話をしていた。

 ツェリスカはいつものような光景に何か安心をしてした。二人のやり取りを見て、自分が欲していた日常がここにあるのかもしれないと感じていた。そんな思いを知ってか知らずかタヴォールはニヤニヤとツェリスカの方を見ていた。

「ツェリ姉さん、どうする?」

「ん?何が?」

 タヴォールは目頭を抑えながら、ため息をついた。

「いや、移動手段が無くなったからどうするかって話だよ」


 するとン・パワゴがザクロ・リリウムとの口喧嘩を辞め、タヴォールに向かってドヤ顔でこれが名案だと確信めいた口調で言った。

「空賊から飛空艇を奪うんだ。なぁに、一つの空賊を敵に回したら回したでそれはそれで楽しいしな」

「ばっかじゃないの?」

「ああん?」

「ばっかじゃないの?ほんっとばっかじゃないの?」

「他に方法あるか?代案言ってみろよ」

 ン・パワゴはザクロ・リリウムに言い返すが何も言い返すことが出来ずだんまりになってしまう。


「空賊というのは、人々に困らせている存在なのか?」

「ツェリ姉さん、賊だよ?犯罪者の集団だよ」

「なら、別段倒してもいいのだろう?」

 ツェリスカの思考は段々とこの世界の冒険者らしい思考になっていった。


 ザクロ・リリウムはあんぐりと口を開け、ン・パワゴはよしきたと言わんばかりに拳と手をばしんと叩きやる気を出していた。

「そうと決まれば、どの空賊を潰す?」

 飛空挺を奪うことから一つの空賊を潰すことにいつの間にか話がシフトしていた。

「自分たちが移動する上で手頃な飛空挺を持ってる賊にしよう」

「ツェリ姉さん、それなら今後を考えて大きめな飛空挺を所持してそうなところにしようよ」

「占いでわかるか?」

「ただツェリ姉さんが来るのを待っていたわけじゃないからね。占いだけじゃなくて目星もついてる」

「さすがだな」


 ザクロ・リリウムは話が急速にまとまっていくのをただ呆然と眺めいるだけだった。

(そうだった…ン・パワゴは戦闘狂気味だし、この2人は元軍人だった)

 賊と呼ばれている無法者どもは団体行動を行っていることが多い…盗賊、山賊、海賊、空賊と場所などによって呼ばれ方が変わったりする。 


「さぁて、空賊狩りだ」

 ン・パワゴはやる気満々の表情をしていた。それに暴れられる事にワクワクしていたのだ。大事な飛空挺が壊れたことにより、イライラが募っていたのだ。


「ねぇ、ところでその空賊のアジトまでどうやって行くの?場所わかっても浮遊島だと思うし、飛んでいかないと…」

 ザクロ・リリウムが肝心なことを言うと三人は考えてなかった為、固まった。



「ちょっと、絶対これ何もありませんでしたっていうオチになるわ。そんな予感がする」

 ポーション割りをゴクゴクとあおり、目が座り不満をタラタラ言っていた。歩くのが面倒なのか普段では出さないゴーレムを召喚し、その上に乗って歩かせていた姿は完全にやる気を無くしていた。


「湿気も酷いし…マジだる」

 ザクロ・リリウムのゆるふわりとした金髪の巻き毛が湿気によりうまくまとまっていなかったのだ。

「今さらなんだけど、この湿気…明らかに私の術と相性悪いよね」

「ザコロ、足手まとい枠笑う」

「はぁぁぁん?」

 ン・パワゴはザクロ・リリウムの名前をバカにし、煽っていた。二人の口喧嘩は今に始まった事ではなく、ツェリスカもタヴォールも気にする様子もなく周りを警戒しながら歩いていた。


 空を見上げると浮遊している岩や陸地などが数多く点在していた。ただ、簡単に届きそうな空地から果ての空高くにある空地まで太陽を遮るようにいくつもあった。まるで山をひっくり返したようなものが空に浮かんでいて、空が湖に見えなくもなかった。

 ツェリスカは見上げた空と浮遊島の景色に自分がいた戦場では見れない美しさに目を奪われていた。


「ねぇ、これさ…どうやってあの浮遊してる島へ行くの?」

「なぁに、浮遊術を使って一番近い浮遊島へ飛んでだな―」

タヴォールが気になったことを喧嘩してる二人に言うとン・パワゴは何を当たり前かと答えた。

「浮遊術…ある程度空中で姿勢制御は出来るとは思うが、ここの力場の流れを考えると無謀ではないのか?」


 浮遊術、身体を空中に浮かす空を飛ぶ術式である。しかし、魔導具など術式を補助するものがないと制御が難しい。またその土地の力に大きく左右される事もあり、安定して浮遊するとなると飛空挺の方がよかったりする。


 制空権が完全に制御されている精霊の森ではそもそも精霊や妖精でないと浮遊する事すらできないように管理されている。

 浮遊島があるこの区域もそういった制限はないにしろ、浮遊島から出る特有の力場によって浮遊するのが難しい。


「その時はその時だ」

「落下死とかありえるのはさすがに…」

一抹の不安を抱えながらもン・パワゴが言うなんとか浮遊すれば届くであろうと思われる場所に着いた。


「まーたカモだ」

「バカな 奴らだ」

 ツェリスカはその声に気づき、浮遊島の一つを見上げていた。微量な音声ではあったが、風の音とは違う異音だったことに彼女は気づいていた。周りの風景に目を奪われていたものの、異音からの危険察知だけは鋭かった。


「敵襲」

 ツェリスカはボソリと呟き、ベヨネットハンドガンを構える。ン・パワゴもザクロ・リリウムも同じくさっきまでのダラケきった雰囲気を他所にした。

 ただ一人、タヴォールだけはやる気を無く、隙を見せていた。

「占いでは、やる気を見せたら足元すくわれるって出ていたんだが…」

 彼女は声がした方向を向かずに姿勢を変えずに周りをキョロキョロしていた。


 すると彼女らがいる地面が盛り上がり、網がいっきに地面から浮き出てツェリスカとン・パワゴ、ザクロ・リリウムが捕らわれてしまう。頭上ではなく、周りを警戒していたタヴォールは咄嗟に避けたのだった。


「んっん~、占い絶好調」

 地面に置かれていた浮遊石が一気に空中にあがり、くくり付けられた網がツェリスカたちを捕えたのだった。しかし、ただ一人だけタヴォールだけはその網に捕らわれずにのんびりとしていた。


「タヴォール…お前知っていたな?」

 もぞもぞと網に捕らわれ、ン・パワゴとザクロ・リリウムとごちゃまぜになって身動きが上手くとれないツェリスカはタヴォールを睨みつけていた。

「ちょっと動けないし!」

「お前邪魔!マジ邪魔!」

 そして、ザクロ・リリウムとン・パワゴは喧嘩をしていた。捕らわれたというのに、あまり緊張感が無かった。


「いや、占いに出ていたしさ…」

「先に言え、あとこれどうにかしろ」



タヴォールはニヤニヤと笑いながらも背中に布で包まれた戦斧を抜き構える。

「待ってタヴォール、それは何かとてつもなく怖い」

「たかだか網をそのデカイ斧で斬るって何か怖い、というか危険だ」

ザクロ・リリウムとン・パワゴは斧を構えた斬る気満々の姿を見て怖がっていた。

「二人とも大丈夫だ、網だけ斬る腕くらいタヴォールはあるぞ?」

ツェリスカはタヴォールを信用しているが、二人はそうではなかった。戦闘技能は高くても普段のタヴォールは男漁りが酷く、素行そのものがはっちゃけ過ぎていたのだ。それに体格もかなり大きい為か繊細なことは向いてない風に見られていた。


タヴォールは何やら信用されてないことにタジタジしていた。

「大丈夫だよ?」


「なぁにをゴチャゴチャしてるんだ?」

「おいそこの褐色の男、武器を捨てろ」

火薬式の銃を構えた空賊たちが飛空挺にのって現れたのだった。



「くくっ、お前男だと思われてるぞ」

ツェリスカが笑いをこぼしていた。


「おい、そこのにーちゃんも黙れ」

「男二人に幼女と猫耳娘か…冒険者様は随分と観光気分だな」


「ふふっ、姉さんも男だと思われてる」

タヴォールはツェリスカに笑い返した。


ン・パワゴは幼女と呼ばれたザクロ・リリウムを見てニヤニヤとしていた。ツェリスカは自分たちのやり取りも側から見たらこんな感じなんだろうと思ったりした。

「ちょっ!あつ!あちちっ!ザクロ!お前やめろ!」

ザクロ・リリウムは炎の術式を形成させて自分たちを捉えている網を燃やそうとしていた。その炎の術式に巻き込まれ一緒に燃やされそうなってるン・パワゴは悲鳴をあげていた。

「はぁぁん?あいつら観光とか舐めたこと言ったのよ?」

ン・パワゴは身をよじりながらザクロ・リリウムを止めに入り、形成されていた術式を阻害した。

「ちょっと!なにすんのよ!」

「落ち着け、この縄は並の術式じゃ壊れねぇよ。おそらくこの縄は…」


「はははっ!そこのチビ、その縄はクジラ用の縄だ。そんな火遊び程度の炎じゃ焼けねぇよ!はははっ!」


一人用の飛空挺に乗りながら網に捕らわれた三人を見ながら笑っている空賊が現れた。浮遊島から様子を見ていた者たちも飛空挺に乗っており、ツェリスカたちをら取り囲んでいた。


飛空挺から飛び降りたガタイのいい男がタヴォールにニヤニヤしていた。

「褐色のにいさんよぉ、武器を捨てな。命だけは取らねぇでいてやる。金目のもの全てだしな」

タヴォールは自分たちを取り囲んだ空賊たちが全て姿を現したことに笑みをこぼしていた。浮遊島に隠れていた気配も視認可能になったからだった。

戦斧を方に担ぎながら、先ほど投降しろと言ってきた空賊を見ていた。相手はまだ空の上からタヴォールを見下ろしているが彼女がニヤついた顔で落ち着いてる様を見て少したじろいだ。


「男じゃねぇ、女だよ」

担いでいた戦斧をアサルトライフルモードに切り替え、菱形の銃口を空賊の頭に合わせる。ツェリスカのベヨネットハンドガンと違い、近接武器と遠距離武器と完全切り分けの変形型の武器である。

「なんだそりー」

パシィ

ガラスにヒビが入るような音がなると同時に銃口から四角い棒が発射され空賊の額に黒い四角い棒が当たる。

殺傷性のなく先が丸くなったものだった。

最初の一発から断続的に音が鳴り、周りの空賊たちの眉間に当てていった。悲鳴もなく、苦悶した声も上げずに空賊たちは意識を失っていった。

タヴォールがその場でぐるりと一回転し終えた後、一瞬の静寂が訪れ制御を失った個人用の飛空挺が地面に激突していった。辛うじて数機の飛空挺はほとんど無傷のままだったがいくつかの飛空挺は怒号を立てながら炎上していた。

また気を失った空賊たちは不時着し、地面に放り投げられていた。幸いにも炎上している飛空挺に取り残されている気を失っている空賊はいなかった。


「あ…やば」

タヴォールは自分がしでかしたことに気がつく、居たたまれなさが顔に出ておりツェリスカたちから目を逸らしたのだった。


「おい、タヴォール!!!」

「呆れた…」

「反則過ぎんだろ…」

網に捕らわれながらも三人はそれぞれ言いたいことを言いながら網から脱出をした。

「じ、事故だし」

タヴォールはツェリスカからそっぽを向けながら自分の責任ではないことを伝えようとしていた。

「事故にしても、この惨状…使えるのは幾つあるか…」

ン・パワゴは不時着した飛空挺を見ながら腕を組んでいた。

網から一番遅く脱出したザクロ・リリウムは息を切らしながら膝に手を当てていた。


「ちょ…っとそれよりも…はぁはぁ…不時着して、炎上してる…はぁはぁ…」

「ザクロ、どうした?運動不足か?」

ン・パワゴがザクロ・リリウムを気遣っているもののどこか小馬鹿にしていた。網そのものは切れなかったので釣り上げられた上まで登り、そこから降りるだけなのだが縄そのものが太いことあって小人種族のザクロ・リリウムには体力を使うものだったのだ。


「く、空賊の…はぁはぁ…人たちを助けないと…アジトの場所が…はぁはぁ…」

「ザクロ、それを早く言えよ!」

ン・パワゴとツェリスカ、タヴォールは不時着して炎上している飛空挺から気を失っている空賊たちを助けに急ぎ走った。


ものの数分もしないうちに気を失った空賊たちを集めた。彼らに目立った外傷はなく、特に回復術使わなくても大丈夫なのをツェリスカは診断していた。


「骨折している人もいるわけでもなく、気を失っているだけか…あとは起こせば話を聞けるくらいだな。タヴォール、こいつらが起きたらアジトの場所を聞き出してしまおう」

「ツェリ姉さん、聞き出すのはいいけど飛空挺はどうするのさ?」

「大型の飛空挺くらいあるだろ、それに積めて持ってこい。元はと言えば、お前が〜」

「あー、わかったよ!わかったって!」


タヴォールはリーダーと思われる空賊の一人を引っ叩き、無理やり起こすことにした。軽く頬を叩いているのだが、傍目から見るとかなり強く叩いているように見えた。

「ん、ん!?」

リーダーと思われる空賊が目を覚ますとタヴォールは頬を叩くのをやめ、襟首を掴み無理やり起こした。

「よぉ、ちょっと寝起きのところ悪いんだけどアジトまで案内してくれない?」


タヴォールの身長と空賊のリーダーと思われる者との差は大人と子供くらいの身長差だった。

この男、名前はサルディン・マンクロスといい元は冒険者として生計を立てていた。しかし、冒険者としての限界を感じ、空賊へと身を落とした。

飛空挺を手に入れたのも限界を感じていた時だった。無論、飛空挺を手に入れたあと、空賊ではなく冒険者としても活動を最初こそ行っていた。しかし、たまたま手に入れた飛空挺という力は彼のタガを外すのはそう長くはかからなかった。


「くそっ!ふざけんじゃねぇ!!!」


彼、サルディン・マンクロスは決して弱い冒険者ではない。襟首を掴んでいるタヴォールの腕をとり、そのまま自分に引き寄せて、腕をぴーんと張らせた。

タヴォールはそれに引かれるように前のめりになるが、すんでのところで踏みとどまるがサルディン・マンクロスがタヴォールの腕を捻りながら、関節を決めてきたのだ。


「うぎぃっ」

タヴォールから変な声が出て、地面に伏せられた状態になる。すかさずサルディン・マンクロスはナイフを出し、タヴォールの首元に添えた。


「てめぇら!動ごくんじゃねぇぞ!こいつがどうなってもいいのか?」


完全に油断をしていたタヴォールは見事に押さえつけられていた。体格差、経験、装備の差を覆した瞬間だった。

そして、ツェリスカ、ザクロ・リリウム、ン・パワゴはその様子を慌てる感じもなく呆れて見ていた。


(タヴォール…何やってるんだ…)


タヴォールとの体格差はあるものの、完全に決められていた為、逃げ出せずにいた。また、首元にナイフがあるのもあり迂闊に動けずにいた。


「ツ、ツェリ姉〜」

ツェリスカは半目になって呆れていた。訓練で対人戦のカリキュラムを以前の時代では行ってはいた。しかし、ほとんどの戦闘が蛮神や異形なるモンスターといった同じ人種族ではなかったのだ。

情けない声を出していたタヴォールは、まさか自分がしてやられるとは思ってもいなかった。そして、もしかして彼らは油断していただけで、本当は強いのかもしれないと心の中で不安が生まれていた。

今まで格下だと思っていた相手にしてやられるといった事の経験がなく、常に自分よりも強い相手と戦ってきたこともあり、こういった状況に対してメンタルが弱くなっていたのだ。


「おい!てめぇ!黙れって言っんだよ!」

サルディン・マンクロスはタヴォールに対し強気に出ていた。彼の中では自分が油断してやられたとは思っていなかった。明らかに自分よりも格上で遠距離用の武器を所持していることから早く逃げないとヤバいと思っていたのだ。

だが、今の状況からどう切り抜ければいいのか彼には考えがまとまらなかったのだ。下手に動くと拘束しているタヴォールから反撃を喰らうのを予測し、ツェリスカやザクロ・リリウム、ン・パワゴにやられると感じていたのだ。


(クソっ!こいつら一体何者なんだ…)


ツェリスカは奇妙な気配、それも今まで対峙してきた相手、蛮神の気配を空から感じていた。

ふと、空を見上げる錐揉み状になって落ちてくる巨大な物体があった。落ちる途中で浮遊島にぶつかるが逆に浮遊島が崩れたり移動させられる程の質量であった。

「お、おい…まさか…」

ツェリスカは驚愕していた、それに合わせてザクロ・リリウムとン・パワゴも上を見上げ顔を引きつらせた。

「ン・パワゴ!こいつはなんだ!?」

「巨大空クジラさ!ただし、わかってると思うがこいつは蛮神だ!!しかも…こいつが飛空艇壊した奴だ!」

ン・パワゴは引きつらせた顔から笑みをこぼしはじめていた。それを見たザクロ・リリウムは嫌な予感、いや確信めいたものを感じ取っていた。

「無理、むーり!無理だから!無理だってば!」

「いやいやみんなの力を合わせれば行ける」

「バカでしょ?いやバカだとは思っていたけど本当にバカでしょ?」


地鳴りのような重低音が空気を振動し、ごごごと音が次第大きくなっていった。サルディン・マンクロスはすでにタヴォールを拘束しておらず、動きそうな飛空挺へと駆けていた。

彼は今まで生きてきて、この場に居たら直撃はしなくても死ぬと感じていた。

(嫌だ!こんなわけもわからないヤツらに出会って、次は空クジラが落ちてくる。厄日だ!死にたくない!)

彼は叫びながら飛空挺へと乗り込み飛空挺を起動させ、逃げようとしていた。巨大空クジラは空気を振動させ轟音を立てながら地面へと差し迫っていた。


「タヴォール!結界形成しろ!!!」

ツェリスカがタヴォールへ命令を下し、タヴォールは瞬時にその場で天球儀を取り出し、戦闘形態へと変形させ大型結界を形成させた。

キィィンと音がなると透明な半ドーム状の結界が形成された。結界は墜落した飛空挺や空賊を含めてスッポリと覆った。


「な、なんだ!?」

サルディン・マンクロスは逃げたそうとしていたが轟音が静まり、空気の振動が軽減した事に気がつき振り返った先に巨大な結界に度肝を抜かされていた。

(う、嘘だろ…あんな巨大な結界…オ、オレはなんてやつらに手を出してしまったんだ…)

彼は既に逃げる事をやめ、観念したのだった。長いこと冒険者として生活をし、空賊に身を落とした彼は経験した事のない格の違いを体感していたのだ。

(あ、あんな巨大な結界を…この瞬時に形成するなんて、とんでもない化物どもだ…このまま逃げたとしても、いずれ捕まっちまう…くそったれが…)

巨大空クジラをスッポリと覆い尽くす程の半ドーム型の結界は中から見るとその大きさは遠近感を狂わした。だが、サルディン・マンクロスはその大きさを感じ取れていた。空賊として空を駆けてたことにより、遠近感を養っていたからだった。


巨大空クジラは近くに墜落し、その土煙と衝撃波がツェリスカたちを襲うが結界によって何事もなく無事に過ごした。


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