25-違和感と距離感
ヴァーガ族、犬のような頭を持ち、足は逆足になっている。体毛の色は茶色、黒色、灰色と様々である。生物の臭いには鈍感だが、魔石や鉱石といった石や土に対しての嗅覚が優れいている。歩行時は二足歩行だが、走る場合などは四足歩行になる。筋力は人種に比べてなく、手足は細長い。
土の加護を持って生まれているため、石に愛されている。石化毒などに陥らず、またゴーレムの生成も可能である術も持っている。ゴーレム生成をする際には土の加護を持ってない者と比べるとほとんど使わなくて生成できる。
小さいころからゴーレム生成をしているため、ゴーレムの扱いはかなりうまい。しかし戦闘で用いることがなく、もっぱら労働に使っているため、体力は低いが魔力が非常に高い。
◇
遺跡跡から出発の準備をし、ヴァーガ族の都市へを向かう道中、逆関節の二足歩行をしているゴーレムが歩いていた。
「なにあれ・・・」
大きさで言うと5メートルくらいはあり、歩くたびにガションガションと音が聞こえてきた。
「オートマータ…魔導兵器か?皇帝国占領地で見たやつと似ているな」
ン・パワゴは観察しながらつぶやき情報共有をすると、ザクロ・リリウムがン・パワゴの方に振り向く。
「あんた皇帝国占領地にまで行ったの?」
「今はそんな事どうでもいいだろ、もし魔導兵器系のものだとしたらかなり強いぞ…こりゃあながち、新技術かもしれないな」
「ゴーレムだとしてもあの見た目はちょっと違うしね」
ゴーレムは木、土、石、岩、鉄などいろいろな物から作成が可能である。大まかな見た目はゴーレム作成者の種族によって異なってくるが基本的に動きはぎこちなさがある。なめらかには程遠く、動きもそこまで機敏ではない。
彼女らが見ているそれはゴーレムにしては動きが機敏であり、なめらかだったのだ。
「あれはゴーレムじゃないわね…私はあんなゴーレム作れない」
「ザコロ~?」
「はぁぁん?」
「ああん?」
ン・パワゴはここぞとばかりに煽り、ザクロ・リリウムもそれに乗っかる。二人のやり取りは道中、常にあった為ツェリスカとタヴォールはもう慣れたのか特に反応をせずに周りを警戒していた。
「しかし、数が多いように感じられる…何かあったのか?」
ツェリスカは警戒中だとしても5体編成の二足歩行が1編成だけではなく、時間をおいて別の編成隊を見かけたからだ。
逆間接の二足歩行のロボットは前屈姿勢であり、胴と頭がくっついているデザインだった。腕は武器一体型であり、明らかに戦闘用であった。
「警戒しているにしても、確かに妙だな…おかしすぎる」
「ちょっと俺が見てくる」
ン・パワゴは気配を消して、その場から姿を消した。気配だけならまだしも、視覚的にも全く見えなくなり、ツェリスカは驚いた。
(な…光学迷彩?!いや、ナノスキンの着用は見受けられなかったぞ…)
「(ツェリ姉さん、体内の気と大気を同調させて、気配を消すことによって認識阻害を起こしてるんだよ。私も最初やられた時は気付けなかったよ)」
「(相当強いな…)」
残った三人は身を隠しながら、ン・パワゴが戻ってくるのを待つことにした。その間に、ザクロ・リリウムは何本目になるかわからないポーション割をグビグビと飲んでいた。
ツェリスカはそのポーションはいったい何本かばんの中に入っているのか謎だったが、持っている道具やそういった特殊な魔具や武具というのは仲間内にしゃべるものでもないとので特に聞くことはしなかった。
ザクロ・リリウムは不滅者であるため、特殊なアイテム袋を持っている。同じカテゴリーのアイテムであればほぼいくらでも入るのだ。
そして、ン・パワゴも不滅者である。
20分くらいした後にン・パワゴが戻る。
「勇者一行が接触したヴァーガ族と本山のヴァーガ族とは別なのがわかった、どうやらこの先じゃないみたいだぞ…ザクロ」
ザクロ・リリウムはポーション割りをいつの間にかしまっており、腕を組んで目を閉じていた。
「おい、ザクロ」
返事はない。
「お前、道間違えたな」
ン・パワゴは追求するものの返事はない。
ツェリスカも半眼になり、彼女を見つめていた。タヴォールは天球儀を取り出し、こそこそと現在地と地形などをスキャンをしていた。
「はぁ〜、俺が勇者一行との交流がある所まで先導する。そこに巨人腫や獣人種もいたしな…ったく」
「ところでここはどこだったんだ?」
ツェリスカはン・パワゴに問いかけると彼女も思っていた答えが帰ってきた。
「ヴァーガ族の本拠地、ここはその本山近くだ。ザクロ、今回の情報…」
「シラタキから聞いた」
タマキ・シラタキ、ルガール族の蛮神事件時にツェリスカとタヴォールを影からこっそりと協力したドッペルゲンガー種族の者だ。
「シラタキか…あいつなら間違いないと思うが多分このルートは彼がこっそり素材を採掘しに来るルートだぞ」
「嘘ッ?!」
「さすがにどんな聞き方したのかわからんけれども…俺ら戦争しに来たわけじゃないからな?」
「…相手の戦力、強さを目の当たりに出来たし、交流がある場所に向かおっ」
ザクロ・リリウムはその場から踵を返して、スタスタと元の来たルートを戻っていった。
「ザクロ、お前その交流してる場所知ってるのか?」
ピタっと彼女は止まり、目が泳いでいた。ツェリスカは呆れつつも、小人種はこういうものなのだろうかという思い…いや偏見が芽生えつつあった。
タヴォールはどこ吹く風か、天球儀でスキャンし終え天球儀をしまっていた。ツェリスカの側に寄り、そっと耳打ちをする。
「(ツェリ姉さん、解析してみてわかったんだけど…そこに動いてるのはゴーレムだけど、ゴーレムなのは核の部分だけで外装は強化拡張型のアーマーです)」
ゴーレムの生成は本来、媒体となる木、土、石などで形成されそれが全てだ。ゴーレムの外郭やゴーレムを生成にし、それを核にして強化アーマーを付けて行動させるなんて事は発想としてツェリスカとタヴォールにはない。
それは不滅者であるザクロ・リリウムやン・パワゴも知らない事だった。彼女たちがあの異質な逆関節の二足歩行してる核がゴーレムであるとは知らない。
ツェリスカとタヴォールは二人が彼女たちが居た過去の世界で戦っていた同じ不滅者であることを知らない。またザクロ・リリウムとン・パワゴは彼女たちが死に物狂いで戦っていた理由も生まれてきた理由も知らない。
「パワ、場所どこ?早く連れてってよ」
「お前それが人に頼む態度かよ」
「…」
「ったく、しゃーなしだよ」
「…ありがと」
口を尖らせながらもザクロ・リリウムはン・パワゴに礼を言う。ツェリスカはタヴォールから聞いた報告から嫌な懸念もありながらも癒やされていた。
「(ツェリ姉さん?)」
「(ん、ああ…聞いてる。あとアレが新技術だとしたら恐らく、蛮神というよりも−)」
「ツェリスカとタヴォール、行くよー」
ザクロ・リリウムに呼ばれ、二人は話を止めて、歩き出す。二人の雰囲気からン・パワゴはこれから何か起きるなという感が告げていた。
「(あの二人…本当に巨人種なのか…?)」
ン・パワゴは彼女たちの気を感じ取って違和感を感じていた。タヴォールとのスパーリングで感じた肉体的な強さと武術や気功、武器の扱い、そして極めつけは術に対する理解力だった。
「(ザクロがちょっと訳ありの人(NPC)を助けたって言っていたが…本当は不滅者なのか?…いや違うか)」
不滅者同士、互いに識別するコードがあり、それは感覚的に感じることが出来るのだ。
彼女たちはヴァーガ族の中でも人との交流を行っているところとへ向かった。各々が抱え込む思いや考えを吐露されずに、それが次第に大きな溝となり決別へと向かうのか、あるいは−




