24-ポーションをお酒で割って呑む者
飛空艇、風と気球の力を用いて移動する空飛ぶ乗り物だった。気球である事から耐久性や可燃性の問題があったが魔石の活用が実用化され、飛空炉と呼ばれるエンジンが開発された。実用化されていくうちに小型化が成功し、各国で開発競争が行われた。皇帝国ではすでに巨大な飛空戦艦を建造完了しており、それを主力にした侵略行為を行っている。
大型の飛空艇であればセーブポイントによる航空制限による飛空不可能領域に設定は出来るか小型の飛空艇の場合は機動性や飛空高度を制限する程度になる。個人で飛空艇の建造、所持は国によって法律で定められている。勝手に建造、所持することは国によっては処刑されることがある。
◇
砂浜に大きなクレーターができていた。
巨人種の警備隊長とその隊員が金獅子族の獣人と褐色白い短髪の巨人種が怒られていた。二人とも申し訳無さそうに砂場にできた大きなクレーターの近くに立っていた。
「タヴォール・・・」
「パワ・・・」
ツェリスカとザクロ・リリウムは呆れ返っていた。
「つ、ツェリ姉さん…違うんだ、これは私じゃない…よ?」
ン・パワゴだけ目が泳いでいた。
周りの冒険者などの小声に耳を済ますと口々に「闘気の放射って初めてみたよ…」「あのでっかいのがアイツの闘気の放出を下に向けなかったら俺らどうなっていたんだろ」「こえぇ…ここは安心して住める所じゃなかったのか」など言っていた。
警備隊の人たちもよく見ると震えており、さすがに一人の力で砂場とはいえクレーターを作り出す闘気の持ち主は何か癇癪が起きて自分が殺されるかもしれないと思うと怖いのだ。
その後、クレーターを元に戻す為の工費がン・パワゴの財布から支払われた。そして、浜辺でのスパーリング及び戦闘行為は禁止となった。
「あんた何考えてんの?バカなの?バカだと思ったけれどバカよね?バカ?」
ザクロ・リリウムはン・パワゴに目を吊り上げながらかなりキレていた。彼女の全身から炎のようなオーラが出ており、それに反応して置いてある魔道具がカタカタと揺れていた。
「さ~せ~ん」
悪気も反省もない謝り方をするン・パワゴだった。
両手を握り振り上げるザクロ・リリウムはプルプルと震えていたが、これ以上言っても無駄だと感じ、大きなため息をついた。
「まあいいわ、ヴァーガ族の都市ウルスラフルフルに行くわよ。どうせ、あんたの飛空艇を修理する魔石もそこで手に入るしね」
4人はヴァーガ族がいる火山帯エリアに向かう。メイルブラドォから北東に向かい、内陸部へと進んでいった。馬車などの定期便があったので3つほど都市を経由した。
そこからは徒歩になった馬車などを使えば速く着くことも出来るが、彼らを刺激しないで行く事にしたため徒歩でいくことになった。それにン・パワゴの飛空艇に必要な魔石もそこまで量が多いわけでもなかった。
「勇者一行が問題を解決した後に人種との交流をしている所があるからそこにまずは向かうわよ」
「ザクロ、場所わかんの?」
「もちろんよ」
自信満々にザクロ・リリウムはドヤ顔していた。ジャングルの中、獣道がいくつかありその中をぐんぐんと彼女は進んでいった。
シアントア大陸は火山が活発であることもあり、森というよりもジャングル、湿地帯が多い。そこに生息する動植物もどちらかというと肉食系が多く存在する。下手に内陸部に迷い込むと生きて戻ってこられない。
だが、高地に行くにつれジャングル地帯から解放され岩石といった岩場や多くなる。岩場の隙間などから薬草や珍しい花などもある。また掘れば化石なども出てくる事もあり、研究者など冒険者を雇ってくることもあるそうだ。
高地に行く手前の都市ミレッズレイクは温泉都市としても有名であり、シアントア大陸の療養所とも言われる観光地でもあった。
「ザクロ~温泉入りたかったんだが…」
ン・パワゴは周囲を警戒しながらつぶやくが、その声にザクロ・リリウムは反応しなかった。
ザクロ・リリウムもここまで来るのに結構疲れていた、小人種であり、術士というソーサラー枠であるため体力も低いためだ。しかし、それを補うようにポーションとグビグビを飲んでいた。回復薬でも上位であるポーションを彼女は惜しげ無く使っていた。
一般的なポーションは青色であるが、彼女が飲んでいるポーションの色は金色に近いものだった。ポーションは、体力の回復、外傷の回復など使用方法は飲む、つけるといった方法がある。
彼女は身体的疲労を回復するために、定期的に飲んでいたのだ。最高級の蒸留酒「ラインヘル」と呼ばれるお酒を上級ポーションで割って飲んでいた。
「…(氷雪系の術も覚えて、氷も入れれば…)」
ザクロ・リリウムは見た目こそ、人種で言う10歳くらいだが彼女はもうすぐで30歳だった。この世界での飲酒は15歳からである、しかし、お酒の種類によっては種族と年齢の規制は変わってくる。
「はぁー」
彼女はポーションとアルコールの香りをため息と共に吐きながら歩を進めていた。
「(ツェリ姉さん、あれってお酒だよね?)」
「(彼女の体力を感じろ、あれだけ歩いていて、更に休憩無しのに体力が変わらない…あれは回復薬だ)」
「(ほ、ほんとだ…)」
「(あれは恐らく特殊な配合をされた回復薬なのだ。さすがザクロくんだ)」
二人はひそひそと話していたが、ン・パワゴのケモミミには聞こえていた。
(いや、アイツはただの酒乱だ…アルコール依存症なだけだ…)
ン・パワゴは思う所があったが身長が1メートルもない彼女は、人目がある所でお酒でも飲んでいるととやかく言われることからこういった時にいつも飲んでいるのだ。
以前、古代遺跡を踏破する際にも戦闘中であろうと飲酒していたのだ。そして飲酒していようが戦闘に差し支えなく、酔うようなことはなかったのだ。
(それにあいつ…酒入ってる方が強いんだよなぁ…)
ン・パワゴは斥候として、彼女が向かっている先に木々に飛び移りながら移動していた。タヴォールは後方を注意しながら、ツェリスカは側面を警戒しながら進んでいた。
数時間ほど、ジャングル地帯を歩いていると少し開けた場所に出るとそこには遺跡があった。
「ここを野営地にして野宿するわよ」
「へいへい」
気だるそうにン・パワゴは返事をすると遺跡内に入っていき、タヴォールも一緒についていった。廃墟や遺跡跡など人が住んでいた場所はモンスターの住処になる。
遺跡内にはモンスターがいるのをン・パワゴはすでに調べてわかっていた、またタヴォールも気配を感じていた。二人は阿吽の呼吸のようにモンスターの排除しに入っていった。
その日、遺跡跡で彼らは野宿をした。
「ツェリ姉さん、ン・パワゴは強いよ…」
焚き火を囲いながら、タヴォールがつぶやいた。
「浜辺にクレーターあけるくらいだからな…」
「なになに?俺の話~?」
ン・パワゴがタヴォールの話に乗ってきた。
グビグビとお酒を飲みながら焚き火をぼーっと見ているザクロ・リリウムは特に話しには乗っからずでいた。ツェリスカはずっとお酒を飲み続けているザクロ・リリウムの体調を心配はしたが至って健康そのもので特に何も言う気にはならなかった。
「俺の強さの秘密…それは―」
タヴォールがやけに真剣に聞いていた。
「体内の闘気炉と呼ばれる気を生成する仕組みを構築し、大気と融合させる戦闘術を身につけたからだ。仙術とも呼ばれてる…タヴォールも使えていたのにはびっくりしたよ」
彼女、ン・パワゴはこの時代において仙術の使い手だった。しかし、タヴォールがいた時代では仙術という名前はなかった。軍人ならば誰でも使えるものだったのだ、そこから様々な流派に生まれていき、我舞式燃気術 (がぶしきねんきじゅつ)の使い手になったのだ。
二人は意気投合し、武について語り合っていた。
星空が満天の下で、その日の野宿はモンスターなどに襲われず朝日を迎えた。




