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シャンゴリラガールズ~三姉妹巨女伝~  作者: 犬宰要
火の加護、砂漠に咲く戦火
21/62

20-守り手、英雄再来

 タヴォールが持つ天球儀は厳密には天球儀ではなく、試作型星粒子機動器type星屑と呼ばれる兵器である。タヴォール自身、長ったらしく覚え辛い事から天球儀と呼んでいる。別称オキュパリーヌという名を持つがその名前がトリガーとなっているため、声に出して呼ぶことはない。

 観測、解析、回復など支援向きで多くの機能が搭載されているまた守りにもなる魔導盾ルジェッティと呼ばれるモードも存在するが試作型であるため、使用者の力に左右されるのではなく、パートナーやパーティメンバーによって効力が左右される欠点を持つ。



「ルーガンの長よ…その実はこの戦斧テラシォグラツォは私のものなのだ。私の無くしてしまったことで多大な迷惑をかけてしまった。申し訳ない…本当にすまなかった」

 タヴォールは頭を下げ、手を地面につける。

 ルーガルー・ルール・ルーガンは首を横に振り、まるで気にしていなかった。


「その戦斧は昔からあったものだ、お主たちが長寿種だろうと我がルーガン族が召喚してしまった事だ。元々はそなたのものであったのなら、今それを返すだけだ。この度のことは被害を抑えてくれた事に感謝するだけのことだ」


 ルーガルー・ルール・ルーガンは思い違いをしていた。ツェリスカたちは過去から未来に来たのだ、しかし、彼女たちが持つ武具、扱う術は彼が見ても異質だった。そのため、長い年月から洗練されたものに見えたのだ。


「もとより、その戦斧は他に扱える者がいなかった。ヴァンツァー・パルサーのみが扱えていたものだ。それがこのような形で元の持ち主に戻るのならば良いと思う」


「いや、そうではないのだ。私が言いたいのは―」

 ルーガルー・ルール・ルーガンは手をかざし、それ以上は語る必要がないという仕草をタヴォールに向ける。

 タヴォールは思わず口を閉じてしまうほどの圧倒的な空気が彼からにじみ出ていた。


「例え、その戦斧があのような事を引き起こす原因があるとしてもそれがもう二度と起きぬのなら良い」


「そうか、すまない…ありがとう」

 タヴォールは再度頭を下げた。




「勇者が倒したと言われた蛮神がまた再召喚された、しかも今度は都市内でだ…非戦闘エリアにだ。しかも、狂信者がかなりの数がいたんだが、お二人方が最後には狂信者を元に戻したよ。もちろん蛮神も倒したよ…あの二人はなんなんだ?」

 タマキ・シラタキは、首元に手を当てながら通信会話をしていた。


「さ、さすがというか…蛮神を倒すとか勇者一行よりも強いんじゃないかしら…それで無事なの?」

 ザクロ・リリウムはタマキ・シラタキに問い返した。


「ルーガン族の亞人たちと仲良くなってるよ…本当に意味がわからない。依頼された内容は彼女たちが探していた物を手に入れて無事に帰ってこれるように支援することだけど…わいはいらなかったんじゃないかって思うんだが」

 黒色の尻尾がうにゃうにゃと動かしながら大きなあくびをした。


「仕事だから最後までちゃんと見るけれどさ、あのお二人何者なの?」

 さすがにタマキ・シラタキは気になっていた。ザクロ・リリウムから支援任務の依頼を受けたものの、最近知り合った巨人族の二人を何かあったら助けてくれという内容だったがまさか亜人族絡みになるとは思ってもいなかったからだ。


「アガルタ文明の民…シャンバラ族よ」

「ザクロ?頭大丈夫か?古代遺跡踏破した時に何か拾い食いしたか?」

「はあぁん?」

「ザクロ…そんなんだから脳みそザコロとか言われるんだよ」

「てめぇ」


 タマキ・シラタキは飽きれ顔をしつつ、ザクロ・リリウムが言ったことが嘘ではないことをわかっていた。


「アガルタ文明の古代遺跡か…」

 ボソリとつぶやいた彼の声は風の音によってザクロ・リリウムには届かなかった。届いたとしてもキレてて会話にならない。

 さっきからザクロ・リリウムはキレて文句も言っていた、しかしタマキ・シラタキは聞いていなかった。いつものことだからだ、彼女をからかって遊び、放置する。


「ちょっと聞いてんの?」





 ツェリスカとタヴォール、ルーガルー・ルール・ルーガンとその他要人風な者や術士や兵士共にセーブポイントに訪れ、蛮神が召喚されないように防衛機構に組み込んだ。

 その実演を彼らの前で見せ、術の仕組みをルーガルー・ルール・ルーガンに説明を行っていた。そしてその場でヴァンツァー・パルサーをセーブポイントへ組み込み、蛮神として召喚されないようにするか決める事になったのだった。


 ルーガルー・ルール・ルーガンからその事について発表されると一様に苦々しい表情を浮かべ、唸り声といった威嚇行為が二人に浴びせられた。


「静まれ!!!!私も最初に聞いた時は同じ思いがあった…しかし、冷静に考えよ。この方法を知れば、死してなお、故郷を守れるのだ。悪逆に利用される可能性があるのならば、我々の未来の為に力を使わせてもらった方がいい」


 とは言うものの反対の意見は出る。ツェリスカはやはり難しいかと感じた、そもそも蛮神は思いの力を兵器化したものだ。多くの思いが間違った方向に向き、それが具現化し行動をする。

 そして、その力は神に近く、一人の手に追えるようなものではない。数十人でどうにか出来るようなものでもない。同じ思いを持つ者が大量にいる場合、更に力を増して手がつけられなくなる。


「何も魂そのものを束縛しようというものではない、皆が思う生前の彼が具現化し、この都市を守るということだ。ヴァンツァー・パルサー本人が降臨するわけではない」

 ツェリスカはルーガルー・ルール・ルーガンに代わり、説明をした。


「ここに住まう同士、同族を守る者、過去から語り継がれた英雄像が具現化し都市を守る。だが、その触媒に彼の遺骨や遺品を用いるということなのだ」


 蛮神とは何か、認識のズレがツェリスカたちとルーガン族との間には合った。本人が召喚されるという認識がこの世界では常識なのだ。ザクロ・リリウムが持つイデルマージの映し身が入っているとされる魔道書しかり、だ。


 しかし、事実は「思い」が形作ったものであったのだ。それがあの召喚の儀式の現場を検分し、わかったことであった。


 あたりはザワザワと反対する意見や賛成する意見など入り混じりになり、騒然としていた。このままでは埒があかないとみたルーガルー・ルール・ルーガンは、ここで話した内容は思案しておくこと、明日改めて話しあおうという形に落ち着いた。

 決定が下すまでは他言無用にし、それまでの間はツェリスカとタヴォールは客人という扱いになり、滞在することになった。


 数日経ち、最終的に結論が出た。


「ルーガルー・ルール・ルーガンの名において、ヴァンツァー・パルサーを英雄召喚させる」


 都市を襲った蛮神としてのヴァンツァー・パルサーではなく、都市を守る英雄として召喚されることになった。

「我々が道を誤らない限り、力を貸してくれる存在となるのであれば、そなたたちがもたらした力を正しく使おう」



 こうして、ルーガン族の都市セーテ・ルーガは、生まれ変わった。この英雄召喚が防衛機能に入ることで他種族に対して更に攻められにくくなり、強固な要塞と化した。これが転機となり、ルーガン族は他種族との交流が発展していくことになる。

 人種に対して奇襲地味な事も減っていき、ルーガン族としての誇り、英雄が見ているという後ろ盾があるという余裕もあり変わっていくのはまだ先の話である。



「それじゃあ、私達は行くよ。世話になった」

「ご飯、美味しかった。ありがとう」

「礼を言わねばならぬのはこちらの方だ、何から何まで感謝しかない。また来てくれ、その時は一族を上げて歓迎しよう」


 二人はセーテ・ルーガを後にし、メハルジアへと向かった。

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