19-正しく使われるために、誰がために
セーブポイント、白く巨大なモニュメントとして各地に生えている。様々な要因で大地の底から結晶化されて隆起し、海の底からも隆起してくることもある。その周りに生活圏を築き、繁栄させていく中でその生活圏を築いた者たちに害意があるものは近寄らなくなる。
またある程度、生活圏が確立されて都市や町といった大きさになると人口の数に応じて様々な恩恵をその都市や町に与える力を持っている。セーブポイントについては詳しいことはまだ解明されていない。
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ルーガルー・ルール・ルーガンはツェリスカとタヴォールの二人の巨人族を地上のセーブポイントではなく、地下の巨大な空洞にあるセーブポイントに案内していた。本来なら他種族を入れることはなく、ルーガン族でも限られた者しか入れない聖域とされている場所だ。
セーブポイントの前に立ち、魔導書を開き片手をセーブポイントに当てて出来るかどうかツェリスカは調べていた。
(地上に設置されているセーブポイントと違い、核となるセーブポイントが存在しそこから枝分かれしてここに集約されているのか…こんなもの私達がいた世界には無かったな…)
「ルーガンの長、防衛機構に浄化の拡張は出来た。私の術式が組み込む事が出来たので確認してほしい、確認が終わったら現場に向かおう」
現場に向かう前に都市全体に浄化をし、洗脳を解いて狂信者がいなくなったとしても都市に狂信者は入れる。そのため、現場を調べている隙にまた外部から狂信者が入ってくるとなると何が起きるかわからない為、先に対策をしておくことになったのだ。
「確かに、確認した。なるほど、こんな術式なのか…これはすごい」
ルーガルー・ルール・ルーガンは人族の術について認識を改める事になった。しかし彼女たちがこの世界の常識からすると異常なのである。
◇
現場にはおびただしい血の跡と吐き気を催す異臭が漂っていた。血の跡の下には魔法陣が書かれており、中央に祭壇がありそこには血が染み付いた骨で組まれた物があった。
タマキ・シラタキは都市内部に侵入し、ツェリスカとタヴォールを探していたがきな臭い臭いに惹かれて彼は蛮神を召喚する際に使われていたと思われる場所にたどり着いた。
「これはわいの手に負えない品物や…この魔方陣といい、使われている術式といい…人種だけではなく、獣人、亞人…これは竜人族のか?」
魔法陣、儀式に使われている物など事細かに手帳に書き込みながら冷や汗をかいていた。
「どういう仕組で儀式が行われたのかわからんけど…これは発動まで術を感知できない仕組みになってるのか?」
おびただしい血によって魔法陣が隠れているところは読み取れなく、推測するしかなかった。しかし、その見解は半分正しく、半分間違っていた。
タヴォールの戦斧テラシォグラツォを媒介にし、一気に召喚工程を短縮させ、瞬時に召喚させてしまった為、感知した瞬間に召喚されたのだ。優れたアーティファクトによって儀式や術の力を増幅させるやり方は人が術を使う際に杖や魔道書といったものを使うのと一緒である。
「よし、とりあえず調べるもの調べたし退散しよ」
タマキ・シラタキは耳をピクピクさせ、手帳にあらかた書き込んだ後、姿を透明化させてその場から姿を消した。
儀式に使われている魔法陣とセーブポイントの位置に合わせて作られていることに彼はわからなかった。
大元のセーブポイントの詳細な位置はその都市にとって死活問題になるからだ。セーブポイントが破壊されれば、都市としての機能が失い、いずれ衰退していくのだ。
◇
タマキ・シラタキが調べ終えたの少し経った後に、ルーガルー・ルール・ルーガンとツェリスカ、タヴォールがその現場にやってくる。三人ともその部屋に入ると顔をしかめ、その異臭と儀式の祭壇や血の跡を見て口元に自然と手が入っていた。
「発見してから何も手を付けないでおいてある、そなた達が先に見たほうが良いと思ってな」
ツェリスカはルーガンの長に頷くと魔法陣やあたりを調べ始める。タヴォールも天球儀を取り出して展開させ何やら調べていた。
ルーガルー・ルール・ルーガンは今回の事についてこの巨人族たちを信用しようと決め、腹をくくる事にした。今まで同じ種族同士でのいざこざなどはあったものの、都市内でここまで大規模な問題が発生したことはなかった。
そしてその対処、対策などを彼らが知らない知識と力によって解決された。前回、蛮神が召喚された時は勇者たちの力によって解決はしたもののそれはルーガルー・ルール・ルーガンにとっては凄まじい力ではあったがツェリスカたちが持つ力とはどこか違う叡智を感じられたという。
「未だに我々の部族の中に人種に反発しているものもいる、闇雲に蛮神を屠った所で溝を失くさぬ限り繰り返す事になる」
ルーガルー・ルール・ルーガンはひとりごとのようにつぶやき、それを聞いていたツェリスカは調べながら答えた。
「人種にもいろいろいる。小さい者から私達のように大きい者、同じ国で生活していたりそうじゃなかったりもする。それらを知っていく事で溝も狭まっていくだろうさ…その中でもルーガンたちにも友好を持つ者もいればそうじゃない者もいるだろう。ただ、それが総意ではないことをお互い知っていく事が歩み寄っていく事じゃないのか」
ツェリスカは魔道書をしまうとルーガルー・ルール・ルーガンに向き、やさしい笑顔した。
「幸いにも言葉が通じるし、タヴォールもここの飯も好きなようだしな」
ルーガルー・ルール・ルーガンは目を閉じ、頷いていた。虎のような頭が優しげな顔になっていた。
「ツェリ姉さん、ワクチンできたよ!」
「よくやった!こっちは検分が済んでいる。ルーガンの長よ、聞いておきたいことがあるのだが、ここに使われている儀式に使われたと思われるこの遺品や遺骨はヴァンツァー・パルサーのもので間違いないか?」
「うむ、この角の形、腕輪など彼のものだ…」
苦々しい表情と怒りが滲み出ていた、毛が逆立っており拳は強く握られていた。
「これから話す内容は今後に関わる大事な話だ、どうするかしっかり考えてもらいたい」
ツェリスカはセーブポイントに触れて気がついた事があった。蛮神が再召喚された際に昔の英雄が召喚され自我を持って会話が可能だったこと。もしも、これが正しく使われた召喚術だった場合は防衛機構として働くのではないかと考えたのだ。
ザクロ・リリウムが持つ、魔道書、炎の原書 第4巻のイデルマージがいい例だと思ったのだ。
(幸いにも、この種族の英雄と称されていた者の遺物、遺骨があるのなら悪用されないようにこっちが利用すればいい。術式は上手く組み上がるが、はたしてこの提案は彼らにとって死者への冒涜になるのか、否かわからん)
三人は、先程の部屋とは別の部屋にいた。血なまぐさい部屋に居たせいか、身体に妙にこびりついた血の臭いのままはさすがにあの部屋に通すわけにはいかない為、別の部屋となった。
「して、大事な話とは?」
「ヴァンツァー・パルサーの遺骨、遺品を使い、狂信者が使った召喚の儀式そのものをセーブポイントの防衛機構に組み込む」
ルーガルー・ルール・ルーガンの目が見開き、歯をむき出しになる。
「それはどういうことだ?」
怒りを抑えこむような声と共に発せられた。怒気のようなものもあり、室内の温度が下がっていった。
「率直に言おう、あの召喚儀式を解明出来た。そして都市内で同じ蛮行が起きない術式も展開可能だ。そしてこちら側から、ヴァンツァー・パルサーを召喚し、いざとなった時に都市を守ってもらう事が可能だ。都市から離れて行動は出来ないが都市近辺ならば活動は出来る為、相手が蛮神で攻めてこようとしても迎撃は出来るだろう」
「しかし、それは…」
ツェリスカはやはりこの方法は死を冒涜する行為だったかと感じた。だが、また同じような事があった場合、彼らだけで対処するとしても被害は甚大なものになるだろうと思っていた故の考えだった。
「死した後も守る存在になる、悪逆どもに利用される危険性もなくなるのなら良いのかもしれぬな…」
目を閉じながら、ルーガンの長は苦々しい表情をしてした。眉間に大きなシワを寄せ、腕を組んでいた。
「ツェリスカ殿、一つ聞きたい…なぜそこまでしてくれるのだ?」
「私はあの蛮神を生み出すように仕向けた者どもと戦っている。そいつらの影がある限り戦う。だが、一人では立ち向かえないことを私は身を以て知っている」
拳を握り、開きその手のひらを見つめながらツェリスカは今まで助けられなかった者達を思い出していた。
その気持ちは種族や生きる場所が違えど同じだと彼女は思っていたのだ。
「だからこそ、やれる事はしたい。それにそいつの戦斧がきっかけでもあるしな…タヴォール」
キッとタヴォールを睨み、今回の騒動となる蛮神が召喚されたエネルギーの元となった戦斧について詫びろと目で訴えた。
(道理は通したんだ、謝れタヴォール)




