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シャンゴリラガールズ~三姉妹巨女伝~  作者: 犬宰要
火の加護、砂漠に咲く戦火
14/62

13-異質な気配

 タマキ・シラタキはザクロ・リリウムに雇われて、ツェリスカとタヴォールがいざとなった時に助けるように依頼された忍者である。見た目は小人族ではあるが本当の姿を知るものはいない。巨人族になっていたり、平均的にいる人族になっていたりするのだ。変装ではなく身体そのものが変わっている。

 ドッペルゲンガー種と呼ばれる種族だが、彼の故郷は滅ぼされてしまい。世界に散り散りとなってひっそりと生活している。ある者は復讐、ある者は冒険、ある者はリッチな生活、などなど…





「するとお二人さんは探し物のために亜人族のところに?」

「ああ、そうだぜ」

 尿意から解放されたタヴォールがタマキ・シラタキといつの間にか仲良くなっており、ツェリスカは順応性が高いと思いつつ、べらべらと喋るような事はしないだろうと思い放置していた。

 夜闇が差し掛かる頃には、焚き火が出来上がっていた。夜は少し冷えるがそこまで寒くはなかった。砂漠地帯が多いメハルジア王国内ではあるが昼の間に太陽からの光によって地上の鉱石が熱を蓄え、それを夜になって放出するためそこまで冷え込まないのだ。


 ツェリスカは、地面を触りながら不思議に思っていたところをタマキ・シラタキに説明された。彼女は小人族からのやさしさに対し、素直に受け取った。


「わいも彼らに用事があるんよ、一応こういうもの作っていたりしてな」

 タマキ・シラタキは、馬車の中から不思議な工芸品を取り出し、周りに見せた。ある者は感嘆とし、ある者は蛮族にもこういうのがわかる奴がいるのか、など様々ではあるが良い反応だった。

 それは炎を象った綺麗な工芸品だった、炎をそのまま結晶化させたような形をしており、繊細で壊れそうな雰囲気を醸し出していた。

「ふふん、なかなかの出来だろ。わいが作ったん」

「すごいな、とても綺麗だ。知り合いが作り出した炎をそのまま見ているような温かみがある」

 ツェリスカが言う知り合いはザクロ・リリウムの事だった。もちろん、タマキ・シラタキもその事を知っている。知ってはいるが依頼で来ているのでその事を別段話す必要もないので彼は言わない。


 その夜は彼が作った様々な品を見せてもらった。ツェリスカもタヴォールも以前では見たことのない戦場では実用性のないものばかりで使用用途がわからないものばかりだったが、不思議と安らかな気持ちがあり笑顔が自然と出ていた。


 ツェリスカは夜空を見上げながら、世界の全てが戦場だった頃を思い出しながら、あの時と比べると小さな争いがあるものの穏やかだなと感じていた。



翌朝も次の日も場所は順調に進み、途中オアシスで休憩を取りながら、何事もなく経由地に着いた。

余談だが、オアシスで水浴びをしていた際にタマキ・シラタキは覗いていた。なお二人は気づいていたものの、数秒もしないうちにいなくなったので気には止めてなかった。


タヴォールの胸のサイズは少々凶悪なので、よく見られる。ツェリスカもそれをわかってるし、タヴォールはむしろ武器だと思っているので見られたところで特に気にしていなかった。




メハルジア王国と比べて都市としては小さいが、かなり大きく活気に満ちていた。しかし、大きな路地から逸れた先には生気を失った目をした者たちがいた。


二人は都市で旅路に必要な食べ物などを買い、早々と東へと向かった。

「タヴォール、感じてるか?」

急いでいるには理由があった。

「ああ、この感じ…まさか」

「私の時と似ているが、故意的に使われている感じがする。急いだ方がいい、今日中に目的地まで行くぞ」


彼女たちがいた時代では乗り物といえば一輪型のバイク兼飛行ユニットだった。しかし、今は馬車とあった馬を利用していた。単独の馬とほぼ変わらない移動を彼女たちはおこなえる。


都市を颯爽と出て、彼女たちは走り向かった。本当は都市内で情報を集めたりし、その場所について聞き込みなどするつもりだったが状況が変わったため瞬時に向かった。


タヴォールの戦斧がある場所に迂回などせず直線で向かっていた。途中、亜人族やモンスターを追いかけられたり、攻撃されたりもしたが彼女たちはするりと避け、走りは止まらなかった。



その後方から、獣人族の黒豹種の男が必死について来たことには気づいてはいなかった。

「きっつ、あいつらマジ追いつけない。それに直進て…アホか」

ぶつくさとぼやきながら、それでも二人を追っていた。

この黒豹種の獣人はタマキ・シラタキである。小人から獣人へと身体を変化させたのだ。

「あの巨人族っ!こんなに長時間この速度維持するとか化物かっ」

タマキ・シラタキは毒を吐きながらも高速で追いかける様は黒い影が動いているようだった。忍者特有の気配消しと特殊な移動法によって彼を感知する者はいなかった。

「クソが!スピード上げやがった!しかも向かってる方向からしてなんだこのヤバイ気配…?」



ツェリスカたちは空間振動を感知していた。蛮神が召喚、形成される際に空気ではなく存在を震わせる。そして、それを感知するには戦場に長くいた彼女たちには馴染み深く、感知できなければ死に直結する世界にいたからだ。


「はぁ〜私、素手で戦わないといけないのかな…」

「自分の不始末が巻き起こしてる事なら、自分でケリをつけるならそうだろう?」


彼女たちは岩山が入り組んだ自然の要塞ともいえる亜人族の都市付近にある高台にきていた。亞人族の都市は岩山を繰り抜いているのか全体の規模がどのくらいのものかは把握しづらく、固い岩盤を砕きその中に生活している。しかし、岩をくり抜くだけではなく外側に鉄鋼技術を扱ったバルコニーや岩山と岩山を繋ぐ橋も作られていた。

「ツェリ姉さん、戦斧の場所はこの地下っぽいんだけど」

「ああ、地下の方からだな…問題はどこから地下に行くかだが…」

 ツェリスカとタヴォールは都市を見て、普通に潜入して地下への入り口を見つけた所で戦斧を取り返したとしても脱出するまでの事を考えるとリスクが高すぎると感じたからだ。


 亜人族はツェリスカたちと比べると同じくらいかそれ以上に大きい。そのため、潜入しても身体の大きさがネックになりにくい。しかし、亜人族の本拠地である都市部であるため容易に潜入したとしても戦斧を持ち帰るとなると別問題だ。

「潜入は出来ても脱出は難だな」

「えっ、取り返したらすぐに逃げればいいじゃん」

「私がこれを取り戻した時の話をしただろう、お前に同じ事が起きたら正直、厳しいぞ」

 バヨネットハンドガンをトントンと叩きながらタヴォールに言う。

「しかし、この気配の異常さ…街の住人は気づかないのか?」


 二人は一旦観察をし、情報をまとめ作戦を考える事にした。しかし、街の様子と見るとどうやら慌ただしく、異常な気配が地下から溢れ漏れ出していた。

「何かヤバイよねこれ?」

 タヴォールが冷や汗をかきながら、ツェリスカに問いかける。


 街の中心部付近、地面に亀裂が入り、そこから赤黒い光が淡く漏れだしていた。街中の人は悲鳴を上げ、混乱状態に陥っているのが遠くからでもはっきりと見えていた。数分も立たない内に亀裂が大きく裂け、そこから巨大な手がぬるりと出て、地面を掴み赤黒い肌をした者が這いずり出てきた。


 姿形こそは、巨大な赤ん坊だがその赤ん坊の口の中からぬるりともう一つの顔が出ていた。その顔はそこに住まう亜人族に似ているが、より獣らしさが際立ち、目はギョロリと猛禽類の細い線が縦に入っていた。

 また赤ん坊の目が開くとそこから大きな角がメキメキと音をしながら生えてきた。生え際に赤い血色の液体がまるで涙のように流れていた。


「なんだあれは…」

 今まで見たこと無いタイプの蛮神型だった為、ツェリスカは思わず言葉を口から疑問の言葉を出していた。

「ツェリ姉さん、あれ…蛮神の中から進化してる感じがするよ?」

「ああ、私もそう感じる…だが、力が足りなくて中途半端に感じる。そこまで脅威には感じないが…何か妙だ」


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