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女社長、転生したら3年で潰れる貧乏領地の令嬢だった 〜現代知識で立て直す異世界経営〜  作者: 冬馬


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国を利用してやる

「商品の監査と保証を国でやっていただきたいのです」

「売りもんの監査と保証を国で!?」


へイザーが、うるさい反応を見せたが、

ギルバートは黙って、静かに考えている様子だった。


「別に、国中の商品全てってわけじゃないわ、

申し出があったものだけで構いません」

「その意図は?」


これまでと打って変わって、鋭い声色でギルバートが問い返してきた。


「ジャガイモは、数ヶ月前までは毒イモと忌み嫌われていました。

実際に、死者を出した農作物ですから」


この発言に、お父様は悲痛な表情を浮かべていた。

それでも、私は続けた。


「ですが、正しい処理を行うことで、今では領民のお腹を満たし、

領外から、わざわざ買いに来る人までいるものになりました」

「正しい知識がないと扱いきれないものを、

売るための保証がほしいってことですか?」

「売るためではなく、買うための保証です」


ギルバートの目が一瞬見開き、身体がこちらに乗り出してきた。


「私が良識のある人間だから良かったけど、

ヴェルデンイモをちゃんと処理せずに、売っていたらどうなりますか?」

「集団食中毒に⋯⋯でも、それだと信用が無くなって次はありません」

「それは、正常な人の考えです」


眉間にシワを寄せるギルバート。


「ただ、そうなると全部の商品をするべきだとなりますが」

「理想はそうですが、今の段階では差別化のためです」

「リズ、差別化というのは?」


ずっと黙っていたお父様が、我慢できずに聞いてくる。


「例えば同じパンがあったとして、片方はなにもなし、

もう片方に、国が監査・保証している印があったらどっちを買いますか?」

「印が付いている方だな」


ギルバートとへイザーも、小さく頷いていた。


「もし、印がないのが100イェンで、

ある方が、150イェンだとしたら?」


一呼吸置かれ、


「状況によるが、ある方を買うな」


へイザーが答えた。


「なんとなく言いたいことはわかりますが、

国がそれを行う利が見当たりません」


ギルバートの問いは至極真っ当だ。

そんなもん、売る側がしっかりやれば良いと言いたげそうな目をしている。


「申し出た商品の売上の2%を、毎年納めるとしたらどうですか?」

「!?」


眉を一瞬動かし、わかりやすい反応をした。


そりゃそうだ、さっきまで売上の数%の税でやり合ったばかりだから。


「シードルであれば、現状だと120万イェンですかね」

「そこまでする理由は?」

「新しいものというのは、簡単には受け入れられないものです。

なので、その障壁をなくすための投資です」

「シードルは順調に売れているように見えますが」

「ここら辺ではそうですが、今のまま北部や東部に持っていって、

同じように売れるかはわかりません」


多分売ることは出来る。

だけど、時間と人が掛かってしまう。


「国の威光を金で借りたいと?」

「そこは、お好きなように捉えてもらって構いません」


フフンと鼻を鳴らして、ギルバートが深く座り直した。


「悪くはないし、面白い話ですが――」


なにが引っかかっているんだ?


「申込みの数によっては、部署を新しく作らないといけないのと、

不正や問題が起きた場合、それは誰が責任を取るか」


ギルバートの抜け目のなさに、頭が下がる。


「申請時に、10万イェンを支払うのではどうですか?」

「なるほど、敷居を上げることでふるいにかけると、

だけど、低すぎませんか?」


途中からへイザーが全く話についてこれずに、

私とギルバートの顔を往復させるだけだ。


「高すぎると、単価が安い商品はやりませんと言っているものです」

「リズお嬢様が言う差別化なら、単価の低いものは切り捨てるべきでは?」

「物の善し悪しは、価格で決まるわけではありません」

「とは言っても、利用する価値を見出す人が居るかが問題です」


私だけの利用なら、形骸化するだけの仕組みだし、

そもそも、作られもしないだろう。


「まぁはじめはうちだけになるかも知れませんが、

1年もすれば、処理しきれない数が来ることになります」


自信に満ちた笑みを、ギルバートに返してやる。


「不正と問題の方はどう処理されます?」

「申込時に、所在等を明確化と、責任は申込み側としますが、

国側でも、徴収した全体の1割程度は保証のために積み立てておいてほしいです」

「なるほど、本当に面白い仕組みだ」


お父様とへイザーを蚊帳の外のまま、

私とギルバートで、話が盛り上がり続けた。



「いや~、税務調査に来たというのに、

面白い話が出来て、大変有意義な時間を過ごせました」


1時間近く話し合い、それなりの形にまとまったと思う。


「ある程度話が出来る文官様で、こちらも助かりました」

「商品の監査等に関しては、一度持ち帰って上と話し合って揉む必要があります。

もしかしたら、また話を聞きに来るかもしれません」


なぜか楽しげな様子だ。


「それでは、私たちはこれで失礼させていただきます」


2人を見送り、応接室にお父様と2人になった。


「リズ、商品の監査を国に任せるとはどういうことだ」

「ギルバートが言っていたように、国の威光をお金で借りるための、

ただの構造づくりです」

「それだけに、売上の2%を出すのか?」

「申し込んだ商品の2%なので、そこまで痛くありません。

それ以上に受けられる恩恵は計り知れません」


首を傾げ、納得が出来ていないようだ。


「ヴェルデン商団として、シードルに国のお墨付きがついたとします。

それによって、買い手はこう思います――」


お父様はゴクリと息を飲んだ。


「ヴェルデン商団は、国に認められた商団なんだと」


はじめは商団ではなくて、ヴェルデン領として考えていた。


しかも、税を5%以上提示されたときに、

代替案として提案するつもりだった。


「それだけで、ヴェルデンイモや今後売り出す商品も、

買い手は勝手に、国のお墨付きがついていると見ます」


この提案の本当の目的は、錯覚によるブランドの定着の加速化だ。


そして、これを理解出来た人だけが、

この制度の旨味を享受できる。


「年間、売上の2%なら広告費としては安いです」

「広告費?」

「いっ、いえなんでもありません」


やばい、この世界にはまだ広告という文化がなかった。


口が滑って、無駄に冷や汗をかきそうになってしまった。


「それでは、急に商団を作ってしまったので、

やらないといけないことが出来ましたから、戻ります」

「あぁ、負担を掛けるが頼む」


背中に掛けられた言葉は、どこか弱々しかった。



商団の運営なんて、セバスに聞いてわかるかしら?


「ぶっちゃけ、商人と商団の違いも理解できていないんだけどな」


ブツブツとつぶやくと、


「バーカス様にお聞きになられるというのはどうでしょうか?」


アシュがその答えを教えてくれた。


「そうね、その通りよアシュ!

餅は餅屋に聞くべきよね」

「もち?ですか?」


アシュが不思議な顔をしているけど、

気にしないで、部屋へと戻った。


最後までお読みいただきありがとうございます。

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