襲撃12
GC.118.11.20 17:42
艦橋の空気が一瞬、張り詰めた。ユナのモニターに、機関区からの通信信号が点滅する。
「艦長、通信です。発信者不明、声だけのようです」
タリアンは深呼吸し、冷静な声で応答する。
「こちら《アストラル》艦長だ。名乗れ、誰だ」
不意に低く、威圧的な男の声が艦橋に響いた。
「お前らの船、明け渡せ。さもなくば…女を殺す」
ユナは指を止め、目を見開く。
「艦長、リサを人質に取ったようです。要求は艦の明け渡しです」
タリアンは眉をひそめる。モニターに映る座標は機関区内の一点。冷静な声で返す。
「ふむ、そうか。聞いたぞ。だが、お前らの要求は受けられん。艦を渡すわけにはいかない。どんなことがあっても、だ」
艦橋のクルーの視線が一斉にタリアンに向く。静寂の中、ユナは淡々と状況を報告する。
艦長、いきなりそんな強気でいくんですか?ユナは驚いた。
「発信源は機関区の単独です。複数からの通信ではない模様。」
海賊の声が再び響く。声には苛立ちと焦りが混じっていた。
「いいか、船をよこせ!さもなくば人質を――」
タリアンは静かに口を挟む。
「何度も言わせるな。この艦は渡さない。」
ユナはモニター越しに、発信機の位置を微調整しながら応答信号を確認する。
「艦長、ビーコン発信源は確実に機関区内です。」
タリアンは艦橋クルーを見回し、低く指示する。
「まず間違いなく強襲艇はどこかに隠れているな。だが優先するのはリサの救出だ。なに、奴らにとって人質は命綱だ。簡単には殺さないさ。」
タリアンはモニターを睨みつけ、ゆっくりと艦橋の中心へ歩み寄った。周囲の視線が自然と集まる。彼は一度大きく息を吐き、低く言った。
「こいつらの声、途切れてるな。――よし、通信機のトラブルという事にしよう。向こうの要求をいったん受けて、機関室扉の前で交渉するぞ。その方がやり易い。どちらにしても荒事になるのは間違いなさそうだからな」
ユナの手がマイクの横で止まる。わずかに眉を寄せるが、タリアンの目から揺るぎない意志を読み取って黙する。
タリアンはゆっくりとマイクに向き直り、冷静な声で航路を通すように語りかける。
「こちらアストラル。通信にノイズが混じっている。今、受信に不具合が出ているようだ。お前たちの声が聞こえなくなった。交渉は継続したい。こちらからは1名を扉の前に向かわせる。そこで直接交渉でどうだ。分かったか?」
受話器の向こうから、焦ったようなざわめきが返る。タリアンは相手の言葉を遮るように、低く付け加えた。
「こちらは直ちにラインを切る。話すなら扉越しにするぞ。ノイズのせいでお前らの声がよく聞こえない」
GC.118.11.20 17:55
タリアンは片手で通信ラインを切った。モニターの通信インジケーターが一瞬のうちに暗転する。艦橋に静寂が落ちる。わずかに増した緊張。
タリアンは振り向き、艦橋を見渡してから、そっとイグナスに声を掛けた。
「イグナス、海賊供との交渉頼む。もし何かあったら臨機応変に対応しろ。ユナは後方から支援を頼めるか」
イグナスとユナは一度まっすぐにタリアンを見返し、短く肯く。
タリアンはユナにライフルを手渡す。
「はい、艦長」ユナの目は静かに光る。艦橋の空気は緊張の中に、決意の光を帯びていた。
イグナスとユナは金属床を静かに踏みしめながら、機関室前まで進む。周囲には戦闘の跡が点在し、破片や斑点の血が床に散っている。手早く周囲を確認し、配置に着き、武器を軽く握り直す。
「通信は繋がってるか?」イグナスの声は低く、艦橋にも届く。
タリアンは頷く。
「問題ない」




