ありがとうございます
「さあ、玲は疲れただろう。休んでいたらいいよ。」
先輩がそう言って、お茶を進めてくれる。
その台所、私よりも勝手知ったる台所になっていませんか?
ふとベランダに立つ西海を見る。
「パンツまであらって・・・」
洗濯干しに干された私のパンツが笑っていた。茶色のボクサーパンツといえば聞こえがいいが、実際はズロースと言った方が正しいようなベージュのパンツが笑っていた。
「たたむからどいて。」
西海、笑顔で言わないで。
色気のないパンツですみません。可愛いパンツ、ヘソ見えて…股上短くて苦手なんです。ほら、腰冷えるでしょ……あまりに女子力の低い言葉が脳裏をよぎる。
「いいえ、結構です。」
「布団とおるぞ。」
西海に頭をはたかれる。
「邪魔って、私の家ーー。」
だんだん本音が口に出る。
ああ、お酒に失敗して西海をひっかけ、なんで先輩まで。
涙が出ます。
こうして片付けの一日は終わった。
結局、仲良く夕食を食べて…気がついたらベットの上で寝ていた。
リビングで声がする。
「悪いな。」
西海の声がする。
「いや、俺にできなかったことだから。いいんだ。」
先輩?
何が「悪く」て「いいんだ」?それ以前に、この家私に家なんですが、ビール飲んでくつろぐってどういうことよ。
「玲、起きたのか?玲も飲むか?」
西海、その親しげな態度はなんだ。
何度も思うが、西海とはあの日を含めて三回目しか会っていない。
先輩だって職場は同じだが、個人的な話をしたのは西海との出会いがあってからなのに…
この親しさ。外では鉄壁の才女を演じているのに…鉄壁にどでかい穴が空いてきている。
こんな疑問を思い浮かべつつ勧められたビールを飲み干す自分は流されているのだろう。結局、適度に三人で酒盛をした後、礼儀ただしく二人は帰ることとなった。
「ありがとうございました。」
深々と頭を下げる。
部屋の片付けをして欲しくなかったなんて、パンツまで洗わなくて良かったのになんて、こんなに片付いた部屋をみると大人のたしなみでいえない。
「いいよ、玲のかわいいのみれたし。」
先輩の感想。
なんですか、かわいいのって、のびきったパンツみただけでしょ。
「やっぱり元気だな。」
西海の言葉。
いや、普通の反応かと。
「あの・・・これ。」
それでも大人の私は二人に紳士売り場で見つけたネクタイを渡す。
ネクタイってよくわからない。
先輩は青系の、西海は黒系の、適当に選んだというか前に飾ってあったものを買っただけ。
けれど二人の顔を見て後悔した。
こんなにうれしそうな顔されたら・・・
真剣に選べばよかった。
「ありがとう。」
先輩、ネクタイなんかいっぱい持ってるだろうに。
「すまないな。」
西海、照れ臭そうな顔やめて。その顔なら女からのプレゼントなんて山のようにもらっているでしょう。
二人が帰った後の部屋は静かで、いつもより広く感じた。
そして携帯を開くと兄からのメール。
「どっちか一人にしとけ」
どっちか一人って…メールは続く。
「次の休み帰って来い。」
あんなところで出会って、兄と父にもプレゼントを買って渡さないといけないかと思うと、実家に帰らないといけないかと思うとため息が出た。
面倒臭い。
どれぐらいの長さで投稿するか悩み中です。今にところ原稿用紙2、3枚で投稿中ですが短いですか。




