時間
兄からのメールに嫌気がさし、ついに私は実家で夕食をとることになった。
仕事も終わり、普段なら残業かジムに足を運ぶところを、さっさと家に帰る支度をする。
「東山さん、今日は早いんですね。」
事務の女の子が声をかけてくる。
「たまにはね。」
にっこりと笑顔で返す。
イヤイヤながら外に出ると、案の定兄が車を事務所の駐車場に置き待っていた。
事務所から出てくる人の視線がいたい。
こいつは兄ですーー
叫んで回りたい。
「時間通り。」
約束時間より10分も早い、自宅ぐらい歩いてでも帰るのにわざわざお迎え。
兄が助手席のドアを開けてくれる。
見られているのを分かっていて、周りに見せつけている。
やめて欲しい。
そして兄が運転する車に乗ると寝てしまう自分が情けないと思いつつ、睡魔に襲われてしまった。
嫌な夢を見た。
高校まで女子の学校に通っていた。
男には免疫なし恋にも興味が出るのが遅かった私、たまに学校がえり告られてもふざけてるぐらいにしか思えなかった。
大学入学ー世界は一変した。
同じ業界に入ろうとした私に父は、今までのお姫様扱いから、同じ業界に入るからには兄と同じだけの成果を期待された。
正直、認められて嬉しかった。
兄は相変わらず、滅茶苦茶だったけれど充実していた。
けれど、その反面、女友達と思っていた人から「ぶりっ子」「彼氏をとられた」「兄を紹介しない」……わけのわからない非難を受け、男友達と思った人からは告られまくり付き合えば「顔に似合わずきつい」「一人で大丈夫」と言われる。
とにかく人間関係で苦労した。
何時の間にか壁を作りクールな才女を気取ることで冷たく断ることを覚えた。
そして…
バカすることを忘れた。
「玲、着いたぞ。」
兄に肩を揺すられる。
久しぶりに自宅に帰ると父と母が出迎えてくれた。
他愛ない会話、きっと兄も久しぶりに帰ってくるのだろう喜ぶ母の顔にほっとする。
けれど、子供の頃のように無邪気に甘えることは出来なくなった私がいた。
家族の会話の中で、時折交わされる父と母の笑顔に二人の関係が羨ましくなった。
「今日ぐらい泊まっていけばいいのい。」
母が言う。
「明日、仕事早いから。」
「聖も家から通ってるはずなのに帰ってこないことばかりだし、寂しいわ。相変わらず聖は玲のことになると心配症だし。この前、男の子と歩いてたの見たって言ってたわよ。お酒飲みながら母さんに愚痴られてもね。でも愚痴だけで嬉しそうなところをみると、今回の子は聖にとって合格なのかもしれないわね。」
母にまで先輩と西海のことを話していたなんて。
食事中は、そんな話出てこなかったのに。
「ま、貴方も、もう大人だし。たまには帰ってきなさいよ。」
そう言って母は送り出してくれた。
昔は、お稽古事や片付け勉強、全てに口を挟んでいたのに…時間を感じた。




