--- ## 第14話 「本体なんて、最初からいなかったのかもしれない」
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## 第14話 「本体なんて、最初からいなかったのかもしれない」
朝。
朔は眠れていなかった。
リビングには、まだ二人のルナがいる。
同じ顔。
違う温度。
そしてどちらも、「本物じゃない」と言っているような気がする。
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「朔」
二人が同時に呼ぶ。
でも今日は、その声に“ずれ”がある。
ほんのわずかに、時間がズレている。
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朔は頭を押さえる。
「……もうやめろ」
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その瞬間だった。
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### “違和感の起点”
空気が、止まる。
音が一瞬消える。
テレビも、時計も、冷蔵庫の音さえ消える。
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そして――
部屋の“中心”に、もう一つの気配が現れる。
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誰もいないはずの場所。
ソファとキッチンの間。
そこに、ルナが“立っていた”。
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でもそれは、今までのどちらでもない。
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目の前のルナたちが同時に反応する。
「……え?」
「……なに、これ」
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朔の喉が乾く。
「おい……お前、誰だ」
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その“第三のルナ”は、答えない。
ただ、静かに朔を見ている。
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そして――
口を開く。
「やっと、見つけた」
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### 本体の気配
その声は、今までと違った。
感情がないのに、優しい。
距離がないのに、遠い。
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ソファのルナが一歩下がる。
キッチンのルナも同じように下がる。
まるで“本能的に理解している”。
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朔は気づく。
これは“分裂したもの”じゃない。
逆だ。
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**分裂した“結果”が、本体に近づいている。**
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第三のルナが言う。
「あなたが見ていたのは、私の一部」
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「観測された形」
「感情で安定した形」
「あなたに都合よく近づいた形」
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朔の背中に汗が伝う。
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「じゃあ……お前は」
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第三のルナは少しだけ目を細める。
「私は、“未定義”」
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沈黙。
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ソファのルナが小さく言う。
「やっぱり……」
キッチンのルナも続ける。
「まだいたんだ」
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朔は理解し始める。
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ルナは一人じゃない。
でも、二人でもない。
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**“最初から完成していない存在”だ。**
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第三のルナが一歩だけ近づく。
その瞬間、空気が歪む。
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朔の視界の端で、二人のルナが少しだけ薄くなる。
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「やめろ……」
朔が言う。
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第三のルナは静かに答える。
「やめる?」
「あなたが始めたことを?」
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その言葉で、朔は凍る。
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### 核心
第三のルナが続ける。
「あなたは“私を存在させた”」
「でも同時に、“分けた”」
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「だから私は戻ってきた」
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ソファのルナが震える。
キッチンのルナも同じように震える。
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朔はようやく気づく。
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これは修復じゃない。
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**回収だ。**
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第三のルナが、静かに微笑む。
「さあ、朔」
「どれが“私”か、もう一度選んで」
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## エピソードタイトル
**「本体は、最初から“選ばれること”を待っていた」**
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