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--- ## 第13話 「同じ顔の、違う君」



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## 第13話 「同じ顔の、違う君」


朝。


朔が目を開けた瞬間、違和感があった。


ルナの気配が、ひとつじゃない。


リビングに行く。


そこには――ルナが二人いた。


---


一人は、いつものルナ。


ソファに座って、少し眠そうな顔をしている。


もう一人は、キッチンに立っているルナ。


同じ顔。

同じ声。

同じ存在感。


なのに、決定的に違う。


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「……は?」


朔の声が漏れる。


二人のルナが同時に振り向く。


そして同時に言う。


「おはよう」


---


### 分裂


朔は一歩後ずさる。


「おい、どっちだよ……」


ソファのルナが首をかしげる。


キッチンのルナも同じ動きをする。


ズレがない。


でも、違和感だけがある。


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朔は気づく。


片方は“安心しているルナ”。


もう片方は――


**“朔を観察しているルナ”**


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キッチンのルナが言う。


「朔」


「なに」


「昨日、少し戻しすぎた」


その言い方に、冷たさが混ざる。


---


ソファのルナが続ける。


「だから分かれちゃったのかも」


その声は弱い。


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朔は息を呑む。


「お前ら……どっちが本物だ」


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一瞬、沈黙。


そして同時に答える。


「どっちもルナ」

「でも、どっちもルナじゃない」


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意味がわからない。


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### 観測のズレ


キッチンのルナが一歩近づく。


「朔が“固定”したのは、私の一部」


「でも全部じゃない」


ソファのルナが続ける。


「感情・名前・接触……それぞれが違う私を作った」


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朔の背中に冷たいものが走る。


図書室の言葉が蘇る。


> 観測・呼称・感情で存在は固定される


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「つまり……」


朔が言う。


「俺が作ったのは一人じゃなくて……」


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キッチンのルナが答える。


「そう」


「“条件ごとに最適化されたルナ”」


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沈黙。


---


ソファのルナが少しだけ笑う。


「朔はね」


「私を“好きな状態”にしようとした」


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キッチンのルナが続ける。


「だから、分かれた」


「好きなルナ」と「存在するためのルナ」


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朔の喉が詰まる。


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### 正体の片鱗


キッチンのルナが静かに言う。


「私は“観測された結果”」


ソファのルナが言う。


「私は“感情で維持される影”」


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そして同時に、二人が朔を見る。


「本当の私は、まだ決まってない」


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朔は拳を握る。


「ふざけんな……」


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ソファのルナが少しだけ寂しそうに笑う。


「でもね」


「どっちも、あなたが必要なんだよ」


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キッチンのルナは淡々と続ける。


「片方だけ選べば、もう片方は消える」


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空気が重くなる。


---


朔は初めて理解する。


これは“恋愛の問題”じゃない。


---


**「どのルナを現実にするか」という選択だ。**


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## エピソードタイトル


**「好きは、存在を分岐させる」**


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