表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生少女は魔法の世界を『漢字』の力で生き抜きます  作者: 灰猫さんきち
第3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/44

39:ドラゴン解体ショー

「毎度おなじみ、『爆』ッ!」


 ちゅどーん!


 午後の岩場に爆発音が響き渡った。


 ガラガラと崖が崩れる音がする。

 果たして砂埃が収まった後には、崖にぽっかりと穴が空いていた。


「プリムローズ! いきなりやるな! 巻き込まれると思っただろうがっ」


 シルヴァは文句を言って、ヴィオラは驚きのあまり尻もちをついていた。

 ロバはもう卒倒しそうな感じで震えていて、唯一動じていないのはコタローだけだ。

 ちゃんと距離を取って爆破したので、危険はないのに。


「えー? 大丈夫、そんなヘマしないから」


 瓦礫の向こう、作りたての洞窟は縦横二メートル、奥行きは三メートルくらいか。

 ドラゴンの大きさと遮光性を考えると、もう少し深さがあってもいい気がする。


(もう一つ『爆』を使ったら、ちょっと威力がありすぎるかな?)


 洞窟拡張に良さそうな漢字を考える。

 最初に思いついたのは、『硬』を自分に使って素手で岩盤を掘ることだ。

 あの硬さを考えれば不可能ではないと思う。

 でも今は割と霊珠の数に余裕があるので、ちょっと変わったことをやってもいいかもしれない。


「『砂』」


 触れた部分が砂に変わらないかと期待してみた。

 しかし。


「あら……駄目か」


 手のひらの霊珠から砂が生まれてこぼれ落ちるだけで、思ったような効果にはならなかった。

 でもさらに一つ思いついて、『砂』の霊珠が砕ける前にさらにもう一つ。


「『化』!」


『砂化』。さあ、これでどうだ!


 二つの霊珠を握り合わせて、密着させる。それぞれの霊珠が光を放った。

 すると握った拳が触れた岩盤が、さらさらと砂に変わっていくではないか。


「やった、成功!」


 私はガッツポーズを取った。


「何でもありだな、お前は……」


 シルヴァがドン引きした顔になっている。

 反対にヴィオラは興味津々だった。


「プリムローズの霊珠は、いわゆる魔法とまったく系統が違うのですね。私の知っている魔法は火を起こしたり風を操ったり、雨を降らせたり、神々がこの世を運営する力を小さくしたようなものばかりです。それが貴方は、自由な発想の元に何でも行っている。岩を砂のように砕く神など聞いたことがありませんから」


「え、そうなの?」


 なんかこう、分子分解的な力を振るう神がいてもいいと思うのだが。

 私が首を傾げると、シルヴァはジト目で続けた。


「確かに……。こいつの霊珠はひどく概念的だ。文字そのものが意味を持つせいなのか、何なのか」


 概念的ときたか。

 霊珠は名詞や動詞、形容詞によって効果の持続時間などが分かれるが、どれも直感的に使えるものばかり。

 それはそうだろう。前世での母語だったのだから。

 むしろこの世界の魔法を良く知らないので、比べようがないとも言う。


「プリムローズ、その霊珠をちょっと貸せ」


「ほい」


 二つの霊珠をシルヴァに渡すと、彼は興味深そうに見やった。


「この魔力の流れ、僕の知っているどんな神のものとも違う。やはり通常の属性ではない……」


 呟きながら岩壁に手を当てると、岩は砂に変わった。

 シルヴァが目を見開く。


「何!? プリムローズ本人ではなく、僕も使えるのか? そんな馬鹿な」


 シルヴァは手を岩壁に滑らすと、くるりと振り返った。


「ヴィオラ。お前もやってみろ」


「私は魔力持ちではありません。さすがに無理でしょう」


「試すだけだ。やってくれ」


「はあ」


 ヴィオラは首を傾げながら霊珠を受け取って、岩に手を押し当てた。


「あ……!?」


 驚きの声が響いた。

 ヴィオラの手も岩壁を砂に変えたのだ。


「私が魔法を?」


 彼女は信じられないものを見る目で砂に変わっていく岩を見ていた。


 と。


 パキン、と澄んだ音がして二つの霊珠が砕け散った。


「時間切れみたい。砂は名詞、化けるは動詞だから、あまり長い効果ではないの」


「ふむ、そうだったな。しかし前にお前が『水』を出した時はもっと早く消えたし、『浄』などはほとんど一瞬の効果だったが」


 シルヴァが顎に手を当てて考えている。


「確かにそうね。二つ以上の霊珠を組み合わせると、多少時間が伸びる気はする。それにドラゴンの時のシルヴァの杖は、ただ握り合わせるより効果がアップしていたと思う」


「……早急に次の杖を作らねばならんな」


 シルヴァは改めてやる気に満ちた顔になった。





 さて突然ですが、ここでプリムローズちゃんによるドラゴン解体ショーを開始します!

 マグロ解体ショーのノリでお楽しみください!

 まず用意するのは、二つの霊珠。


「『刃』、『鋭』!」


 ドラゴンの体は固いですからね。

 冷凍すれば脆くなるといえど、カチコチなので固さ自体は増しています。

 刃一文字だけでは切れるかどうか不安だったので、『鋭』を足しました。

 鋭利、鋭い。これならば刃の切れ味を底上げできる上に、形容詞なので持続時間もアップです。


 刃は放っておくと私の身長と同じくらいのバカでかさになってしまいます。

 なのでぐっと意志を込めて小さくします。

 とはいえ、獲物はドラゴンですから。包丁の大きさでは刃が通りきりません。

 取り回しやすくドラゴンを切り刻むのにちょうどいい、竹刀くらいの長さにしておきます。


「このドラゴンは内臓がごっそり爆破されているので、解体するのにちょうどいいですね」


 実況風に独り言を言うと、シルヴァにドン引きの顔をされたけれど気にしないでおきましょう。


 ドラゴンの体の構造を良く見てみると、四つ足ではあるのだが鳥に近い部分もありますね。

 爬虫類は鳥類の親戚。

 ということは、ドラゴンも鳥に近いのかもしれません。


 鳥と言えばニワトリ。ニワトリの解体なら任せてください!

 前世の職場を思い出して、スピードクッキングといきましょう!


「えいっ!」


 まずは刃を大きく振るって、尻尾を切り落とします。

 さすが『鋭』の『刃』、素晴らしい切れ味です。

 尻尾は私の胴体の何倍も太いですが、根本の骨の継ぎ目を狙えばきちんと切り落とせます。


「とうっ!」


 次は足をバラします。

 四肢の付け根に軽く切れ込みを入れて、肉を開きます。

 骨の位置を確認したら、関節部をカット。

 おっと、ウロコの下はなかなか柔軟で強靭な皮がありました。鶏皮みたいで美味しそうですね!

 こちらもしっかりと切り離します。

 四つ足の他に二枚の翼がありますので、こちらも落としておきましょう。


 次は胴体です。

 お尻の方と頭の方から刃を入れて、半身下ろしにします。

 骨はさすがに固いので、骨から身を外すようにして下ろしていきます。


「ううーん。骨格もやはりニワトリに似ている気がします。こんなに体格がいいから、骨は丈夫ではありますが……」


 お腹は吹き飛ばしてしまったけど、胸骨の形が独特です。

 鳥類の大きな胸骨は竜骨突起とも言われていて、羽ばたいて飛ぶための筋肉を支える重要な骨でもあります。

 このドラゴンも翼で飛んでいたので、筋肉は発達していますね。

 もっともこの巨大な体が翼だけで飛ぶのは信じられないので、魔法っぽい力もあるのでしょうが。


 さあ、さくさく進みますよ。

 大きな頭をゴトリと落とします。

 長い首は体に付けたまま、次の作業へ。


「あっ! ササミらしき部位がありますね!」


 半身に下ろした胸の中央に、半月形のお肉を発見しました。

 これはササミで間違いないでしょう。

 胸部の肉と骨から外しておきます。


 本当はこの後ももも肉や胸肉をきちんと解体して成形するのですが、さすがにドラゴンは大きすぎるし、カチカチに冷凍されているのでやりにくいです。

 とりあえずここまでにしておきましょうか。


「というわけで、ドラゴン・クッキングならぬドラゴン解体ショー。以上を持ちまして一度終わります」





 半身下ろしにされ、四肢と頭と尻尾を切断されたお肉の前に立ち、私は手を広げた。

 深々と礼をしてみせる。

 ヴィオラが手を打ち合わせた。


「迫力たっぷりでした。素晴らしい!」


「ミャオ!」


 シルヴァはドン引きのままだったが、ヴィオラとコタローが称賛を送ってくれた。

 なおロバはドラゴンの血の匂いに当てられて卒倒していた。




読んでくださってありがとうございます。

少しでも「面白そう」「続きが気になる」と思いましたら、ブックマークや評価ポイントを入れてもらえるととても嬉しいです!

評価は下の☆マーク(☆5つが満点)です。よろしくお願いします。

既にくださっているかたは、本当にありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ