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俺は冴えない(没ver)  作者: 田舎乃 爺
第二章 ドタバタ親子道中
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32 女王様は今日もお元気です

 大変気持ちよく眠りに入ってから数時間。今もとても快適に眠りについている。ベッドもそれなりにふかふかで温かな一人きりの空間は最高だ。 

 ここから起きれば色々とややこしいことが待っている現実に直面せねばならない。何にも縛られず、何を気にする必要もないベッドの上から離れたくない。いっそのことベッドごと移送してほしい。

 朧気に意識がある今のような浅い眠りが最も心地よく、同時に最も名残惜しく思うのは俺だけでしょうか。この絶妙なフワフワした感覚。たまりませんよ。



「――んっ」



 そんなことを考えていれば、一緒にベッドで美女が寝ているという欲望にまみれたシチュエーションが構成されてまいりましたよ。男の子だったら一度は妄想し、興奮したことはあるはず。

 ぽかぽかと温かな体温を再現しているだけでなく、肌の柔らかさも再現しているとなるとこれはかなり完成度の高い夢なのだろう。理想郷おっぱいも完全再現なのだから、そうに違いない。



「ふぅうん……! サクぅ……!」



 いい喘ぎ声でしょう? 余裕の色気だ。触り心地が違いますよ。ここまで完璧に再現してもらえる自分の妄想力が怖くなってきてしまったよ兄弟。どこに兄弟がいるか分からんし、いないけど。もう自分でも何考えてるか理解不能です。

 


「声がっ。ふあぁう!?」



 かなり派手な喘ぎ声。恐らく少し硬くなり始めてる部分をつまんでしまったからびっくりしたのだろう。サクは指先の感触と大声でこれが夢ではないことをようやく察することができた。

 恐る恐る目を開ければ、自らの右手はほどよい大きさの胸を鷲掴みにしていた。視線を上げていくと頬を赤らめて切なそうにこちらを見つめてくるレーナの顔がある。

 女王様がこんな大胆なことをしてもよいのですか。そんな当たり前な驚きによって徐々に意識が覚醒していくサクに対し、レーナは艶めかしくつぶやいた。



「サクのエッチ」


「だああああぁぁぁぁぁ!!」



 叫んだサクは胸から手を離し、ベッドから飛び上がって部屋の壁にまで凄まじい勢いで退避していった。右手には生々しい感触とほんのりとした温かさが残っており、何とも言えない香水のようないい香りが漂っている。

 真っ赤になっているサクをその肌とは正反対と言える純白の下着姿のレーナはベッドの上で爆笑していた。予想以上の慌てっぷりがツボに入ったようである。

 こういったお目覚め悪戯には慣れていないし、何よりもそれを仕掛けてくるのが一国の女王というから心臓に悪い。煩悩的には最高なのだが、もしも流れに身を任せてしてしまったらどうするつもりなのか。というかそれを狙っている気がしてならない。

 気が動転したサクの鼓動が治まる気配はなく、ムスコも縮まりそうにない。自らに必死に落ち着けと言い聞かせ、深呼吸をしながら笑い過ぎて苦しそうにしているレーナに話しかけた。



「楽しそうだな、レーナ」


「そ、そりゃサクがあんなに派手にっひひ、反応したから。最高に面白くて」


「ああそうかい。ぶん殴ったことを全力で謝まるかと考えてたけど、それはなさそうだな」


「しょうがないじゃない。操られてたんだから。それにしんみりとするのはあたしの性に合わないわ。こうして情熱的に誠意を伝えた方がいいと思って」


「誠意って言っても別の方法がってああ! 止めなされよもう!!」


「きゃ~! サクに襲われちゃう~!」



 にやつきながらおもむろにブラジャーを外し始めたので押し倒すことで制止するサク。もう色々とどうにかなってしまいそうなサクに対し、レーナは無邪気な笑顔を浮かべていた。

 昨晩のように瞳に靄はかかっておらず、正気だというのはすぐに分かった。なのであればもっと女王らしく上品に振る舞ってくれないかと切に願うが、乗りに乗っているレーナがそれを聞き遂げることは万に一つもない。

 肩に手を当てて押し倒したまましばらく見つめあい、サクは思わず息をのむ。いけないと心では考えていても、体はレーナを欲しているかのように火照りが止まらなくなっていた。

 制御不能になりつつある自分自身に戸惑い、何とか正気に戻そうと躍起になる。そんなサクに気づかれぬうちに何食わぬ顔でレーナは手を下腹部へと伸ばしていた。



「ちょいちょいちょい! 待ったレーナ! ストップ、ストーップ!!」


「なあにドスケベサク。真っ赤っかになってるわよ」


「確かに俺はスケベだよ。でもな、違うんだ。何か……、こう……、体がいつもの感じじゃないっていうか」


「そりゃそうよ。あたし全身に男性が欲情する媚薬塗り手繰ってからベッドにもぐりこんだんだから」


「おおぉん!? なんじゃそりゃ!?」


「だってそうでもしないと、サクはあたしのこと女王だからって遠慮して抱いてくれないと思ったからね~」


「だからってこんな方法で……! ああ、ちくしょうめー!」


 

 魔法とか物質は吸収したりできるのに、どうも薬とかに関しての耐性がつかない。そこを上手く利用されてしまった。見なくても分かるぐらい、寝巻の向こうのムスコがとてつもなく元気になってしまっている。

 はっきり言ってすぐにでもレーナを抱きしめたくてしょうがない。欲望に身を任せようとしているサクを押さえつけているのは、僅かに残っている相互意思の確認とこれからのことを本気で考えている紳士の心だった。

 全身から汗が滲み出し続け、苦しそうにしながらも口を開こうとするも体が異常をきたしているためかいつも通り声を出すことができない。気張れと自らに言い聞かせていると、目の前にいるレーナが微笑みを向けてきた。



「こんなになっても、ちゃんとあたしのこと考えてくれるんだね。やっぱり、サクは最高だよ」



 紫色の瞳が持つ能力はサクの思いを読み取ってくれたようだった。それを受け、本当に嬉しいといった感じで浮かべる笑みはいつも以上に美しく見える。

 レーナの両手がサクの頬に添えられ、媚薬だと思われる香しい臭いが鼻を通り抜けていく。理性が吹き飛びそうになったサクにレーナは甘い声で話しかけてきた。



「周囲は人払いしてあるから、どんなに激しくしても大丈夫。それと断言しておくわ。あたし、サクの子供作るためにここに来たから」


「んなっ!?」


「婚約と同時に身ごもれば誰も文句は言わなくなるわ。将来のことは心配しなくていい。あたしに任せておきなさい。さあ……」



 色々ぶっちゃけたレーナは上半身を上げ、サクと唇を重ねた。一瞬だが愛の込められたキスの後、再びレーナはベッドに横になる。そして、最後の一撃をサクに叩き込んだ。



「思う存分楽しみましょ、サク!」


「……ぁあああ、どうなっても知らないからな~!」


「きゃあ~! 狼サクに襲われちゃう~!」


「がおおぉぉぉ!!」



 綺麗に人払いされた来客者用の部屋が並ぶ廊下に獣になった紳士の雄たけびが轟く。平静状態の人が聞けば赤面すること間違いなしな激しくも濃厚な声が一室からは響き渡っていた。

 お互いに愛を確かめ合う2人の声は誰に聞かれることもなく、重要な面会の準備をするまでの2時間ほど続いた。この営みによって目的を達してレーナがガッツポーズをするのは、数か月先のことである。






     ※※






「パパ、どうしたの?」


「……すまん。ちょっと疲れちゃってな」


「大丈夫?」


「大丈夫、じゃないかも。ああ、しんどい……」



 隣の椅子からのぞき込むコウに心ここにあらずといった様子で応えるサク。他の椅子に座るハクたちも疲れ切ったサクを心配してそわそわし続けていた。

 効果が切れた2時間後にすぐさまシャワーを浴びて着替え、お互いに何もなかったかのようにすることを誓って別れた。そして現在、ハクたちと合流したサクは城の2階にある第一応接間にいた。

 謁見の間が使えないので、ここで挨拶とともに例の事柄に関して説明してくれるとのこと。サクたちはやってくる女王一行をフッカフカな椅子に座って待っているのだった。

 本人は大丈夫だと言っていたが、今になってやってしまった感を拭うことができない。変なところが筋肉痛になったりと疲労も重なって、サクは真っ白になりつつあった。

 そんな父を心配そうにコウが見つめていると、勢いよく扉が開かれた。その向こうからは心なしかつやつやしているレーナがテンションMaxで入場し、後からため息交じりにニーアとフィレが入ってきた。

 様子がおかしいレーナを見た瞬間、ハクたちはすぐさま何があったかを理解してしまった。特にその中で先を越されたかとアイリスとカーラが焦りを表情に出してしまっていた。

 それぞれが何とも言えない表情を浮かべる中、サクたちの正面の椅子にふんぞり返るレーナ。その左右にニーアとフィレが立ったのを確認すると、自信たっぷりな笑みを浮かべてレーナは話し始めた。



「ごめんなさいねアイリス、カーラ。もしかしたら先にできちゃうかも」


「なななっ!? 何のことかしら!?」


「いつも通り大胆ですね~」


「ふっふっふ早い者勝ちってことよ」


「ねえママ。できちゃうって何が?」


「さ、さあて。何のことだろうね~」



 答えづらい質問に上手く対応できないハクは苦笑いしながら言葉を濁した。知りたくてしょうがないコウは質問を続け、ハクママはたじろぐことしかできなかった。

 ややこしいことになっているが、それを収めることにもなれない。何とか体に力を込めて前へと向き、とりあえず話を進めるようにとレーナに目で訴えた。

 将来の夫といえるサクのそれを嬉しそうに頷いてレーナは応える。そして場を静めるために咳払いしたレーナに視線が集まるのだった。



「色々と迷惑かけて申し訳なかった。昨日はありがとう。代表して礼を言わせてもらうわ」



 そういって深々と頭を下げるレーナからは、先ほどまでのはきはきとした感じはない。スモークの女王としての威厳が漂わせる女性に早変わりしていた。

 しっかりとした行動を見たコウも質問攻めを止め、きちんと椅子に座る。レーナが顔を上げた時には、応接間に程よい緊張感が漂い始めており、誰もが真面目な態度で話し相手に向き合っていた。



「さっそくだけど、処理を頼んだ事柄についてと重要な協力者について説明するわね。質問は随時受け付けるから、好きなタイミングでどうぞ」


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