幼少期~アークライト~
ありえない!
本当に貴族令嬢としてありえない!!
たった今、目の前の席に座っていた姉が、ガシャンという食器の当たる嫌な音を立てかかと思ったら、スープの皿に顔ごとダイブした。
「フェリア!??」
姉の隣に座っていた母が、悲鳴のような声を上げると同時に、
壁際に控えていた使用人たちが姉に群がる。
しばらくバタバタしていたが、姉はただ爆睡しているだけだったようで、
彼女の専用メイドたちにより自室へを運ばれていった。
~◆~◆~◆~◆~◆~◆~
リドル辺境伯家の次男として生まれた僕は、常に5歳上の兄と比較されていた。
ただ兄は、学問<<<武芸だったようで、体術や剣術では比べられることもあったが
比較的物覚えのよかった僕は、称賛されていた。
双子の姉は、普段からぶっ飛んだ行動をすることも多かったが、
なぜか要領がよく、マナーレッスンや学問などは優れていた。
特に算術に関しては、すでに学院卒業生にも匹敵するほどだと先生たちも驚いていたが、
普段が普段である。
階段の手すりを滑って降りてみたり。
領地の屋敷では、敷地内に引いた小川の中に裸足で入ってみたり。
ついでとばかりに近くにいた僕も川の中に引きずり降ろされてびしょびしょになったし。
他にもいろいろやらかしてくれているので、僕のライバルは常に兄だった。
なのに、母に連れていかれたお茶会で、姉が第二皇子とお近づきになった。
両親は是が非でも我が娘を妃に!っていうタイプでもない。
ただ、僕にはすごい衝撃だった。
だって、あの姉が!
いつもニコニコ笑っていて、公の場ではものすごい猫をかぶり、
素をさらさない姉が素で皇子と話しているのだから。
両親や周りからその才能を認められた兄。
将来、妃にと望まれる可能性が出た姉。
では僕は??
体術・剣術も同年代よりはできるが兄より劣る。
学問も、同年代よりは進んでいるが、姉より劣る。
僕は、兄も姉も大好きだ。
だから、僕には何ができるだろか。
ずっと悩んで悩んで、でも答えが出なくて。
とりあえず、体を鍛えようと思った。
・・・失敗して姉に見つかったけど。
でも、そのおかげで目指すべき目標はできた。
体力バカの兄の為に、僕が頭脳になろう。
そして、兄の代わりに領地を治めて、繁栄させよう。
生まれる前からずっと一緒にいる姉がお嫁に行くときは、
誰もが羨むくらいの祝いの品を送るんだ!
家の使用人からみると、破天荒な姉に振り回されて可哀そうな弟に見えるだろうけど、
自分の意志で僕は姉のそばにいる。
だって、姉の傍に居れば、誰も教えてくれないような楽しいことがたくさんわかるんだ!
屋敷内の小川の水は透き通ってキラキラしていて、でもとても冷たいとかね。
だから、もっともっと楽しませてね!!
ブックマーク・評価してくださっている皆様、本当にありがとうございます。
少し更新が遅くなりすみません。