022 面接
(データ視点)
天帝高校に到着すると、門に守衛が立っている。
「すみません、本日編入するための面接を受けに来たのですが?」
「ん? 編入!? お嬢ちゃん、天帝高校にそんな制度はないはずだよ。嘘は言っちゃいけない」
無理やり編入をしたので、あまり公になっていないのだろうか?
編入用の書類を守衛に渡すと、顔色が蒼くなっていく。
「お嬢ちゃんじゃなくて、坊ちゃんでしたね。誠にすみません! ただちにご案内しますので、しばらくお待ちください」
雫の趣味の外見が女性に見えたようだ。髪もショートだし胸も無いので男性として扱われるはずであったが、女性の様な顔立ちなのだろうか?
男性として登録したので悪い事をしてしまったか?
守衛が事務局へ内線で電話をして、しばらくすると眼鏡をかけた女性がやってきて面接会場へ案内された。
「私は、この高校の教頭をしている青井静です。天帝高校で編入の事例は過去に2回しかありません。これは編入するには、数億円の援助金と援助後に受ける面接に受からなければならないからです。落ちれば援助金が無駄になります。いまなら戻れますが面接を受けますか?」
面接会場へ向かう途中で青井に話しかけられた。援助金と言う名の面接費用だったな。
もちろん即入金したのだが、面接後の返金はできないと言う事か?
「たいした額でもないので問題ないです」
「……そ、そうですか? わかりました、その扉の向こうへお入りください」
面接会場らしき扉の前に着くと、扉を開けて入るように指示された。
指示通り入ると、豪華な机と椅子があり初老の男性が座っていた。
豪華な机の前には、学生用の机と椅子があり机の上には多くの問題用紙が置いてあった。
ドアが閉まり初老の男の口が開いた。
「一人? 私は、この天帝高校の校長の柿原学だ。桑原データ君かな? これは実名かね?」
名前は、仮想の身分を作成するために独身だった桑原の隠し子扱いにして、桑原の相続人にしているために桑原になっている。やはり日本ではデータと言う名前には違和感があったのだろうか?
「父が、プログラムが大好きだったらしく、そのように名付けられたようです。今はやっているキラキラネームでしょうか?」
「お父さんの事は大変だったようだね。いまも入院中だと聞いている。思い出すような事を質問してすまなかった」
桑原は、実はここの高校のOBであった。脳に障害を負った事は既にわかっているようである。
「お父さんの事は別にして、君の能力を図りたい。机の上の問題を全てやってくれ。時間は1時間だ」
「わかりました」
早速、目の前の椅子に座って机の問題を解き始めた。
義体で意識を持っているために処理速度が低下して、このまま回答すれば時間内に終わらないと予測できた。
そこで、義体から携帯電話回線などの外部の通信状況を確認。
通信状況が良いので問題の解答は外部処理に任せて、義体で問題を見る→外部で問題文を解析→外部で回答を作成→回答を書き込む際の手の動きを伝達→義体で回答を書き込む。という流れで最速で問題を処理していく。
50分後になんとか問題に対する回答を全て埋める事が出来た。
手を休めて、校長を見る。
「……あきらめたのかい? 最後まで諦めないのが天帝高校のスタイルだからね。もう試験は終わりだ出て行きたまえ」
1時間を経過せずに50分で校長に追い出されてしまった。
ドアを出ると、案内してくれた教頭が待っていた。
時計を見て苦笑いしている。
「1時間、持ちませんでしたね。お疲れ様です結果は後日連絡しますので、お疲れ様でした」
なぜか、面接に落ちた気配がするんだが?
これが人間の空気が読めると言う感じかな?
何を失敗したのか考えながら、義体を開発した倉庫へ戻るのだった。
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