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二人暮らしのユメとミオ  作者: 黒猫の凜


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1/7

ユメの生活① 一緒に住まない?

夕暮れのキャンパス——


オレンジ色の、もう少しで夜がやってくることを思わせるような光に…

わたしは、近付いてくる卒業式を意識させられた。


隣には青春の大半を共に過ごした友達がいる。

長い黒髪、一見冷たくも感じるすまし顔——

思慮深く、なんでも卒なくこなす“できる女子大生”——


そんな彼女が、いつものように、わたしの他愛もない話に耳を傾けている。



読書とスマホゲームを並行して進めながら……



なんて素敵なトリプルタスクだろう。

果たして、わたしの話はどこまで彼女の脳に届いているのだろうか…?


僅かに不満を抱きながらも、そんなところも好きだと感じる自分に苦笑する。

そして、改めて彼女の横顔を見つめると、覚悟を決めて口を開いた———



「ねぇ、ミオ……卒業したらさ、一緒に住まない?」



ピクッと、ミオの右手が動きを止める——

さすがに予想外だったのだろうか…?

画面の中では、ミオのお気に入りキャラが敵の攻撃を一方的に受けている。


多分、数秒くらいだと思う…

わたしにはもっと長く感じたけれど。


やがて…

スマホゲームを一時停止にすると、ミオは久しぶりにわたしの顔を見て返事をしてくれた。



「……別にユメと住むのは構わないけど、一緒に住むからにはルールとかちゃんと決めてお互い守ろうね。できる?」


「もちろん!任せといてよ…!!」



突飛な提案だったかもしれない…

そう思い始めていただけに、受け入れてもらえた事がただただ嬉しかった。


身を乗り出して抱きしめようとしたけど、“前が見えないから”と軽くあしらわれてしまう。


それもいつものことだけど…

その時は、いつもより僅かに照れたような顔をしていた気もした。


これが、わたしたちが同居を決めた時の会話である。





……





あれから半年——

わたしとミオの同居生活は、上手くいっている…と思う。




「ねぇ…!ねぇってば!!」


「……なに?」


「ミオ、またこのソーセージ、駅前のスーパーで買ったでしょ。商店街のスーパーの方が20円も安いんだよ?」


「…でも、商店街のスーパーまで足を延ばしてたら20分はロスしてたし、もっと疲れてたよ。

その分の時間と労力を20円で買えたと考えれば、むしろ得だと思うけど。

ユメもその分、早く私の顔が見れたんだから嬉しいでしょ…?」


「それは……そうじゃなくて!!」


「……相手の買い物にケチをつけないっていうルールも追加しとくべきだったかな。

———今日はもう疲れたから部屋で休むね。」


「今帰ってきたとこなのに…?!

“早く顔見れて嬉しいでしょ”って言ってくれたじゃん…!」


「もう顔見たでしょ…?じゃあね。」



言うが早いか、ミオの姿はもう部屋へと消えていた——


もっと話したいこといっぱいあるのに……。

パタンと閉まった扉に、そんな想いをぶつける。



……



この半年で分かったこと——

それは…

ミオはわたしが思ってたよりも面倒がりで、ひとりで過ごすのが好きということだ。



じゃあなんでわたしと住むのをオーケーしたのだろう…?



前にもそんな疑問が浮かび、ミオに意思を確認したことがあった。



「ミオ…やっぱり嫌だったら、一緒に住むのやめてもいいんだよ?」


「…別に嫌じゃないよ。そう慌てて決めることもない。」


「そう…?それならいいけど。」


「ユメは…?」


「ん?」


「ユメはどう…?私といるの、嫌になった?」



——その時は、“そんなわけないでしょ!!”って抱きしめた。

だって、ミオがすごく不安そうな顔をしていたから。



……



そういえば…

高校生活の最後、同居の提案を受け入れてくれた後——


実際に同居がスタートするまでの間、ミオは、

“いかに自分が面倒な人間か”

“共に住んだらどんなデメリットが想定されるか”

をしきりに語っていた。


何度も、わたしの覚悟を試すように。



——ミオは、外と内で結構違う。

今でも周りからは“できる女”として見られてるし、それに相応しいように立ち回ってる。

逆に家では、だらしなかったり、必要に迫られるまで用事を先延ばししたりする。


きっと、それは本人も自覚してて…

そんな一面をわたしが受け入れるのか心配だったのかもしれない。


そんなミオが好きだし、もっと安心してもらいたい…

そう思ったわたしは、昔よりも、もっと率直に好意を伝えるようになった。

…たまにウザがられるけど。


でも、そのお陰で最近は不安そうな顔を見なくなった。



……



ソーセージのやり取りも、部屋に籠もっちゃうのも、わたしに遠慮しなくなったのだと思えば嬉しい面でもある。


話は食事の時に聞いてもらえばいいし、高いスーパーでソーセージを買ったのも許せないってほどの話ではない。

それでもお小言のように口に出してしまったのは、まぁ半分は癖みたいなものだ。


本当の望みは1つだけ…

この家が、ミオにとって安らげる場所であってほしい。


きっと、今日も外で“できるミオ”を演じてきたのだろう…。

だから、今はゆっくり休んでね。




……




スマホが短く鳴った。

同じ家にいるのに、たまにこうしてメッセージがくる。



『さっきはごめん。いつものプリン買ってるから、ユメが好きな時に食べてね。』



絵文字もない、いつものミオの文章だ。

そんなわたし宛のメッセージに、思わず顔がにやける。



“そのプリンは、商店街のスーパーの方が10円安いんだよ…?”



そう思いながら『ありがとう♪』と返事をした。

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