第八十三話 「クルー」
池袋北環状区。
朝焼けネオン。
Emotion Crash事件後の街は、
妙に静かだった。
だが。
世界は静かじゃない。
大型スクリーン。
ARニュース。
感情市場。
全部が《MAY-LIN》を映している。
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《速報》
MAY-LIN現象
東アジア市場へ影響拡大
ヨコヅナ層が監視開始
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「いや怖ぇって……」
レンは頭を抱えた。
「なんで高校生が市場動かしてんだよ」
藍華が苦笑する。
「もう普通の配信者じゃないから」
その時。
黒犬が、
ネオン路地から現れた。
黒コート。
義眼。
大型ケース。
完全に傭兵。
「よぉ」
レンが振り向く。
「ヘイゴウ?」
黒犬は周囲を見回した。
「……随分派手にやったな」
「他人事みたいに言うな!」
「半分他人事だ」
その時。
《EYES》が警告を出す。
『周囲監視ドローン増加』
空を見上げる。
LUX製監視ドローン。
明らかに数が増えていた。
黒犬が舌打ちする。
「もう追跡始まってる」
藍華も顔をしかめる。
「LUXだけじゃない」
「市場側も来る」
レンが嫌な顔になる。
「ヨコヅナ……?」
黒犬は頷く。
「あいつらは」
「市場を乱す存在を嫌う」
その時。
美玲が静かに言った。
「……クルー作ろ」
沈黙。
レンが聞き返す。
「え?」
美玲はホットドッグ食べながら続ける。
「これからもっと狙われるし」
「戦うならチーム必要」
「食いながら言う話か!?」
コメント欄爆笑。
《平常運転》
《MAY-LINかわいい》
《世界級会議とは》
だが。
黒犬は真顔だった。
「正しい」
「LUX本隊相手なら」
「少人数じゃ死ぬ」
藍華も腕を組む。
「配信だけじゃ済まなくなる」
レンは黙る。
確かにそうだ。
相手はもう。
炎上配信者じゃない。
国家級企業。
市場支配層。
感情管理AI。
完全に戦争規模へ向かっている。
その時。
後ろから声がした。
「なら」
「フィクサー必要だな」
全員が振り向く。
ネオン路地。
煙草の煙。
派手な金ジャケット。
細いサングラス。
そして。
ニヤついた男。
「仕事と情報を回す奴がいねぇと」
「クルーは潰れる」
《EYES》が解析。
『分類:フィクサー』
レンは眉をひそめた。
「……誰だアンタ」
男は笑う。
「名乗るほど綺麗な仕事してねぇけど」
池袋のネオンを背に。
男は軽く頭を下げた。
「俺は九条ハヤト」
「池袋のハッスル兼フィクサーだ」




