第三十三話 「企業系配信者」
「配信戦争、もう始まってるよ」
藍華の言葉と同時に、
部屋中のモニターが一斉切り替えされた。
《緊急LIVE》
派手な演出。
企業ロゴ。
完璧すぎる笑顔。
そこに映っていたのは、
三人組の人気配信者ユニットだった。
「……うわ」
藍華が露骨に嫌そうな顔をする。
「出た、《CRADLE》」
「知ってるのか?」
「LUX直属の企業系トップ配信者」
レンは画面を見る。
三人とも異様に“完成”されていた。
髪型。
表情。
声。
リアクション。
全部が、
綺麗すぎる。
中央の銀髪少女が微笑む。
『こんばんは〜♪』
『みんな見てる〜?』
コメント欄が爆速で流れる。
《ユナ様!》
《かわいい!》
《待ってた!》
レンは眉をひそめた。
「……なんか変じゃない?」
「気づいた?」
藍華がニヤッと笑う。
「感情最適化されてる」
「感情最適化?」
「企業AIが“最も好感度高い反応”をリアルタイム生成してる」
「怖ぇよ」
美玲が冷たく言った。
「人間辞めてる配信」
その時。
銀髪少女――《YUNA》が、
こちらを見た。
まるで視線が合ったみたいだった。
『昨夜の感情同期事件……怖かったですよね』
優しい声。
完璧な表情。
『でも安心してください』
『LUXは皆さんを守ります』
レンの《EYES》が反応。
『感情誘導波形を検知』
「うわマジでやってる」
《YUNA》は続ける。
『違法感情AIや危険配信者に騙されないでくださいね♪』
画面端へ、
《MAY-LIN LIVE》の映像が映る。
悪意ある切り抜き。
暴走。
赤い瞳。
都市混乱。
完全に印象操作だった。
「クソ編集だな……」
「でもこういうの伸びるんだよ」
藍華が吐き捨てる。
コメント欄も割れていた。
《MAY-LIN危険?》
《でも助けてたじゃん》
《LUXの方が怪しくね?》
美玲は無言でモニターを見る。
表情は読めない。
その時。
《YUNA》が笑顔で言った。
『MAY-LINさん』
『もし見ていたら、今夜公開討論しませんか?』
部屋が静まる。
「……は?」
レンが固まる。
『逃げなければ、ですけど♪』
藍華が頭を抱えた。
「うわ最悪」
「何が?」
「これ“配信決闘”だ」
レンは嫌な予感しかしなかった。
「……なんだそれ」
「現代配信者社会の殺し合い」




