第百六十五話 「新ヨコヅナ朝霧レン」
上海事件から一週間後。
世界はまだ、
EYES NETWORKの衝撃で揺れていた。
《Emotion Crash収束傾向》
《感情市場再編開始》
《EYES NETWORK拡大中》
だが。
レンにとって、
最悪のニュースは別だった。
⸻
上海地下診療街。
簡易食堂。
レンは朝飯を食っていた。
「……平和だ」
肉まん。
豆乳。
ネオン朝。
最高だった。
その時。
《EYES》が静かに表示した。
《通知》
「嫌な予感」
コメント欄爆笑。
《いつもの》
《死亡フラグ》
《EYES通知怖い》
《EYES》は続ける。
《ヨコヅナ会議臨時決議》
⸻
「深圳ヨコヅナ新代表として」
「朝霧レンが推薦されました」
沈黙。
「…………は?」
箸が止まる。
美玲も止まる。
雨玲が吹きかけた煙草を落とした。
『は!?』
岳人も二度見する。
「早すぎるだろ」
レンが絶叫する。
「なんでぇぇぇ!!?」
《EYES》が普通に答える。
《説明》
⸻
「朝霧レンは」
* 深圳ネットランナー職業訓練高等専門課程卒業者
* 深圳学生籍保持
* 上海事件主要解決者
* EYES NETWORK共同創設者
⸻
「条件を満たしています」
「嫌な条件満たしたぁぁ!!」
コメント欄崩壊。
《新ヨコヅナ》
《学生代表》
《深圳の星》
その時。
モニターへ、
一つの映像が映し出された。
《深圳ヨコヅナ管理局》
巨大ホログラム会議室。
複数の上位ネットランナーたち。
そして。
一人の老齢ヨコヅナが静かに言う。
『朝霧レン』
『君は既に都市を救った』
レンが頭を抱える。
「いや違っ……」
『Emotion Crash収束』
『EYES NETWORK』
『上海安定化』
『世界規模感情保護』
『十分だ』
「十分じゃねぇよ!!」
ハヤトが横で大爆笑していた。
「ハハハハハ!!」
「学生ヨコヅナ爆誕か!!」
「笑うなぁぁ!!」
その時。
《EYES》が静かに補足する。
《追加情報》
⸻
深圳代表権限付与時、
「ヨコヅナ会議参加資格獲得」
空気が止まる。
雨玲が低く呟く。
『……本当に世界側へ行くのか』
レンは青ざめる。
「待て待て待て」
「俺まだネットランナー歴短いんだけど!?」
《EYES》が即答。
《問題ありません》
⸻
「朝霧レンは既に」
「世界市場へ介入済みです」
「現実突きつけるな!!」
コメント欄爆発。
《主人公逃げろ》
《世界級新人》
《ヨコヅナ学生》
その時。
深圳管理局側が静かに言った。
『新ヨコヅナ朝霧レン』
『ヨコヅナ会議へ出席を要請する』
沈黙。
レンは完全停止した。
上海事件を経て。
ただの新人ネットランナーだった少年は。
ついに。
“世界を動かす側”
へ、
立たされようとしていた。




