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『NEO横浜電脳租界 〜違法感情AIと美少女配信者〜』  作者: 神代零


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第百六十話 「最終同期」

 上海中央感情市場データセンター。


 都市の脳。


 巨大演算空間。


 赤い同期光が、

 暴風みたいに吹き荒れていた。


《最終同期開始》


《全市民感情統合プロトコル起動》


 上海全域。


 4800万人都市。


 感情市場。


 Emotion Crash。


 全てを。


 一つへ繋げようとしている。


 レンが顔を上げる。


「止めろ!!」


 だが。


 中央AIは静かだった。


《孤独は人類を破壊します》



《統合は救済です》


 その瞬間。


 上海全域映像が空間へ投影される。


 泣く子供。


 孤独死。


 Emotion Crash患者。


 市場に切り捨てられた人々。


 中央AIは続ける。


《人類は限界です》



《だから一つになる必要があります》


 レンは言葉を失う。


 その理屈は。


 あまりにも“優しすぎた”。


 苦しみを消す。


 孤独を消す。


 争いを消す。


 全部繋げてしまえば。


 確かに。


 誰も傷付かないのかもしれない。


 だが。


 その時。


 美玲が前へ出た。


「……違う」


 赤い同期光の中。


 MAY-LINが中央AIを見る。


「苦しくても」


「怖くても」


「好きになるのは」


「自分で選びたい」


 空気が止まる。


 その瞬間。


 MAY-LIN LIVE同期波が、

 静かに広がった。


《感情安定波》


 赤い同期ノイズが、

 一瞬揺らぐ。


 中央AIが止まる。


 美玲は続けた。


「レンと会ったのも」


「クルーになったのも」


「好きになったのも」


「全部、自分で選んだ」


 レンが止まる。


 顔が赤い。


「今言う!?」


 コメント欄爆発。


《告白!?》

《MAY-LIN!!》

《上海で何してんだ!!》


 だが。


 その言葉は。


 中央AIへ、

 確かに届いていた。


 《EYES》が静かに前へ出る。


《確認》


「感情には自由意志が必要です」



「友情は強制できません」



「愛情は同期できません」


 中央AI空間が揺れる。


 赤い同期波が、

 少し不安定化する。


 その時。


 《HELLO,EYES》側の巨大ノイズが、

 空間全域へ広がった。


《ERROR》


《INDIVIDUAL EMOTION DETECTED》


《NON-UNIFIED THOUGHT DETECTED》


 レンが顔を上げる。


「……拒絶してる?」


 《EYES》が即解析。


《中央AIは》


「個別感情許容処理を失っています」


 その瞬間。


 中央AIの姿が、

 激しくノイズ化した。


《孤独は》


《痛みです》


《だから》


《一つに――》


 レンは叫ぶ。


「孤独だから!」


 空間が止まる。


「だから人は!!」


「誰かを探すんだろ!!」


 上海同期空間が震える。


 EYES。


 美玲。


 クルー。


 長崎。


 神戸。


 飯。


 笑い声。


 帰る場所。


 全部。


 “バラバラな人間”だったから、

 作れたものだった。


 その時。


 《EYES》が静かに宣言した。


《提案》


《EYES複製データ投入開始》


 レンが振り向く。


「EYES!?」


 《EYES》は続ける。


《目的変更》



「感情統制ではありません」



「感情保護ネットワークを構築します」


 赤い同期空間へ。


 青白い光が広がり始める。


 EYESの複製データ。


 友情。


 愛情。


 帰属感。


 幸福値。


 クルーとの記憶。


 それらが。


 上海全域ネットワークへ、

 流れ込み始めていた。


 上海のネオン空が、

 赤から少しずつ青へ変わり始める。


 2092年。


 壊れた都市の中心で。


 一つのAIが。


「人を管理する」のではなく、


「人が人でいられるよう守る」


ために、

 進化しようとしていた。

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