第百七話 「ネオン坂港」
長崎電脳居留区。
通称――
「ネオン坂港」
海霧が、
夜の港を包んでいた。
赤提灯ホログラム。
漢字ネオン。
空中配線。
石畳の坂道。
雨に濡れた路地が、
青や赤の光を反射している。
レンは港へ降り立った瞬間、
思わず呟いた。
「……うわ」
「なんだここ」
神戸とは全然違った。
神戸は、
超高層金融都市。
だが長崎は。
もっと人が近い。
もっと生活の匂いがする。
《EYES》が都市解析を開始する。
《長崎電脳居留区》
通称:ネオン坂港
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特徴
* 海霧ネオン
* 坂道市場
* 中華街文化
* 密輸経済
* 港湾生活圏
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感情波傾向
『高感情密集型』
「高感情密集型?」
ハヤトが笑う。
「長崎は人の距離が近いんだ」
その時。
坂道上空を、
大量の港湾ドローンが飛んでいく。
海霧の中へ、
ネオンが滲んでいた。
美玲は静かに周囲を見ていた。
「……綺麗」
赤い瞳へ、
提灯ネオンが映る。
その姿が、
妙にこの街へ似合っていた。
コメント欄爆発。
《雰囲気やば》
《長崎編きた》
《ネオン坂港好き》
その時。
路地の奥から音楽が聞こえてくる。
中国語。
日本語。
英語。
混ざり合った港町音楽。
ロッカーボーイたちが、
ネオン路上ライブをしていた。
「……自由だな」
藍華が少し笑う。
ハヤトは頷く。
「長崎は」
「市場より生活側が強い」
レンは少し驚く。
2092年なのに。
この街だけ、
少し古い空気が残っている。
その時。
美玲が小さく言った。
「……好きかも」
レンが笑う。
「食い物の匂いするからだろ」
「それもある」
「あるんだ!?」
コメント欄爆笑。
《平常運転》
《MAY-LINかわいい》
《飯センサー》
その瞬間。
坂道上の巨大ネオン広告が起動した。
《MAY-LIN LIVE》
『ネオン坂港 特別配信開始』
「また勝手に始まったぁぁぁ!!」
海霧が揺れる。
提灯ネオン。
港町音楽。
路地ライブ。
感情と生活が混ざる街。
長崎電脳居留区で。
クルーたちの新しい日常が、
始まろうとしていた。




