【3章】戦闘神姫 第8話 天雷の神
「見つけたよ…アイツの弱点。マクちゃん。踏ん張ってね」
「アタシが頼りってことだな……ビビるなアタシ様!」
マクは奮起しながらスタートした。
「マク!?ってことはローアが策を出したのか!」
「二人ともアタシに任せろ。もう一度叩き込む。獣拍!(ビースト・ビート)」
マクが放ったのは最初に出した振動を利用した技だった。その技は確かに防御力を無視する威力であった。
「そんな…それじゃあ最初と変わらないぞ」
「ローア…貴女一体何を考えてるの!」
そして、次の瞬間。大きな棘が反撃で返ってくる。
その棘はマクの両腕と脇腹を貫いた。
「マク!離れろ!」
イッシンが叫ぶ。しかしマクは串刺しとなり動ける状況ではない。
「やっぱり私が行くべきだったか…」
アヤカが神器の力を解放する直前だった。
「お前らちょっと待てよ……うちの軍師様がただ特攻させると思うのか?」
マクの腕に力が入る。そして貫かれた腕を即座に抜き、その棘を掴む。
「行くぜお前ら…!後は任せたぞ。うおおおお!!」
(重い…。腕に力が入らない…。でもこの腕で仲間が守れるならアタシはどうなっても構わない!)
マクは掴んだ棘を軸にして守護者を投げ飛ばす
マクの足元の石床が砕け、血が滴る腕が震える。
「イッシン、アヤカちゃん!構えて!アイツの弱点はお腹だよ。何度も確認したアイツは腹からは棘が出ない。そこを狙うんだ!」
「わかったぜ!」
イッシンは宙に浮かぶ守護者の腹の部分を斬りかかる。
「何…!コイツ腹の部分も硬てぇ!」
イッシンの刃は守護者の腹の部分に少しの傷を付けるだけだった。
「マジかよ…マクが命がけで作ってくれたチャンスを…俺は役に立たねぇのか……」
だが、イッシンの斬撃には意味があった。宙に浮かぶ亀の守護者はイッシンの一撃で体勢を崩し、腹の部分を上にして落ちる。
「イッシン!良くやったわ」
落ちた瞬間、アヤカは亀の腹の部分に乗っていた。
「イッシン。貴方の一撃は二つの意味があったわ。一つはコイツを裏返してくれた事。そしてもう一つ…。」
アヤカはイッシンがつけた傷に目を付けていた。
そして勢い良く刀を突き刺した。
「この傷が無ければ私の力では刀を突き刺せなかった。そして突き刺せれば後は…」
アヤカの刀が炎を纏い守護者を内側から燃やす。
「私の炎がコイツを燃やし尽くすわ。」
その炎は防御など不可能に近い。もし人間がこの技を受けていたらと思うとゾッとする。
「助かったわ。マク、ローア。貴女達二人の手柄よ」
アヤカは二人に労いの言葉を掛ける。
「それは違うぜ……イッシンにアヤカ。お前らが居なかったらおそらく成立しなかった。これは全員の勝ちだぜ」
負傷したマクがイッシン達にも賛辞を送る。
「当然よ…私がいるんだから」
アヤカは少し照れていた。恐らく戦闘姫になってから同等に扱われる事が少なかったのだろう。彼女は戦い続けていた。守ってくれたゴウケツとレイカの恩を返すためにもずっとずっと一人でーー
『これくらいで僕達の守護者が負けるわけない。見せてやるよ本当の力を』
突如、燃え盛る亀の守護者から雄たけびが上がる。
その時、甲羅を突き破り本体が中から現れる。
「コイツが…本体…!だけど厄介な防御力は無いんだ。後は斬るだけだな」
イッシンは刀を構える。するとどこからか声がハッキリと聞こえる。
『私はこのダンジョンの守護者。お前達がこの神の力を手に入れる事ができるか試してやる』
その言葉と同時、守護者の体が更に大きくなり姿を変える。
「なんだよ…弱体化したはずじゃ……」
『甲羅は言わば重り。これが我の本当の姿"天雷神竜テンペスタ』
その姿は亀の形を全て消し、羽根の生えた竜へと変貌した。
「そんな…マクが必死に作ってくれたチャンスだったのに」
「イッシン。しっかりしなさい…それよりこの状況マズイわ」
アヤカが何かに気づく。他メンバーも足元の違和感にようやく気づいた。
『このダンジョンは水辺。利用させてもらうぞ』
足元に流れるのは水だった。このダンジョンの所在地は湖の上。守護者は力を使いダンジョン内部へと水位をイッシン達の下腿部まで上げる。
「動きが完全に封じられた…。このままじゃ」
「焦ることないわ。まだ私は余力を充分残している。アンタ達が今まで頑張った分なんとかするわ」
そう言ってアヤカは刀を構え圧を向ける。
(笛の男に圧倒されて以来、私は訓練し直した。イアやレイカさん他の皆に色々手伝ってもらった。それを私は解放する…!)
アヤカの闘気が跳ね上がるーー
「いくわよ炎神加速」
アヤカは自身の炎を体に纏い始める。
そして一気にスタートを切る。その速さは水に埋まった脚を一気に抜き、水面を歩くかのように走り出す。
「すげぇよアヤカ!これなら水は関係ねぇ!ぶった斬れ」
「ハァァァァ!」
刀身に力を込め、跳躍したアヤカは刀を振り下ろそうとする。しかしーーその刃は空を切り躱される。
『甘い!速度を上げようが空中では我の範囲だ。受けてみよ神風』
テンペスタの羽根が小刻みに揺れる。そして守護者の両翼から放たれる一撃。アヤカには避ける術は無かった……。だが戦闘姫アヤカは戦闘巧者。
「避けられないけど相対はできる。炎気一閃」
アヤカは刀身に炎を宿し、それを守護者の風の一撃に合わせる。二つの大技がぶつかり、フィールドには激しく熱風が舞う。
「このくらいなら人間でも問題ないわ。それにお陰で温まってきたでしょ」
アヤカは自身で体温の調節が可能。実際イッシン達は足を冷水で冷やされ動きが鈍りきっていた。そこへ運良く風と炎がぶつかり合い全体に温かな風を生んだのであった。
「だけど私のスピードでも空中には届かない。炎神加速も長くは持たない…どうする?」
「アヤカちゃん…私もイッシンも殆ど体力は残っている。二人で隙を生む。アヤカちゃんはその隙を狙って」
「隙を生むって…アンタ達が攻撃をまともに喰らえば一撃で瀕死よ?わかってるの!?」
アヤカは普通の人間ではない。当然訓練された一流の戦士だが神器の力を手に入れた戦士。それ故に普通の人間とは強度が違う。比べてイッシン達は普通の人間。先ほどの亀との戦闘、今の神風を少しでも受ければ致命傷は免れない。
だが、ローアの目は覚悟を決めていた。それはイッシンとマクも同じだった。
「ったく…だけどマクは隠れてなさい。貴女はさっきの戦闘でよくやってくれたわ。イッシン、ローア。絶対に死なないで」
「あぁ!」
二人は二つ返事で前衛に躍り出る。
「ちょっと待ちなさい。この足場じゃ貴方達には勝ち目がないわ。一旦下がってなさい。」
勢い良く前に出た二人を下げ、アヤカは気力を高める。
「蒸発させるわ。こんな水。火王よ…私に力を貸しなさい。炎神全開」
アヤカは刀を突き刺し水だけを蒸発させ切る。
「なんで俺達は熱くもないんだ?」
「私が炎の力をアンタ達にも受け渡したからよ。そうじゃないと全員丸焦げよ。前座は果たしたわ。二人とも頼むわよ」
『ネズミが増えようとも攻撃は届かぬ。かかってこい』
守護者との戦闘は佳境を迎える。




