賢者の場合
「・・・あれ?俺、また死んだん?」
「二人そろって同じ反応するのう」
「あ、神さん。ってことはなんか御用ですか?」
眠りについて気が付いたらなんとなく見覚えのある謎空間。
それもこっちに来る前、事故死の直前に来た場所やったらまーたなんかでぽっくり逝ってもうたんかなと思うやん。
「ちょっと伝達事項と、調整をな」
「伝達事項はともかく『調整』ですか?」
「勇者にも言うたが、お前さんたちはこの世界からしたら規格外じゃからの。チートも付けとるしちょいちょい儂の方で調整かけんといかん所があるんじゃよ」
「さよで」
勇者にもってことは、誉の勇者チートがやっと解放されたんか。
でもきっと王道な形やあらへんのやろな・・・。
「まず伝達事項じゃが、勇者のチートがいくつか解放されて強化され取るよ。ただし、本人の希望で器用貧乏方向へじゃが」
「・・・」
誉、お前は王道勇者うらやましい言うてんのに、自分でそのルート潰してへんか?
「お前さんの言いたいことはよっくわかるぞ。儂も勇者がどこへ向かっとるのか激しく謎じゃ」
「まあ、誉の場合石橋を叩いて渡るタイプですし・・・」
「の割に、当たらなければどうという事は無いとか豪語しとったぞ?」
「あいつたまに斜め上の答え出すんでしょうがないです」
そう、基本は堅実に石橋を叩くタイプなのだが、叩いて不安が消えない場合や自分の不利益と相反する場合、だったら石橋を飛び越えたらいいと言わんばかりに突拍子もない答えにたどり着く。防具の件とか正にそれやな。
「で、もう少し具体的にうちの勇者はどない感じになったんですか?」
「ああ、そうじゃな。まず猫人に本人の意思で変身可能になって、奥義を覚えることを捨てて多種多様をそこそこ使いこなせる方向へ向かうことになったの」
なるほど。案の定武器の一点集中特化を捨てたか。
でも、広く浅くそこそこってまためんどくさい方向へ・・・。
フォローする方にもなってや誉さん。
まあ、猫人の身体補正が付くらしいからええけど(これには誉の猫人バージョンに対する執念みたいなんを感じる)。
「因みにお前さんの場合は『賢者』じゃから、得手不得手が出ては来るが覚えとる魔法が使ことにはならんが、このままじゃと攻撃系統特化になりそうじゃがどうするかの?」
攻撃系統特化なあ・・・。
さてどうしたもんか。
現状考えたら俺がこの攻撃系、犬君回復系がええんやろけど攻撃系は別に猫の兄さんもおるし、何も魔法だけが攻撃ちゃう。
昨日のあれで思ったけど、ローコストの下位魔法に化学系の知識混ぜたらそこそこ使えそうな予感がする。と、なればここはあえて回復系統行っとくのも手なんやなー、ホンマ迷うわ。
「保留は―」
「無しじゃな」
一応聞いてみたけど、やっぱりあかんか。
リアルにこんなことで悩む日が来るなんて、数か月前には考えもせえへんかった。
せいぜい大学進学の時に理系か文系かで悩んだぐらいや。
「随分悩むのう。お前さんも勇者みたいにあっさり決めるかと思ったが」
「誉程じゃないですけど、平和ボケしとる日本人にはこっちはかなり過激な世界なんで、やっぱ真剣悩みますわ」
「まあ、そうじゃの。お前さんたちの居た国はあの世界でも殊更平和じゃったからのう」
保留は無しとは言っても、ここは時間の流れが違うのか特に爺様はせかしもしない。
なので、じっくり納得いくまで考えさせてもらった。そして―。
「一度決めた進路を変更することは叶わんがいいんじゃな?」
「ええ。よろしゅうお願いします」
最悪どうこけても覚えとる魔法は全部使えるんやから、ここでの選択で即死に直結はせんと踏んで俺は爺様の念押しに頷く。
誉と二人なら心配なら心配山積みの選択やけど、今は犬君も猫の兄さんもおるしきっと大丈夫。
と、思うことにして。




