事件です!3
ローグが誘拐されたと言うトウラから聞いた事情を纏めればこうだ。
俺と先輩がキャンプに出かけた当日の事。
仕事帰りのトウラと、ローグは偶然出会い、共に帰路についた。そして表通りから二、三筋入った居住地区の手前で、謎の集団に囲まれたという。
いくら自宅の近くで気を抜いていたといえど気配に敏感な猫人、しかも片や冒険者である二人の意表をついた集団は、音も無くそれこそ唐突に湧き出たかに見えたそうだ。
集団はこれ見よがしに怪しい黒いローブを着込んだ6人組。フードを目深にかぶり、足先まで覆うそれに、顔はおろか、性別さえも判断できなかったという。
「お前たち、何者だ?」
集団はローグの誰何には答えず、しかしそれが合図であったかの様に6人はローブの袖から取り出した杭状の何かを地面に突き立てた。
寸分の狂い無く同時に突き立てられた杭が光を発し、その光が繋がり魔法陣を形成する。 6人に囲まれていたローグとトウラはもれなくその陣の上だ。
「にゃっ?!」
「なっ?!」
思わず上げた驚きの声を最後にトウラの意識は曖昧になり、気がつけば目の前に俺が居たと。
「お兄ちゃん、きっとあいつらに連れてかれたんだにゃ。じゃなかったら、きっとここにお兄ちゃんも居るはずにゃ」
どんな暴論かと思うかも知れないが、ローグならそうだろう。トウラだけが被害にあったなら、俺が見つける前にあいつが見つけてる。
だってシスコンだもん。
「だよな」
だから俺もトウラに同意。
そしてそれは、この場にローグが居ない=絶賛捕まり中もしくはトウラみたく売っ払われ後と言うことだ。
どっちにしろ、怪しい例の集団を見つけなければならない。
「でもホンマにそんな連中が居るんやったら厄介やな」
トウラの話を聞いた先輩はため息いきをつきつつこぼす。
「先輩、誘拐犯が厄介じゃない方が珍しいっすよ」
犯罪者を相手に何をとツッコミを入れておく。
「まあ、そうやけどな。よく考えてみ?亜人の冒険者が攫われるとか、笑い話もええとこやで?普通に話しても誰も信じてくれへんし、そんなん誰得やってツッコミ飛ぶわ」
確かに先輩の言うことにも一理ある。
『亜人の冒険者』攫うとかホント需要先が不明だ。コストとリスクも考えれば、攫うとか変な手間暇掛けなくても、普通に雇えよって話。
「何かすっごい嫌ーな感じするんすけど。これって、気が付いた時には手遅れ、てパターン?」
「え?それじゃあ、お兄ちゃんはもう三味線にゃ?!」
「手遅れどころか、まず攫われたなんて誰も思わんし、長いこと見いひんってなって探して貰えたら御の字。それだって日本みたいにはいかんやろ?街の外で本人身分証明だけ見つかったら、職業柄お亡くなり処理で終い。完全犯罪の出来上がり」
何それ超恐っ。
そんで、返ってくる返事が怖くてスルーしたけど、この世界猫居ないのに三味線あんの?しかも材料お兄ちゃんって言ったよトウラさんっ!?
「ま、それは誰も証言するヤツが居らんからで、マレがトウラ見つけたことで完全犯罪は破綻したわけやけど」
「当事者取りこぼした時点でアウト、だな」
「にゃっ!」
にっと笑う先輩に、笑みで返す俺と力強く頷くトウラ。
隠された悪の組織の計画を潰す。なんかやっと異世界召喚ものの勇者というか、冒険者らしい状況になってきた。
モンスター相手にただ作業で剣振るだけの日常からの脱出だ。
実は魔法とかスキルとか、結局めんどくさくなって剣を振り下ろすだけの簡単なお仕事を単調に続けていた。だから半分は自業自得なんだけどね。
おかげで街に近いあたりのは、一撃必殺可能になりました。
「それじゃ、行くか!と言いたいとこやけど、俺ら結局しがない新米冒険者やからな。話しもすぐに信じてもらえるか分からんし、長丁場覚悟でまず腹ごしらえしてから行こか」
「あー・・・そうっすね、そうだったすね。レベルはあれど結局低ランク冒険者だったすね」
「にゃー・・・」
勇者で召喚されたけど、国とか神殿とか経由じゃないから知名度ゼロ。
下手に変なしがらみに縛られるより断然ましだけど、こういう時締まらない。
「あ、それとトウラが居たペットショップ。あそこはギルドの人間と行った方がいい、か?」
宿からほど近い定食屋に向かう途中、ふと事件のきっかけとなった店のことを思い出す。
とはいえ、あのペットショップは白とも黒とも予想が付きづらい。怪しいとかじゃ無くて普通過ぎて。
この世界に居ない生き物なのに、トウラはあっさり引き取れたし、ちゃんと販売締結書まで貰ってる。
この真っ当さが演技なら凄い役者だ。
もういっそ、見るからに怪しければいいのに。夜中の12時以降、水だか餌だか与えたらヤバい謎生物売ってる様な店みたいにな。
「んー、先に行って当たりやったら警戒されても厄介やし、ギルドの後でええやろ」
「了解っす」
こうして俺たちは、ローグ救出作戦の為、動き出したのだった。
できれば三味線にはなってませんように・・・。




