第十話 呆気ない終焉。
松三浦咲枝は葵ノ湖公園の展望台である人を待っていた。もう一人の《アマテラスオオミカミ》である彼女だ。向こうの茂みからヒソヒソと声が聞こえた。鷹矢を引っ張って来るのに成功したようだ。
「……貴女が《AMATERATH OMIKAMI 》?」
後ろを振り向くとそこに女性がいた。
「そうですよ。……天地つばささん。」
二人の間に流れる沈黙を破ったのは鷹矢だった。
「えーっっ!?」
「おいっ!」
二人が茂みから出てきた。つばさは驚く。
「た……鷹矢?」
「お姉ちゃんがパソコンゲームやってたなんて知らなかった!」
二人はそう言い合った。崇は咲枝の隣に行く。
「鷹矢に姉がいること知らなかったぞ。」
「まぁ普通はそうだよね。」
「お前さ……一体どうやって情報集めてんだよ……。」
崇は呆れたように言う。咲枝は微笑んで誤魔化す。
「二人とも私の話を聞いてくださいません?」
「うちの弟と私達の話、何の関係があるの!?」
「彼が《ツクヨミ》ですよ。私と同じ神の名を騙る者。」
咲枝はそう言った。つばさは驚いて鷹矢の方を見る。
「……そうだったのね。ごめんね、鷹矢。」
「いや、いいんだけど……松三浦とどういう……。」
「さっきの会話で分かるはずだけどなー。」
咲枝は口を尖らせた。つばさは微笑む。
「《ツクヨミ》だって知ってるでしょ?神様の名を名乗る者を。」
その言葉に鷹矢は唖然とする。
「……じゃ私は仕事に向かうわね!」
そう言ってつばさは去っていった。残された三人の間を沈黙が流れていく。
「さて、《drop of sun》がリリースするのは夏って言ってたっけ?」
「ちょっと待て!君が《アマテラスオオミカミ》って本当!?」
鷹矢がそう言った。
「そうだけど……。」
「ほんとに!?」
「ほんとだよ。ね?崇君。」
崇はそうだと頷いた。鷹矢の表情が見るうちに明るくなっていった。
「……じゃ、お願いしていいかな?」
「何を?」
「《ノア》と約束したこと。君が私の相棒となってくれるんでしょ?」
咲枝は笑っていた。鷹矢は頷いて咲枝の手と崇の手を取って上に上げた。
「わ!?ちょっと落ち着いてよ!」
展望台に笑い声が響いた。
鷹矢はまだ夢を見ている気分だった。家に帰ると嶋さんがキッチンに立っていた。
「お帰りなさい。今日のご飯は私の姪が作ってくれたのよ。」
「……姪?」
「そう。私の姉の子供。京都から来たの。」
「へぇ……。」
「もうちょっとで戻ってくるんだけど……。」
その時だった。玄関のベルが鳴った。振り向くとそこには咲枝が立っていた。
「まっ……松三浦!?」
「あ、帰ってきたんだ。伯母さん、頼まれてた物買ってきたよ。」
「……嶋さんの姪って君だったんだ……。」
「そうだよ。まぁ、《ツクヨミ》に手紙を出せたのは伯母さんのお陰なんだけど。USBメモリー持たせてパソコンに挿して貰ったからメールが入ったんだよね。」
《ノア》の時のからくりがこれで分かった。
「あ!だからお姉ちゃんの事も……。」
「まぁね。データが二つあったから不審に思って。お姉さんのアバターがアマテラスオオミカミってのは驚いたけど。」
咲枝はそう言った。
「咲枝、実家に連絡していいの?」
「しなくていいよ。実家から逃げたのは伯母さんもそうでしょ?」
「そうね。さ、ご飯食べましょ。」
嶋さんはそう言った。この日の夕御飯は咲枝とパソコンゲームについて話したりとても楽しかった。




