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もこもこ1  作者: macchang
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もこもこ 4

この世界に来てからどれ程立っただろうか。多分春だったんだ。というかダンゴムシとかに転生しなくてよかったなぁ。どうやって人間と交流するのか想像もつかねぇよチートもらっても超常現象と思われて終わりじゃないか?というか使う相手がいない。ガスコンロ程度の炎出せたら無敵だろうし、それでも強すぎて住んでる藪でボヤ起こして大ごとになりそう。精々ネコか小型犬程度のサイズで飼育されてる生き物が良い。

 昔、生まれ変わったら何になりたいかって話で、金持ちの家の猫って友人の答えに共感したのを覚えている。 

 今の自分はまぁ、柴犬より一回り大きいくらいの二頭身モコフワバディ。現在そのモフモフを村の入り口で幼女に撫でまわされている。サムのお隣の娘さんらしいがものすごく懐かれた。

 というのもあれから何冊かスキル書を読みスキルを身に着けた。といっても僅かに魔法スキルの熟練度が上がるものと毒と麻痺の耐性ばかりだった。山の捕食者である大蛇に、今までなら噛まれたら即痺れて絶命していたのが1秒死ぬまでの猶予が増えたか否かくらいの変化が。魔法は複数の属性があり、基礎属性の火、水、土、風、の四属性を基礎に組み合わせで上位の属性に至るようだ。治癒術は水と土の組み合わせの中の一種だった。ただしモンスターと人間とで術体系が違うようで人間には発音できない呪文を用いるものもある事が分かった。スキル名が読めない文字だったのはそういうことらしい。

 また経験値の書でレベルがまた上昇し初歩の光魔法を習得した。上位の属性魔法だがこれはモンスターが普通に覚えるものだ。熱を帯びだ光球を打ち出す魔法だ。

 そんな魔法を習得し、練習している間に色々と試していた。せっかく良いサツマイモこと紅芋があるので石焼芋を作ろうと考えたのだ。なので土魔法で土鍋を成型し、水魔法と言わせて釉薬を作り、火の魔法で焼き付けていった。水魔法と風魔法で水気を飛ばしながら4属性を駆使し作り上げた力作である。

 そこに熱を蓄える小石をやはり魔法で作り敷き詰める。これが固く、熱を加えても割れないものを作るのに魔力をとられ量産が大変だった。

 それを門の前の二人に許可を取り竈を借りて昼食後に加熱開始。時間ごとに割って出来栄えを確認。数度の試して最も適した焼き加減を見つけ出した。時間は即席の日時計をで大凡の感覚。温度だけは火の魔法で一定にした。

 まぁ細かい焼き加減の話は止そう。料理小説ではないのだ。

 そんな中で芋の焼けるにおいを嗅ぎつけてやってきたのがサムのお隣にさんの娘さん、エミリーちゃんだ。もともと甘味の強い自分の作った紅芋を気に入っており、連日村の門から匂ってくるので気になってしまったようだ。

 こうして芋を焼いている草羊を見つけてしまった幼女に、焼き立てを渡してしまったのが運の尽きである。


「私、この子飼う!」


 彼女は興奮した瞳で宣言した。

 簡単にペットを飼うものではない。毎日の餌の世話だって大変なのだ。気軽に命を扱おうとするのは人間の思い上がりとだ。


「この子自分で餌とれるし賢いから私でもお世話できるもん」


 ああ、自分も元は人間でしかも子供ではなかった。少なくともサムより年上だったと思う。自分の事は自分でできるな。


「この子はもう主人が居て、その人の為にこうして働いているんだ。エミリーに取られたらその人が困ってしまうよ。」


 ジムさんが言うとエミリーも我儘は言えないようだ


「この子飼いたい私は悪い子?」

「勝手にエミリーが飼うなら悪い子だ。」


子どもに対して甘いことを言わないがなぜかジムさんがいうと優しく感じる。そして飼わないが撫でたりする分には問題ない事をエミリーに告げた。ただし門から内側にモンスターを入れる事はできないので、ギリギリのところから手を伸ばして撫でるように指示をした。

 最初は言うとおりにしていたエミリーちゃんだが、自分のモフモフは中々上質だったようで、撫でるにとどまらず身を乗り出して抱き着いてきた。足は門から内側にあるので、彼女基準でセーフの様だ。

 翌日から門を訪れるようになり、芋を焼いて竈から離れない僕を見て、その後は焼ける時間を見計らって姿を見せるようになった。あと夕飯が芋を食べたせいで食べられず、サムが親に芋を食わせすぎるなと言われたようだ。

 その事から食糧事情は困窮していないのだなと思った。

 そして行商のカスパルさんとエミリーちゃんを通して自分の存在は村中に知れ渡っていった。同時に村のことも分かってきた。この村は先のジムが参加していた戦争で若者が流出し高齢化しているようだ。エミリーちゃんと遊べる年頃の子は昨年から木こりの父の手伝いについて行くようになり、遊び相手がいなくなり、みなそれを知っているから彼女の行動を強く止めないようだった。

 それから土鍋を見たカスパルさんに追加で何冊持ってくれば譲ってくれるか聞かれたので、練習用に作ったマグカップを一個渡した。

 その次の来訪時に普段の倍以上のスキル書と明細を持ってきてくれた。通貨価値は判らないがジムが驚いていたので結構な値段で売れたようだ。その時にはジムやエミリーの母の意見を取り入れ、成型のより奇麗な土鍋を渡してあげた。

 

 人の中で生きながら過ごすうちに季節も移ろいだし、気温が上がってきているのを感じた。村の周辺はそこまで暑くはならないらしいが、それでも気温は上がり雨が増えるそうだ。


 その日は門の前の竈を魔法で改良しているところだった。モンスター用のスキル書は人間には白紙の書やクズ本と呼ばれ、使用できず、不思議なことに何かを書き込むことも燃やしてしまうこともできない。錬金術の触媒になるらしいが、高位の術者による施術が必要で効果もその辺りの雑草摘んできたほうが高いそうだ。処分法方はダンジョンの中に投棄する。すると翌日には消えている。しかし、人間用だった場合一獲千金の可能性があるので鑑定の為に収集され、その後投棄の為にダンジョンに持ち込むことはされずダンジョンに投棄に行くのが低級の依頼として定期的に張り出されるらしい。確かに命がけの冒険に本一冊分のスペース殺して出発するのは仕事でなければしないだろう。

 そんなわけでコンスタントにカスパルさんが持ってくるが効果も弱いものばかりだ。人間用でも効果の高いものは少ないらしい。しかしスキルそのものを習得できることが珍しく、一度覚えると育てる手段はあるようで価値が落ちることは無い。

 生憎とこちらはスキルを育てる手段が現状本を読むだけしかないので、とにかく数が必要である。

 そして僅かに育ったスキルで、石を並べただけの竈を本格的なものへ改造していた時である。泥を乾かし焼いてレンガの様に強いるのをサムが呆れた顔で見ている中で、ジムはジッと森の方へ意識を向けていた。相変わらずロボット顔で表情は判りにくいがどこか緊張した面持ちだ。


「サム、今夜からしばらく夜間の村から外出は不許可だあとで村長にも伝える。俺が夜番に立つ。」


 夕暮れ、門を閉じるときにジムが口にした。

 サムの表情が強張る。


「君もしばらく夜は気をつけなさい、何なら門の近くで過ごすと良い。」


 ジムの声は真剣だ。一人称が俺になっている。穏やかなジムが真剣な時の特徴だ。一度門が閉じられ、しばらくした後にジムが出てきた。その時、魔とっている装備が明らかに普段と違った。サムも付けている暑い皮の胸当てなどではなく金属の軽装鎧一式と見たことも無い槍だ。装飾の無い、だが見るからに業物。それらを身に着けたジムは物語に出てくる英雄そのものの佇まいだった。

 だがいきなりそんな真剣な姿になられても、理由もわからずこちらは不安になるだけだ。


「俺の取り越し苦労なら良いんだ。勘が鈍っただけならな。」


 鈍っても直ぐにそうやって真剣な状態になられたら付け入る隙はないのでは。そこは経験によるものか。

 

 不安を抱えつつも寝床に戻り丸くなる。そのまま眠りにつくが夜半に降り出した雨に目を覚ます。妙な胸騒ぎだ。こちらに来てから初めての感覚に不安を通り越して恐怖を感じ一人がたまらなくなった。そしてジムの言葉を思い出しそのまま村の門へ走る。

 門の前では雨に打たれながらも警戒を和らげないジムの姿。一瞬此方に意識を向けたがすぐに自分を認めて警戒を改める。その姿はとても頼もしく、見ているこちらには安心感を与える。

門の横、ジムの少し後ろで石の上に丸くなる。まだ雨が降っているが大きな丸い葉をつける草を大きく育てる。


「そうやってあの芋の育てたのか。やはり特異個体なのだな。」


ジムの独り言を聞き流し葉っぱの傘が出来上がる。本来は新芽を食す山菜だがここまでくると繊維が固くなり、茎に毒性ある灰汁が含まれて食べられない。一人でないだけで不安が薄れる。そのまま夜を越した。翌朝も雨は降り続いている。葉っぱを傘に石の上に座る自分に朝になり出てきたサムは顔をほころばせる。


それから数日、ジムは門の前に立ち続けた。疲労などを心配したが


「僕は種族的に肉体の疲労には強くてね」


と教えてくれた。しかし関節部分や脹脛の付近が熱を持っているのを自分のモンスターの身体は関知していた。水魔法でそっと冷やそうとするとありがとうと言われた。体力を回復させる魔法は使えないが、ジムの身体は疲労を発熱で現す種族らしく、治癒の水魔法で冷やすと癒せるらしい。代わりに傷の治療は水では出来ず土の金属を扱う魔法が必要らしい。各属性にそれぞれ回復魔法があるらしい。そんな魔法の法則を学習しながら数日が過ぎた。雨は時折止むが、空が晴れることは無かった。

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