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もこもこ1  作者: macchang
2/5

もこもこプロ

え!これ?

これなら持っていっていいの?でも、ええ?

だってこれ、そうなの?こっちだと上手く機能しないんだ。環境との相性が悪いの。そう、確かに居るよねそういうの。なんていうかさぁ、特に落ち度もないし、周りが少しでもたてるというか配慮してあげると程よく皆得する程度に成果あげてくれるけど、一人だけの成果だけ見ると普通か少し劣る程度で、でもそれも周りがその人の助けで得してるの見えてないだけ見たいなそういうの立ち位置の。

これがそうかぁ。

こっちだとむしろ、周りが足引っ張って、成果も出ないしこれに干渉することで消耗して皆損すると。

わかった取り敢えずうちで引き取るよ。こっちでの記憶とか成果は、うん、負の成果ばかりだから持って行って欲しい?

わかった

でも、なんでこっちの環境では上手く行かなかったの?うちで同じ事になっても困る。

え、あ、失敗したの悪いの集めてこれを緩衝材に被害押さえようとしたら半端に悪い事になって毒にも薬にもならなかったと。でも基本の素材が良いからもうこっちでは駄目だけど、他所でならね。わかった。有り難う。いやどういたしまして取り敢えずうちで、田舎の平和な所において様子みるよ。害の有るものじゃないし



何か会話が聞こえていた。

瞼越しに感じる光に気だるさを感じながら目を開ければ青空が見えた。

ここはどこだろう。少なくとも部屋のベッドではない。体を起こし周囲を見渡すと草むらの中のようだ。それも緩やかな斜面にいる。そして体には違和感だらけ。動かした感覚がまるで違う。

視線を下ろすと見慣れないものが見えた。若草色の羊毛の様な物が腹を包んでいる。というか見えてる体の部分が少ないなんだこれ。羊毛らしき物に触れようと手を出すと視界にまた変なものが映る。腹と同じ羊毛に包まれた短い手?

指は5本ある感触だがネコの手を彷彿とさせる小さな手と短い指。爪は鋭くはない。

???

頭が混乱する。夢か?寝てるのか。顔をつねろうとすると頬にも柔らかい毛の感触。

あー、癒されるなかなかのモフモフ度だ。そして結構毛深い自分、こんなに髭濃かったですかね?ゆっくり立ち上がってみても視線があまり高くならない。というか見えてる部分が体が無い。

足がない?しかし感覚はある。試しに歩くと身体を包むモフモフの中で動く感触。そして前進する視界。

身体を包む毛を引っ張ると少しだが肌が引っ張られる感触。引っ張る強さで感触も変わる。

どうやら夢の中で、二頭身位の毛玉になっているようだ。ふと思い浮かぶのは好きだったゲームのキャラクター。もとはRPGのシリーズでナンバリングの中には一部の敵モンスターを味方出来るものがあった。

それに出て来た最序盤に出てくる奴だ。シリーズお馴染みの雑魚では無いが、登場作品では間違いなく最底辺の雑魚で最も最初に遭遇できる仲間になる敵だ。

ただしモンスターを仲間にできる頃にはもっと強い仲間モンスターが登場しているのでわざわざ仲間にしに来る必要もない、強いていうなら見た目は可愛いのマスコット風なので好きな人は育てに来るだろう。

一応育てればそれなり育ちレアなアイテムを使って能力を底上げし、スキルや魔法を覚えさせれば強くはなるが、同じ労力でもっと強く使いやすい仲間は沢山いる。拘って育て上げラストバトルのパーティーに組み込むなんて相当な物好きの所業である。

やったなぁ。

我ながら物好きだった。

序盤の見た目からして雑魚なモンスターを育ててボスに挑むことにえもいわれぬ達成感と育成途中で強敵に挑んでギリギリの戦闘を切り抜けた時の高揚感が楽しかったのだ。

ステータスアップアイテム集めて使ってカンストさせてスキルも耐性系から何から全部つけて、ステータスカンストとでステータス強化系のパッシブが無駄になったのが寧ろやってやったと感じたものだ。


さておき、唐突にこんなわけのわからない夢の世界で意識を持ってしまった。話に聞いた明晰夢というやつだろうか?なんにせよ初体験だ。夢の中だけあって思うとおりになって楽しくストレス発散などに有効だとか聞いた覚えがある。目覚めるまで楽しもうじゃないか。

 そう思うと楽しい気持ちになってくる。きっと育てた愛着あるモンスターになってゲーム序盤の田舎の村付近にいるのだろう。そうかぁ、自分は勇者より勇者と一緒に冒険にでるモンスターに感情移入して楽しんでいたのかもしれない。思えばあれだけ育てたのだ。現実でいたら相当優しい飼い主だったろうあの勇者。理想的な職場かもしれないな。

 とりあえず周囲を散策して回る。少し歩くと見覚えは無いが記憶にある地形が見えてきた。ゲームのフィールド画面では見たことのある地形だ。思った通りゲームの中に入った夢を見ているようだ。さらに進むと人が通った痕跡のある道に出る舗装されているわけではないが位置的に村から続く道だ。この道をとおりチュートリアルのお使いイベントをすることになる。なんだか懐かしい気持ちになる。この姿で人に会うとどうなるだろう。きっと夢の中だから都合よく戦闘は回避して仲良くなれたりするだろう。このまま道を進み人に会ってみるか、それとももう少しあたりを散策するか迷ったが、近くの草むらから何かが動く音がしてそちらに興味が移る。見ればそこには見知ったモンスターが。おそらく今自分と同族の昔育てたモンスターの姿があった。

 向こうのこちらに気が付いたようで目があう。すると首をかしげるようなしぐさをした後、道から離れるように逃げていく。その仕草の一つ一つが想像以上に愛らしかった。モフモフの小動物である。最強だ。すっかり興味は同族で一色になり後を追う。追っていくと分かったが、特に逃げたわけではなく単に移動していただけの様だ。あと基本的な移動法は四つ足で歩くようだ。二足歩行もできるが普段はしなようだ。

 しばらく付いていくと小さな泉にたどり着いた。木漏れ日が射し込み水面に反射し、きらめいている。追っていた同族はそこで水を飲み、日向ぼっこを始めた。よく見ればそこかしこに同じように日向ぼっこしている同族がいる。草地だと保護色になっている。流石雑魚モンスターやはり食物連鎖では被捕食者なのだろう。試しに水を飲むとこれが美味である。染み渡る感覚だ。泉にうつる自分の姿を確認し先程の推測に確信を得る。見知ったモンスターの姿が映っていた。そのまま自分も日向ぼっこに興じるとこれもまた心地よく夢の中だというのに眠くなってきた。あくびを一つ。そのまま意識が微睡みに沈んでしまった。気が付けば空が赤く染まり、日の空に星が見えだした。記憶を頼りに見晴らしのよさそうな場所へ向かう。その先には予想通りに日没の絶景と背後から広がりだす満天の星空があった。感動だ。夢のような景色に息をのむ。このまま目覚めなくて良い気がする。さっきも寝て起きてまだ夢の中だ。夢の中では時間の感覚が違うのだろうか。もしそうであるなら、満足いくまでこの世界を堪能してから目覚められるのなら、そんな明晰夢を自在に見れるなら確かにストレスとは無縁の人生を送れそうだ。

 そこで日没まで景色を眺め、それからも月と星を眺めながら過ごした。おなかが減らないのも夢だからだろう。

 夜風にあたってもこの身体の毛皮が寒さを感じさせない。その割に昼間は暑さや湿気を感じず高性能ぶりに感心する。弱いモンスターなので毛皮目的に乱獲されそうなものだと少し不安になる。夜を過ごす場所を探して星を見るのをやめる。同族がどうしているか探すと、草むらの中や、木の根元、中には木に登り枝の間に体を挟むなど思い思いの場所で眠っていた。そういえば夜になると遭遇するモンスターが変わった記憶がある。基本的には変わらないが少し強いモンスターが低確率で出現したはずだ。そんなことを思い出すと頭上で物音がした。見上げると暗がりでハッキリしないが先程木の上で寝ていた同族に異変が起きている。

 暗がりに目が慣れてきてわかったのは大蛇が木の上で同族に巻き付いている。全身を締め上げているであろう大蛇の体は明確に頭部と胴体の間に体をねじ込んで居る。あれでは声を上げる事も無く終わってしまう。大きく開かれた蛇の頭が同族をのみ込みだす。その間に離れる。

 やばいやばい。あの蛇は記憶がある。もっと先の中盤に出てくるモンスターで夜限定低確率で出現する相手だ。運悪く遭遇しゲームオーバーになるトラウマ生産機で作品のファンの間ではそれなりの知名度と人気を誇る。仲間になったばかりのモンスターはレベル1なのでこのあたりで育てようと戻ってきて、コイツに返り討ちに会うこともしばしばだ。うん、やられたな。この辺りの食物連鎖の頂点は間違いなくあいつだろう。少し離れると開けた場所の数匹の同族が寝ている場所を見つける。この広場の真ん中ならあの捕食者が来ても他の個体を狙ってくれると希望が持てる。小魚が群れるのと似た原理だ。楽しい夢の中だというのに少々怖い相手が出てきたものだ。しかしそれもまた世界観を表現していて楽しい側面がある。

 そんな事を考えながら眠ることにした。ここで眠ればきっと目覚めていつもの日常が帰ってくるだろう。願わくば再びこの夢の世界に来れる事を。この時はそんな楽観的な事を考えていた。

 翌朝この世界で目覚めまだ楽しめると盛り上がり、その翌日もこちらで目覚め、一週間過ぎた頃にようやくこの世界は夢ではないのかもしれないと思い出した。

まさかゲームの世界に入り込んでしまうとは

「ふぁ~」

間の抜けた猫と山羊の中間のような声がでる。このモンスターの鳴き声だ。練習してみたが人間のように器用にしゃべることはできなさそうだ。なんでこんな事になっているのだろうか。途方に暮れながら8日目の夜が過ぎていった。

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