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第7話 ザクロ村

「着いたよ! ここがザクロ村だ」


 赤い森を抜けた先にあるその場所は、村というにはやや大きく街というには少し小さすぎた。

 村に入ると、村人や冒険者たちの賑わいが感じられた。

 鍬を担いだ村人に混ざって、鉄の鎧を着た戦士が意気揚々と歩いている。

 また、村の周囲を囲む柵は木製だったが、村にある家々はすべて土や粘土で作られているようだった。


 ─近くにあんなにたくさん樹木が生えているというのに、なぜ家も木で作らないのでしょう─


 不思議に思いそのことを尋ねると、プラムはこう答えた。


「知らないの? ギードヌの木はすっげぇ硬いし棘だらけだから、家の材料には使えないんだよ」


「ギードヌというのは、あの赤褐色の森にたくさん生えてた低木のことですか?」


「うん、そうだよ! この村の柵もそう」


 通常、硬くて丈夫な木材であれば良い建築材料になりそうなものだが、ギードヌに限ってはあまりに硬すぎたために、まともに加工すらも出来なかったのだ。

 思い返せば村の周りにあった柵もきちんとした板材ではなく、不揃いで不格好な原木がそのまま使われていたようであった。


 土や泥で作られているので、耐久面から村にある建物はすべて平屋設計のようだ。

 しかもその多くが、冒険者たちが寝泊まりするための宿泊施設を兼ねているらしい。

 ザクロ村では畑よりも、宿屋の方が数が多かったのだ。


 またクライシスたちが初めて見るものはもう一つあった。


「わぁーっ 可愛い!」


 ペペロンチーノの近くの止まり木に大きな黒い鳥が舞い降りた。

 子供くらいの大きさがあって、グワーッグワーッと珍妙な鳴き声を上げている。

 正直いって、可愛いとは思えない。


「こいつはエッグバードだよ」


「エッグバード?」


「うん。卵をくれるんだ」


 そういうとプラムは、止まり木の近くに置いてあった餌箱から不思議な液体を取り出した。


「いいんですか?そこはプラムさんの家ではないのでしょう」


「はは、気にしなくてもいいよ。エッグバードの世話は村のみんなですることになってるんだ。ほら、周りの家を見てごらんよ」


 いわれた通りにクライシスは周囲をクルリと見渡すと、他の家にも何羽かのエッグバードが停まっている。


「ザクロ村ではコイツの卵を食べてるんだ。結構うまいんだよ。夕食で食べさせてあげるよ」


 エッグバードはプラムが差し出した謎の液体を美味そうに舐めながら、尻から卵を産んでいた……。



 村の中心に近づくほど、ダンジョンに眠る宝を求める冒険者たちの熱量をより強く感じられた。

 通りを行きかう人々が増え、ダンジョンで手に入れた武具や魔道具などのオーパーツのやり取りがそこら中で行われていた。


 そんなチャレンジャーのうち何人かとすれ違った時、クライシスは偶然こんな話を聞いた。


(なあ知ってるか? 深層まで行ったっていう冒険者の話)


(ああ。でもまだ一組だけらしいな。お宝を守ってる極大剣の戦士つうのは本当かよ?)


(さあな。だがその人型魔物の背後に、たしかに金銀財宝の山を見たらしいぞ。でも、そいつがすんげー強くて、まだ誰も攻略できていないそうだな)


(金銀財宝か、是非とも欲しいぜ。…………まてよ。盗賊職のやつが仲間に居れば、もしかしたら隙を見て盗みとれるかもしれないぜ!)


(それはいい考えだな!さっそくギルドハウスに行ってみるか)


(合点承知ッ!)


 二人の男達はひとしきり騒ぎ立てた後、忙しそうにどこかへ駆けて行った。



 やがてクライシスたちの前に、大きくて立派な古木が現れた。

 村の中心に存在したその木の洞に、エルダーツリーダンジョンの入り口は存在していた。

お話を読んでいただきありがとうございます!


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先日はRT企画にて作品をお送りくださり、ありがとうございました! 最初のチン・ゲンサイとのやりとりにクスッとさせられたり、ペペロンチーノちゃんのはわわ口調の可愛さに癒されたりと、楽しく拝読させていただ…
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