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Act.7「帝国艦迎撃」.4


 星間物質を突き抜けてメルクリウスを飛ばす。

 近づきつつある艦隊は、移動ドックをパージして隊列を組みながらゆっくり近づいていた。王国と貴族連合は、帝国と共和国が万年、小競り合いを繰り返す中では比較的穏やかな日々を送っている勢力だ。

 共和国から独立した帝国、もとより存在していた王国。その全勢力から少しずつ離反・独立して形成された貴族連合。特に貴族連合はどことも仲が良いわけでも悪いわけでもない。その成立ゆえに利益さえ齎せば恨みを買うことはなかった。


「つまり、王国と貴族連合を同士討ちさせて仲違いさせようっていう作戦は無理だな」


 敵艦隊は統制が取れた動きをしている。かく乱すること自体は可能だが、それで同士討ち、対立、漁夫の利というのは無理がある。

 だからと言って正面から戦えば、敵の集中砲火を受けて回避コースを失い、飽和攻撃で防御壁は崩壊。ハチの巣になる前に消し飛ばされるだろう。

 新規の装甲材と対ビームコーティングを施しているとは言え、攻撃されれば破壊される。あれはタキオンエンジンの出力に機体が耐えるためのものであって砲撃に耐えられるとは言っていない。


「王国貴族連合艦隊、コロニーより十二・七光秒の位置にて確認。移動ドックはパージ済み。敵は二山の魚鱗陣形。突破力があり、少数の敵なら蹂躙できるな」


 そもそも、百倍以上の敵を実験艦一隻で止めることなどできはしない。

 方法があるとしたら、一撃離脱。撃つべき敵だけを狙って討ち、あとは成り行きに任せる。狙うべきは――。


「敵艦隊の、司令官」


 先ほどの三席の時のように、全員を航行不能にして放置、ということはできない。

 艦隊が派遣されたと言うことは、そのさらに後ろには補給部隊がおり、船の修復も可能だ。そして全員を航行不能にしている間に防衛ラインを突破されてしまう。

 ならば、敵の指示を出す者を潰して、動きを抑えてしまえばいい。

 基本的に、軍隊というのは司令官が倒れた時点で、撤退し指揮系統を再編しなければ動くことができなくなる。


「アーブ、敵艦隊の情報が欲しい。両艦隊の、指揮官を討つ」

〈わかった。私も最後まで、君に付き合うからね!〉

「できれば情報を送り次第脱出してほしいんだけど……」


 それでも、彼女はここに残ろうとするだろう。深宇宙探索に情熱を注ぎ、テイを復活させた。その責任を果たそうとしている。


「気を付けてくれ。確かに攻撃範囲外であるとは言え、流れミサイルが到達する可能性が全くないわけじゃないんだ」

〈問題ないわよ。この距離だったら超高速ミサイルの到達までだって一時間以上あるんだから、その間に脱出するくらいわけないって〉


 けらけらと笑う彼女は、その間にデータベースから情報をテイへダウンロードする。

 送られてくる情報に目を通した彼は、狙うべき戦艦を見定める。


「王国軍辺境指揮官ゲクラン。乗艦名『ベルトラン』」


 堅牢な防御力と、高出力火砲を装備した大艦巨砲の具現化のような戦艦だ。


「貴族連合辺境伯コリニー。乗艦名『ガスパール』」


 ミサイル火力に特化した高速艦艇で、その少数の部隊を活かした一撃離脱を得意とする。

 堅実な指揮官と、臨機応変な指揮官。二人は王国貴族連合の合同艦隊でも指折りの実力と相性の良さを持ち、たびたび共同で宇宙海賊の掃討作戦に成功しているということだ。


「やるしかない。まず狙うべきは――」


 この二人のどちらであるか。



少しでも気に入っていただけたら幸いです。




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